恋をしているとき、周囲から「その気持ちは長く続かない」と言われても、本人にはなかなか信じられません。ところが恋が終わり、涙を見られたとき、主人公は「煙が目に入っただけ」と強がります。
ザ・プラターズの「Smoke Gets in Your Eyes」は、そんな恋の盲目と失恋後の涙を、煙という美しい比喩で描いたスタンダードナンバーです。今回は曲の物語に加え、タイトルにあるgetのコアイメージと日常会話での使い方を解説します。
しゅみすけ(大山俊輔)
「Smoke Gets in Your Eyes」はどんな曲?
この曲は、ジェローム・カーン(Jerome Kern)が作曲、オットー・ハーバック(Otto Harbach)が作詞し、1933年のミュージカル『Roberta』で発表された楽曲です。その後、多くの歌手が録音し、アメリカン・スタンダードとして定着しました。
ザ・プラターズは1958年にマーキュリーからシングルを発表。英国では1959年1月にチャート入りし、最高1位、20週ランクインしました。この録音は2019年にGRAMMY Hall of Fameへ加わっています。
- 原曲発表:1933年、ミュージカル『Roberta』
- 作曲:Jerome Kern
- 作詞:Otto Harbach
- ザ・プラターズ版:Mercury、1958年
- テーマ:恋による盲目、失恋、涙を隠す強がり
記録の出典:Songwriters Hall of Fame(Jerome Kern)、Songwriters Hall of Fame(Otto Harbach)、GRAMMY Hall of Fame、Official Charts
タイトルの意味・和訳
Smoke Gets in Your Eyesを直訳すると「煙があなたの目に入る」です。
- smoke:煙
- get in:中へ入る
- your eyes:あなたの目
ただし、曲全体では単なる物理現象ではありません。主人公は恋を信じていたころ、周囲の忠告を受け入れられませんでした。恋が終わり、今度は周囲から涙の理由を尋ねられます。そこで「煙が目に入った」と答え、泣いていることを隠そうとします。
つまり煙には、二つの働きがあります。
- 恋をしていると真実が見えなくなるという比喩
- 失恋の涙をごまかすための言い訳
歌詞が描く物語
第1段階:恋を疑われる
主人公は心から恋を信じています。しかし周囲の人々は、恋の炎がいつか消える可能性を知っており、本当にその愛を確信しているのかと問いかけます。
第2段階:愛は本物だと反論する
主人公は、疑う人たちを笑います。胸の中で燃えている愛は本物であり、自分には真実が見えていると思っているからです。ここではまだ、煙によって視界が曇っていることに本人は気づいていません。
第3段階:恋が終わり、涙を隠す
やがて恋は終わります。今度は周囲が主人公の涙を見て笑います。主人公は事実を認める代わりに、煙のせいだと言い張ります。昔は恋の真実を隠していた煙が、最後には失恋の涙を隠す言葉になるのです。
英語のポイント:getは「手に入れる」だけではない
getは「得る」「手に入れる」と覚えることが多い動詞ですが、コアイメージは「ある状態や場所に到達する」です。
この感覚を持つと、get dark、get home、get inなどが一つにつながります。

1.get+形容詞:ある状態になる
It got dark.
暗くなりました。
I’m getting tired.
疲れてきました。
最初は暗くなかった、疲れていなかった状態から、別の状態へ変化しています。
2.get+場所:ある場所へ着く
I got home at nine.
9時に家に着きました。
How did you get there?
どうやってそこへ行きましたか?
home、here、thereの前には通常toを置きません。一方、名詞の場所ならget to the stationのようにtoを使います。
3.get+物+場所:物がある場所へ入る・届く
Smoke got in my eyes.
煙が目に入りました。
Water got into my bag.
バッグの中に水が入りました。
タイトルでは、煙が目の外側から内側へ到達したという動きがgetで表されています。
get in・get into・get toの違い
- get in:中へ入る。到着する
- get into+名詞:具体的な物・場所の中へ入る
- get to+場所:その場所へ到着する
Please get in the car.
車に乗ってください。
Dust got into the room.
ほこりが部屋に入りました。
What time did you get to work?
何時に職場へ着きましたか?
get in your eyesは「目の中に入る」という定番の組み合わせです。シャンプー、砂、ほこりなどにも使えます。
日常会話で使える「目に入る」表現
I got shampoo in my eyes.
「シャンプーが目に入りました」。自分を主語にして、get+物+in one’s eyesという形にもできます。
Be careful not to get soap in your eyes.
「石けんが目に入らないように気をつけて」。be careful not to doは注意を促す便利な形です。
Something got in my eye.
「何かが目に入りました」。何が入ったか分からないときの自然な一言です。片目ならeye、両目ならeyesを使います。
My eyes are watering.
「涙が出ています」。悲しいとは限らず、煙や花粉で涙が出る場合にも使えます。
fireとsmokeが作る比喩
英語では、愛や情熱をfire、問題や疑いをsmokeで表すことがあります。火は温かさと情熱を与えますが、同時に煙を生み、視界を曇らせます。
この曲では、愛の炎を信じる主人公と、その炎から生じる煙で真実が見えなくなる主人公が同時に描かれています。最後に煙が涙の言い訳へ変わるため、タイトルが物語全体をまとめる仕掛けになっています。
発音と聞き取りのコツ
smokeは /smoʊk/。最初のsmを切り離さず、一息で発音します。gets inは会話や歌では子音と母音がつながり、「ゲッツィン」に近く聞こえます。
your eyesも滑らかにつながります。一語ずつ追うより、次の三つのかたまりを意識しましょう。
- Smoke
- gets in
- your eyes
歌唱では母音が長く伸ばされます。原形の発音を確認したあと、歌手がどこを伸ばして感情を乗せているかを聴くと、英語と音楽の両方を楽しめます。
ザ・プラターズの前2曲と聴き比べる
「Only You」は愛する相手への確信、「The Great Pretender」は失恋後に本心を隠す演技、そして本作は恋に真実が見えなくなり、最後に涙まで隠す物語です。
よくある質問
タイトルは「煙が目にしみる」という意味ですか?
状況としてはその理解で自然です。直訳は「煙が目に入る」ですが、目が痛み、涙が出るところまで含めて「煙が目にしみる」と訳せます。
get in my eyesとget into my eyesはどちらが正しいですか?
どちらも可能ですが、日常会話ではget in my eyesが簡潔で自然です。intoは外から中への動きをよりはっきり示します。
これはザ・プラターズのオリジナル曲ですか?
いいえ。原曲は1933年のミュージカル『Roberta』のために書かれました。ザ・プラターズ版は、原曲発表から約25年後に生まれた代表的なカバーです。
まとめ
- タイトルの直訳は「煙があなたの目に入る」
- 煙は、恋で真実が見えないことと、失恋の涙を隠す言い訳の二重の比喩
- getのコアイメージは「ある状態・場所に到達する」
- get+形容詞で状態変化、get+場所で到着を表す
- get in one’s eyesは「〜が目に入る」という日常表現
この曲を聴くときは、主人公が恋を信じていた前半と、涙を隠す後半の変化に注目してみてください。同じ「煙」という言葉が、物語の中で違う役割を持つことが分かります。
ザ・プラターズのほかの名曲と学べる英語は、ザ・プラターズの名曲で英語を学ぶ総合ガイドにまとめています。


