アウトプット仮説とは?英語で活用する方法を教師歴33年の私が解説

アウトプット仮説とは?英語で活用する方法を教師歴33年の私が解説

  • アウトプット仮説とはどんな理論なのか知りたいな
  • 第二言語習得におけるアウトプット仮説の有効性と課題はなんだろう?
  • インプット仮説との関係はどうなっているのかな?

このようなお悩みにお答えします。

アウトプット仮説とは、第二言語を習得するためにはインプットに加えて話す活動や書く活動といったアウトプットも必要であるというものです。
英語など第二言語をより効果的に習得するために、アウトプット仮説をどういかしていくのか興味が高まりますね。

この記事では、アウトプット仮説について公立小中学校で33年間教師をして英語を教えてきた私がわかりやすく解説しています。
この記事を読めば、英語力の向上につながる有益な情報について理解できます。

アウトプット仮説とは何か?

アウトプット仮説とは、かつて第二言語習得論で主流だったインプット仮説への反論から生まれました。
理想的なインプットを十分に浴びただけでは、言語の習得にはつながらないことが分かってきたのです。

アウトプット仮説は、インプット仮説だけでは重要とみなされなかったアウトプットにスポットをあてた理論となります。

スウェインが提唱した第二言語習得理論がアウトプット仮説

アウトプット仮説は、カナダの言語学者のスウェイン博士が1985年に提唱しました。

博士はインプットが言語習得に不可欠とするインプット仮説の主張は認めています。
その上で、言語を話したり書いたりといったアウトプットの学習活動がなくては、言語の完全な習得は起こり得ないと提唱したのです。

スウェイン博士は、英語を母語とするカナダの子どもたちにフランス語を教える実践結果からこの仮説を導き出しました。

このクラスでは、フランス語の授業だけでなく数学など他の教科の授業もフランス語で行われました。
インプット仮説で提唱されている理想的なインプットを浴びて学ぶ子どもたちを博士はずっと観察し続けたのです。

アウトプット軽重のインプット仮説の限界

検証の結果、英語を母語とする子どもたちのフランス語を聞き取ったり読み取ったりする能力は、フランス語を母語とする子どもたちと同程度の水準に到達しました。
理想的なインプットを大量に浴びると言語は習得されるというインプット仮説の有効性が証明されたのです。

しかし、フランス語を正しく発話する能力においては、フランス語を母語とする子どもたちのレベルに達しませんでした。
言語の習得にはインプットだけで十分であるとするインプット仮説の考え方には限界があることも分かったのです。

アウトプット仮説とインプット仮説の違い

インプット仮説とアウトプット仮説の違いは、アウトプットが言語習得に必要かどうかという認識の仕方にあります。

アウトプットの学習は言語習得には意味がないとするのがインプット仮説の立場です。
それに対して、言語習得にはアウトプットの学習も必要不可欠であるとするのがアウトプット仮説の立場です。

注目すべき点は、スウェイン博士がインプットの有効性に異を唱えていない点にあります。
つまり、アウトプット仮説はインプット仮説の考え方を全て否定しているわけではありません。

博士は、第二言語を習得する場面でのインプットの果たす役割の大きさについては認めています。
その上で、言語を完全に習得するにはインプットだけでなく、話したり書いたりするアウトプットの学習も不可欠だと結論づけました。

インプットだけでなくアウトプットにも言語習得に有効な役割があるというのがアウトプット仮説の考えになります。

英語の習得にアウトプットが果たす4つの役割

アウトプットには第二言語習得にとって有効な役割が4つあるとスウェイン博士は考えました。
その4つの役割は第二言語習得に大きな意味があるのです。

  1. 気づき機能(Noticing)
  2. 仮説検証機能(Hypothesis formation and testing)
  3. メタ言語的機能(Metalinguistic reflection)
  4. 自動化機能(Automatization)

4つの役割とは何かについて順に解説していきます。

気づき機能(Noticing)

1つ目の役割は気づき機能と呼ばれています。
英語を学んでいると、何か言いたいことがあるのにうまく言えないという経験をしたことはありませんか?

