明るく堂々と振る舞っているのに、心の中では別れの痛みを抱えている――。ザ・プラターズの「The Great Pretender」は、そんな“平気なふり”を美しいハーモニーで描いた名曲です。
タイトルにあるpretenderは、英語学習では少しなじみの薄い単語かもしれません。しかし、動詞のpretendは「寝たふりをする」「知らないふりをする」「大丈夫なふりをする」など、日常会話でとてもよく使われます。
しゅみすけ(大山俊輔)
「The Great Pretender」はどんな曲?
「The Great Pretender」は、ザ・プラターズのマネージャーでもあったバック・ラム(Buck Ram)が書いた楽曲です。GRAMMY Hall of Fameではマーキュリーから発表された1956年のシングルとして掲載され、2002年に殿堂入りしています。
英国では「Only You」と組み合わせた盤が1956年9月にチャート入りし、最高5位、通算16週ランクインしました。華やかなボーカルと失恋後の孤独という対比が、多くの人の心をつかんだのでしょう。
- 歌:The Platters(ザ・プラターズ)
- 作者:Buck Ram
- レーベル:Mercury
- 曲のテーマ:悲しみを隠し、幸せそうに振る舞う主人公
記録の出典:GRAMMY Hall of Fame、Official Charts
タイトルの意味・和訳
The Great Pretenderを直訳すると「偉大なふりをする人」です。ただし、このgreatは人間的に立派という意味ではなく、ここでは「ものすごく上手な」「筋金入りの」という皮肉を含んでいます。
したがって、自然な日本語なら次のように訳せます。
- 見事に演じる人
- 平気なふりの名人
- 本心を隠す達人
pretenderは「実際とは違う人物・状態を装う人」です。曲の主人公は幸せな男を演じていますが、実際には愛する人を失った悲しみから抜け出せていません。
歌詞が描く物語:笑顔の裏にある失恋
冒頭の短い“Oh yes”は、自分が“ふりをする名人”だと認めるような響きです。堂々とした歌声ですが、その自信は本物の幸福から来るものではありません。
続く“pretending that I’m doing well”は「うまくやっているふりをして」という意味。do wellは「うまくやる」「元気にやっている」という表現なので、主人公は周囲に心配をかけないよう、平気な顔を作っていると分かります。
ところが、心の痛みは“too real”、つまり「本物すぎる」ものです。外側の演技と内側の感情が正反対だからこそ、メロディの美しさがいっそう切なく聞こえます。
pretendのコアイメージ
pretendのコアイメージは、「現実とは違う状態を本当のように見せる」です。日本語では「〜のふりをする」が最も近い表現です。
必ずしも悪意のある「うそ」とは限りません。子どものごっこ遊びにも、相手を安心させるために平気な顔をする場合にも使えます。

pretendの3つの基本パターン
1.pretend to+動詞
「〜するふりをする」という最も基本的な形です。
I pretended to sleep.
私は寝たふりをしました。
He pretended not to hear me.
彼は私の声が聞こえないふりをしました。
否定はnotをtoの前に置き、pretend not to doとします。
2.pretend (that)+文
「〜であるふりをする」「〜だと思わせる」という形です。会話ではthatを省略することがよくあります。
She pretended she was fine.
彼女は平気なふりをしました。
Let’s pretend we don’t know.
知らないことにしよう。
後ろに主語と動詞を含む文を置けるため、複雑な状況も表現できます。
3.pretend to be+名詞・形容詞
「〜であるふりをする」という形です。名詞なら役割、形容詞なら状態を装います。
Don’t pretend to be busy.
忙しいふりをしないで。
The children pretended to be doctors.
子どもたちは医者ごっこをしました。
pretendとlieの違い
どちらも現実と異なることに関係しますが、焦点が違います。
- pretend:行動や態度で、別の状態を演じる
- lie:事実ではないことを言葉で伝える
He pretended to be sick.
彼は病気のふりをしました。
He lied about being sick.
彼は病気だとうそをつきました。
最初の文は演技、二つ目は発言が中心です。pretendをすべて「うそをつく」と訳すと、この差が見えにくくなります。
日常会話で使えるpretendの例文
Pretend you didn’t see that.
「それを見なかったことにして」。ちょっとした失敗を見逃してほしいときに使えます。
I can’t pretend everything is okay.
「すべて順調なふりはできません」。本音を話す場面で自然です。
Let’s pretend we’re on vacation.
「休暇中だと思って楽しもう」。想像遊びや気分転換にもpretendを使えます。
She was only pretending.
「彼女はふりをしていただけです」。行動が本気ではなかったと後から説明する表現です。
greatは「偉大な」だけではない
greatは基本的に「素晴らしい」「偉大な」ですが、文脈によって「大変な」「相当な」「見事な」という強調にもなります。
a great successなら「大成功」、a great deal of timeなら「非常に多くの時間」です。曲名では「ふりをすることにかけては見事な」という、少し自嘲的な強調になっています。
聞き取りと発音のポイント
pretendは /prɪˈtend/。後半のtendを強く発音します。日本語の「プリテンド」のようにすべてを同じ強さで言わず、最初のpre-を軽くすると自然です。
pretenderは /prɪˈtendər/。最後の-erは弱く添えます。また、歌の中では語尾の子音と次の母音がつながるため、一語ずつではなく意味のかたまりで聞くのがコツです。
- まずpretend/pretenderが聞こえる場所を探す
- 主人公が見せる表情と本心を分けて考える
- 短い部分を、強弱と音の伸びまで真似する
- 自分が最近「〜のふりをした」場面で例文を作る
「Only You」と聴き比べると面白い
前作の「Only You」は、特別な相手への思いをまっすぐに表した歌でした。一方、この曲では、その相手を失った悲しみを周囲に隠しています。同じザ・プラターズの甘いハーモニーでも、感情の見せ方は対照的です。
前作の英語ポイントは、「Only You」の意味とonlyの置き場所を解説した記事で確認できます。
よくある質問
pretendの後ろは動名詞にできますか?
基本的にはpretend to doを使います。「寝たふりをした」ならpretended to sleepが自然です。
pretend playとは何ですか?
子どもの「ごっこ遊び」「見立て遊び」です。この場合のpretendには、相手をだます悪いニュアンスはありません。
「平気なふりをする」は英語でどう言いますか?
pretend to be okayまたはpretend that I’m okayと言えます。より会話的にはact like everything is fineも使えます。
まとめ
「The Great Pretender」は、笑顔の裏に悲しみを隠す主人公を描いた曲です。
- pretenderは「実際とは違う姿を装う人」
- The Great Pretenderは「平気なふりの名人」という自嘲的なタイトル
- pretend to doで「〜するふりをする」
- pretend (that)+文、pretend to be+名詞・形容詞もよく使う
- pretendは演技、lieは虚偽の発言に焦点がある
次にこの曲を聴くときは、華やかな歌声だけでなく、主人公が隠している本心にも耳を傾けてみてください。pretendの感覚が、単語帳よりも鮮やかに残るはずです。
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