「愛されたい」と無邪気に歌ったかと思えば、今度は「恋なんて、もう終わり」。マリリン・モンローの歌には、恋する人の明るさだけでなく、強がりや寂しさまで映っています。
今回取り上げるのは、映画『お熱いのがお好き』(原題:Some Like It Hot)でマリリンが歌った「I’m Through with Love」。タイトルにある be through with は、日常英会話でも「もう終えた」「もうこりごり」と言いたいときに使える表現です。
しゅみすけ(大山俊輔)
「I’m Through with Love」の意味・和訳
タイトルの I’m through with love. は、自然な日本語なら次のように訳せます。
- 私はもう恋をしない
- 恋はもう終わり
- 恋なんて、もうこりごり
単に「恋を終えました」という事務的な報告ではありません。傷ついた人が、自分に言い聞かせるように恋との境界線を引く響きがあります。
映画の中でマリリンが演じるのは、バンド歌手のシュガー・ケイン。にぎやかなコメディの終盤で、この曲だけは空気が静まり、彼女の寂しさが前に出ます。作品と使用曲の情報は、AFI(アメリカ映画協会)の作品カタログでも確認できます。
be through with のコアイメージ
through の基本イメージは「入口から出口まで通り抜ける」です。そこから、あることの最後まで到達して「もう終わった状態」を表します。
be through with + 名詞 の形で、「〜を終えている」「〜とはもう関わらない」という意味になります。

まずは「使い終わった」の意味
Are you through with the computer?
パソコン、もう使い終わりましたか?
I’m through with this report.
このレポートは終わりました。
この2つは、感情的とは限りません。単純に作業や使用が完了したという意味です。
「もうこりごり」の意味にもなる
I’m through with excuses.
言い訳はもうたくさんです。
I’m through with him.
彼とはもう終わりです。
人、習慣、言い訳などを相手にすると、「これ以上は続けない」という強い決意が出ます。タイトルでは相手が love なので、「恋との関係を終わらせた」という少しドラマチックな表現になるわけです。
しゅみすけ(大山俊輔)
finish・be done with・get overとの違い
| 表現 | 中心となる意味 | 例 |
|---|---|---|
| finish | 作業などを完了する | I finished the report. |
| be done with | 終わっている/もうたくさん | I’m done with this. |
| be through with | 最後まで終え、区切りをつける | I’m through with him. |
| get over | つらい出来事や相手から立ち直る | She got over the breakup. |
finish は「完了する」という動作
finish は、宿題、仕事、食事などを「終える」という動作に焦点があります。
I finished my homework.
宿題を終えました。
be done with は会話でよく使う近い表現
be done with も「終わった」「もうこりごり」という意味です。日常会話ではとてもよく使われます。
I’m done with this argument.
この言い争いはもう終わりにします。
be through with のほうが、文脈によっては「きっぱり縁を切る」という最終的でドラマチックな響きが強くなります。
get over は「終わらせる」ではなく「立ち直る」
get over は、別れを決めることではなく、その痛みを乗り越えて回復することです。
I’m through with him.
彼とは終わりにした。(決断・区切り)
I’m getting over him.
彼のことを少しずつ吹っ切っている。(回復の途中)
また、愛情そのものが冷めるなら fall out of love や lose feelings が使えます。違いは、b わたしの英会話の「気持ちが冷める」は英語で?lose feelings・fall out of loveの違いでも詳しく解説しています。
この曲で覚える3ステップ
- 意味を一つに絞る:まず「〜はもう終わり」と覚える。
- loveを入れ替える:work、excuses、this relationship など身近な語で練習する。
- 声の温度を変える:普通に言えば「完了」、強く言えば「もうこりごり」。両方発音してみる。
例えば、仕事を終えた金曜の夜なら I’m through with work for today.。悪い習慣を断つ決意なら I’m through with this bad habit.。同じ型でも、声の調子と文脈で印象が変わります。
「I’m Through with Love」はどんな曲?
この曲は、ガス・カーン、ジョセフ・A・リヴィングストン(ファド・リヴィングストン)、マティ・マルネックによる1931年のジャズ・スタンダードです。マリリン版は1959年公開の『お熱いのがお好き』で知られるようになりました。
マリリンの歌い方は、力強く恋を否定するというより、傷ついた心を隠すような繊細さがあります。英語の文だけを見れば「もう終わり」と断言していますが、声にはまだ未練が残っている。その言葉と本音のずれも、この歌の魅力です。
まとめ:through は「出口まで来た」
- I’m through with love. は「恋はもう終わり」「恋なんてもうこりごり」
- be through with は、単純な完了にも、強い決別にも使える
- finish は完了する動作、get over は心が回復する過程
- 気持ちが冷めるなら fall out of love や lose feelings
「愛されたい」から「恋はもう終わり」へ。感情の振れ幅ごと英語を覚えられるのが、マリリンの曲のおもしろさです。
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