学習者は、自分が言いたいこと(want)と現在の自分の能力で表現できること(can)との間にギャップがあるのに気づきます。
ギャップに気づいた学習者は、そのギャップを埋めようとする行動を起こします。

例えば「宇宙旅行に行きたい」と伝えたいのに、宇宙を英語で何て言うのかが分からなかったとしたら表現できません。
すると、学習者は相手にどう言えば良いのか質問したり、スマホで検索したりして”space”という英語を身に着けていきます。

学習者が自分の能力のギャップに気づくことで、それを埋めるために新たな知識や情報を得ようとするインプットが生じます。
こうした一連の行動が、言語の習得につながっていくのです。

仮説検証機能(Hypothesis formation and testing)

2つ目の役割は、仮説検証機能と呼ばれています。

学習者は、どう表現すれば相手に伝わるか考えて(仮説を立てて)話しているのです。
そして、相手の反応を見て自分の英語が相手に伝わったのかについても確かめている(検証)のです。

先程の例で見てみましょう。
学習者は宇宙を英語でどう表現するのかをまだ習っていないので知らない、または習ったけど忘れてしまった状態にあります。

こうした場面で学習者は、自分がそれまで身につけてきた英語の中から宇宙に近い意味を持つ英語を探そうとします。
そして、”rocket”、”star”、”moon”、”black hole”などの英語を話すことで、自分が宇宙について表現したいと相手に分かってもらおうとするのです。

相手がそれを聞いて”space”と分かってくれたら、学習者は”space”の英語を覚えると同時に、自分の英語の伝え方が正しかったという喜びや自信を手にします。
そうして、発話能力も高まっていくのです。

メタ言語的機能(Metalinguistic reflection)

3つ目の役割は、メタ言語的機能と呼ばれています。

私たちは普通、言語の意味や相手と対話する話の流れに意識を向けて話しています。
自分が話の中で使用した動詞の時制が過去形だったとか、「は」と「が」のどちらが助詞として適切かとかを意識して話している人はいません。

メタ認知機能とは、こうした日常会話では見られない意味を通り越して文法などの言語の形式的な部分を意識して話す役割のことです。
英語を話す場面で、動詞の時制や三人称単数の”s”を意識したことがある人は多いのではないでしょうか?

「友達の話した英語は、三単現の”s”を言い忘れていたな。」と自分や相手のアウトプットを振り返る働きにより、インプットの段階では気にしていなかった文法事項に対する意識が生じてくるのです。

このような意識を持ち学習を進めていくことで、より正確な言語習得につながっていくのです。

自動化機能(Automatization)

4つ目の役割は、自動化機能と呼ばれています。
学習者がアウトプットを繰り返し行うことにより言語処理能力が高まり、自分が正しいと思う第二言語がスムーズに発話できるようになるのです。

ここまで見てきたように、私たちは英語をアウトプットしようとするとき様々なことに意識を向けています。

「言いたいことがうまく伝えられない」「この主語の場合には、動詞に三単現の”s”をつける」と意識したことへの対応を考えながら発話しています。
その結果、発話までに要する時間が長くかかってしまいがちです。

しかし、アウトプットを繰り返し続けていくことでこのような処理能力も高くなり、スムーズな発話も可能にしてくれる働きが自動化機能なのです。
まさしく継続は力なりと言えます。

以上見てきたように、アウトプットに備わっている4つの役割が、第二言語の正確な習得に結びつくのです。

英語の習得におけるアウトプット仮説の課題

次に、スウェイン博士が主張したアウトプット仮説の課題について見ていきます。
第二言語として英語を学んでいる私たち日本人が、アウトプット仮説を効果的に活用するためには、3つの大きな課題があります。

  1. アウトプットだけでは言語習得につながらない
  2. 一斉授業の中でアウトプットを位置づけるのが難しい
  3. 学習者のアウトプットを評価するのが難しい

1つずつ順に見ていきましょう。

アウトプットだけでは言語習得につながらない

最初の問題点は、アウトプットだけを行っても言語習得の効果はあがらない点にあります。
ここまで繰り返し述べてきたように、アウトプット仮説はインプット仮説との関係性を正しく理解した上で取り組む必要があります。

学習者にとって理想的なインプットが十分に与えられた前提があっての、アウトプットでなければ意味がありません。

十分なインプットを浴びることなく、アウトプット練習だけをひたすら行っても言語習得は起きないのです。
インプット仮説とアウトプット仮説の関係性について正しく理解することが大切になります。

効果的なアウトプットの練習を行うためには、最初に理解可能な英語のインプットを十分に受けられる学習環境を整える必要があります。
島国で単一民族の日本にとっては、この環境を用意することは大変難しい問題なのです。

一斉授業の中で位置づけるのが難しい

2つ目の問題点は、日本の学校教育の形態と関係しています。

日本の小中学校では、通常30人規模の集団で一斉に学習をしています。
高校になるとクラスの人数が更に増えているようです。

アウトプット活動を行う場面では、アウトプットするための考える時間が必要となります。

伝えたい英語と表現できる英語の間のギャップに気づいたら、ギャップを埋めるための考える時間が必要です。
知らない英語を自分が知っている英語能力で言い換えるためには、どの単語を使えば相手に分かってもらえるかについて考える時間が必要です。

また、30人の生徒全員の発表を見届けようとすると、1人1分の発表だとしてもそれだけで30分が終わってしまいます。

アウトプットの時間を十分に確保すれば英語の習得は進むかもしれません。
しかし、それでは国が決めたカリキュラムを終えられない可能性もでてきてしまうのです。
教科書などのカリキュラムを進めながら、効果的なアウトプットを取り入れるのは難しい現状です。

学習者のアウトプットの評価が困難

3つ目の問題点は、アウトプットを評価するのが難しいという点になります。

学習者が様々な試行錯誤したアウトプットも、英語力の高くない人が受け取った場合には、「聞いたけど意味が分かりませんでした。」というフィードバックが帰ってくる可能性があります。

これでは、学習者が自分の英語が伝わったかどうかの確認ができません。
確認できなければ、学習者にとっての学びもなかったことになり、言語の習得にもつながりません。

学習者の学びにつながるフィードバックを受け取るためには、評価する人が学習者と同程度か学習者以上の英語力を持っている必要があります。
つまり、ただ隣の人とペアで発表し合う活動では、お互いに学びを得られない時間となる可能性もあるのです。

教師が評価する場合には、学習者は適切なフィードバックを受け取れる可能性が高くなりますが、時間がかかりすぎてしまい、授業がなかなか進まないことも考えられます。
アウトプットを評価するのは、誰が評価するのかの点においても時間がかかる点においても、大変難しい問題となっています。

英語の習得に有効なアウトプット活用方法

アウトプットを有効に活用することで、第二言語の習得に効果があると分かかりました。
しかし、理想的なアウトプットができる環境を用意するのも難しいと分かりました。

アウトプットできる理想の環境を用意するのは難しいと聞いて、がっかりしてしまった人もいるかもしれませんね。

しかし、安心してください。
この記事では、私がオススメする教材や学習方法を紹介します。
これを参考にして、日常の英語学習の場面にアウトプット仮説のメリットを取り入れることで、英語力がアップすることは間違いありません。

理想的なアウトプット環境の教材で学ぶ

スウェイン博士が提唱した通りに、理想的なインプットを十分に浴びた上でアウトプットの練習も行う。
つまり、インプットとアウトプットのバランスが取れた教材で学べば、言語習得にとても有効です。

私の一押しのオススメは、NHKラジオの「中高生の基礎英語 in English」。
1週間かけて1つのダイアログを学ぶスタイルなので、これだけでも十分なインプットとなっています。

全てのダイアログ形式が、対比形式になっているのも大きな特徴となっています。
例えば、8月のある週のダイアログは「夏休みの宿題はコツコツとやる」か「一気にやる」について扱っていました。

学習者がどちらの考えを支持するのかについて理由も含めて表現できるがこの週のゴールとなっています。
ダイアログ内で出てきた定型表現を用いて、自分の考えを無理なくアウトプットできるようにプログラムされている点もオススメです。

自然な対話がふんだんに展開されていて、番組に出演している日本人学習者も質問に即興で回答しています。
日常の対話場面に近いので、日本人学習者の回答には三単現の”s”や過去形など様々な文法的な間違いを含んでいる場合もあります。

このラジオ番組は、間違いを含んでいる回答をそのままオンエアしているのです。
このラジオ番組は、文法的な間違いよりも答えようとしている内容を重視しているのです。

こうした番組の雰囲気もあり、日本人学習者は間違いを恐れずにのびのびと英語で答えています。
すると、いつの間にか文法的な間違いが減少しているのです。
メタ言語的機能の効果を実感できます。

理想的なインプットとアウトプットの環境が整っているこのラジオ番組で、日本人学習者と一緒にアウトプットしながら学んでいくのは本当にオススメと言えます。

CEFRを活用し英語で表現できることを把握する

次にオススメなのは、自分の現在の英語力で何を表現できるかについて知ることです。

そのための指標となるのがCEFR(セファール)。
CEFRとは、外国語学習のためのヨーロッパ言語共通参照枠(Common European Framework of Reference for Languages)で、自分の語学力がどれくらいなのかを知る国際基準になります。

CEFRの中級レベルまでのアウトプットの目標は、自分の身の回りに関する日常的なことについて、特別な準備をしなくても話すことができるという内容になっています。
具体的には、自分、家族、学歴、夢、体験したこと、好きな本や映画などについて簡単な紹介が英語でとっさに言える状態を目指すとよいでしょう。

この時、“and”、”but”、”because”などの接続詞も使用すれば、英語を長めに話すこともできます。
英語で表現できる事項が増えていくのを自分で把握できれば、英語力がついたという実感を持ち、自信も高まるでしょう。

このように、自分や身近なことがらについてアウトプットを試みると、言いたいけれど表現できないというギャップに気づくと思います。
そのギャップを埋めようとする取り組みが、英語の習得を引き起こすのです。

英語で簡単な日記を書く

次のオススメは、英語で日記を書くなどして日常生活の中でアウトプットする機会を増やすことです。

最初は「いつ、どこで、誰と、何をして、どう感じた」程度の内容から始めるのがよいでしょう。
継続することで、よく使う単語や表現が確実に身につきます。

文章で書くのは気が進まないという人もいるかもしれません。
そんな人には、日記を音声で記録するのがオススメです。
スマホにある録音機能を利用すれば、簡単に記録できます。

慣れてきたら、文章の量を増やしてみましょう。
日記の中に自分以外の人物が登場することで、3人称単数を意識する機会が増えます。
また、明日の予定について書く場合には、過去形から現在形や未来形へと時制を変更する必要が出てきます。

そうすると、アウトプットの持つメタ言語的機能の働きにより、文法的な面での言語の習得も進んでくのです。
また、自動化機能の働きにより、アウトプット自体が非常にスムーズにできるようになります。

英会話スクールでフィードバックを受ける

最後にオススメするのは、英会話スクールに通ってアウトプットの機会を増やすことです。

英会話スクールに通うメリットは、プロの英語講師を相手にアウトプットできることになります。
話した英語が伝わったかどうかのフィードバックを講師から受け取ることで、アウトプットの仮説検証機能が働き言語習得が加速されるのです。

今回、紹介するのは株式会社byZooが運営する「b わたしの英会話」
このスクールは、日本の英語教育にもとづいた教材を使用して、中学高校時代に学んだ単語や文法をベースにしてあります。

ベースが中学や高校で習った英語になっているので、学習者も安心して英語学習に取り組めます。
だからこそ、学習者は自分が持っている英語の力をフル活用してアウトプットに挑戦することも可能となるのです。

自分が一生懸命に考えてアウトプットした英語が通じたかどうかのフィードバックを受け取れることで、学習者の英語の習得が進みます。

さらに「b わたしの英会話」では、レッスンの中で使用された単語や英文を記録に残し、それを毎回のレッスンで学習者にプレゼントしています。
自分の使える英語が増えていく喜びを実感できるので、英語学習の成果の高まりも期待できるのです。

まとめ

アウトプット仮説とは?英語で活用する方法を教師歴33年の私が解説

いかがでしたでしょうか?

アウトプットには言語習得にとって有効な働きがあると分かりました。
アウトプットのこの役割を意識した学習を日常生活に上手に取り入れることが、英語の習得に確実につながります。

自分にとって実践可能なアウトプットを活用した学習を見つけて、継続させていきましょう。

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