やわらかなピアノの音と、春の光のようなストリングス。ビージーズの「First of May」は、日本では「若葉のころ」という邦題でも親しまれてきた、静かで切ないバラードです。
メロディーだけを聴くと、若葉が芽吹く季節を歌った穏やかな恋の歌に思えるかもしれません。しかし歌詞を読むと、中心にあるのは、子どものころに近くにいた二人と、成長した今では変わってしまった関係です。small、tall、tree、loveなど、使われているのは驚くほど基本的な単語。それでも、過去と現在を並べるだけで、戻れない時間が見えてきます。
この記事では歌詞全文を転載せず、英語学習に必要な短い一節を入口に、曲全体の意味と自然な和訳、First of Mayという日付表現、when+主語+動詞、smallとtallの対比、growとgrow up、過去形とused toまで初心者向けに解説します。
ビージーズ「First of May」はどんな曲?
「First of May」は、ビージーズが1969年に発表したアルバム『Odessa』に収録された曲です。公式サイトでは、繊細なピアノとバリー・ギブの歌声から、豊かなストリングスへ広がる優美なバラードとして紹介されています。
『Odessa』は、ニューヨークとロンドンで録音されたビージーズ初の2枚組アルバムです。のちのディスコ時代とは異なり、1960年代のビージーズらしい、物語性のある歌詞、オーケストラの響き、三兄弟のハーモニーを味わえます。
「First of May」はイギリスの公式シングルチャートで6位を記録しました。日本では1996年にTBS系ドラマ『若葉のころ』の主題歌として再び注目され、同年発売のシングルもオリコンに登場しています。そのため、曲名や歌手名を知らなくても、イントロを聴くと「この曲、知っている」と感じる方が多い一曲です。
しゅみすけ(大山俊輔)
歌詞の意味・和訳|短い一節から過去の場面を見る
“When we were small and Christmas trees were tall”
自然な日本語にすると、「私たちがまだ幼く、クリスマスツリーがとても高く見えたころ」という意味です。
smallは「小さい」、tallは「背が高い」。単語だけなら中学校の最初に習う程度です。しかし、この二つを同じ場面に置くことで、子どもの目線が生まれます。
木が本当に今より高かったわけではありません。二人が小さかったから、見上げた木が大きく見えたのです。つまり歌詞は、年齢を「子どもだった」と説明する代わりに、子どもの目から見えた景色で過去を伝えています。
曲全体では、幼いころに一緒に過ごした二人が成長し、昔と同じ関係には戻れなくなったことが描かれます。木々は育ち、人も成長します。しかし、すべてが一緒に育つわけではありません。体は大きくなっても、かつての愛は遠い記憶になっている。その静かな対比が曲の切なさです。
「若葉のころ」は直訳ではない|First of Mayの意味
First of Mayを直訳すると、「5月1日」です。邦題の「若葉のころ」は、英語の題名をそのまま訳したものではありません。
日本語の「若葉」には、新緑の季節だけでなく、若さ、成長の途中、まだ何も失っていなかったころという響きがあります。そのため、子ども時代と成長後を対比する曲の空気を、日本語で美しく伝える題名になっています。
ただし英語の題名は、漠然とした「若いころ」ではなく、カレンダー上の一日を指しています。主人公にとって5月1日は、過去の愛と結びついた特別な記憶の日だと読むことができます。歌詞はなぜその日なのかを詳しく説明しません。説明しないからこそ、聴き手は自分の忘れられない日を重ねられます。
the first of May|英語の日付の読み方
the first of Mayは、日を先に置くイギリス式に近い表現です。
- the first of May = 5月1日
- May first = 5月1日
- May 1 / May 1st = 5月1日という書き方
firstは「1番目」を表す序数です。日付では、1日をoneではなくfirst、2日をsecond、3日をthirdと読みます。
- May 1st = May first
- May 2nd = May second
- May 3rd = May third
- May 4th = May fourth
月だけならin May、特定の日ならon May 1stです。
- It gets warmer in May.
5月になると暖かくなります。 - We met on May 1st.
私たちは5月1日に出会いました。
詳しくは、b-cafe.net本体の「日付を英語で|書き方・読み方・年月日の順番・前置詞」と、「5月は英語でMay|スペル・発音・略称・由来」もあわせてご覧ください。
when we were smallの英文骨格
When we were smallは、次のように分けられます。
- When = 〜だったとき
- we = 私たちは
- were = 〜だった
- small = 小さかった、幼かった
骨格はwe were smallです。
We were small.
私たちは小さかった。
その前にwhenを置くと、「いつの話なのか」を示す時間のまとまりになります。
When we were small, …
私たちが小さかったころ、……。
whenの中にもwe+wereという主語と動詞があります。このように、文へ「いつ」を足すまとまりを副詞節と呼びます。名前は難しく見えますが、会話では短い文の前に時間の札を付けるだけです。
- When I was young, I lived in Kobe.
若いころ、神戸に住んでいました。 - When we were children, we played outside.
子どものころ、私たちは外で遊びました。 - When she was in college, she studied abroad.
大学生のころ、彼女は留学しました。
whenが作る時間のまとまりは、be:RIZEの「副詞節とは?時・理由・条件を表す接続詞」で詳しく整理しています。

smallとtall|同じ木でも見え方が変わる
smallは、全体としてサイズが小さいことを表します。人に使う場合、この曲では身長だけでなく「幼い」という年齢の感覚を含みます。
- a small child = 小さな子ども
- a small house = 小さな家
- When I was small = 私が幼かったころ
tallは、縦方向の高さがあることです。人、木、建物など、下から上へ伸びるものに使います。
- a tall man = 背の高い男性
- a tall tree = 高い木
- a tall building = 高い建物
highとの違いにも注意しましょう。tallは対象そのものの縦の長さ、highは位置や水準が高いことに焦点があります。
- a tall tree = 木そのものが高い
- a high branch = 枝が高い位置にある
- a high price = 価格の水準が高い
この曲では、昔は自分たちがsmallで木がtallだった、という対比が、成長後には反転します。同じ場所を見ても、自分が変われば景色の意味も変わるのです。
growとgrow up|大きくなる・大人になる
growは、生き物や物事が時間とともに大きくなったり、増えたり、ある状態へ変化したりする動詞です。
- The tree grew tall.
その木は高く育ちました。 - Children grow quickly.
子どもはすぐに成長します。 - Our friendship grew stronger.
私たちの友情はより強くなりました。
grow+形容詞なら、「だんだんその状態になる」という変化を表せます。
- grow tall = 背が高くなる
- grow old = 年を取る
- grow quiet = だんだん静かになる
- grow apart = だんだん心が離れる
一方、grow upは主に「成長して大人になる」です。
- I grew up in Japan.
私は日本で育ちました。 - What do you want to be when you grow up?
大人になったら何になりたいですか。
upには、下から上へ伸び、完成へ近づく方向感覚があります。grow upの意味・語順や、grow up in・grow up with・grow up to beの使い分けは、b-cafe.netの「grow upの意味と使い方」で詳しく確認できます。up自体の方向感覚は、be:RIZEの「upの意味とコアイメージ」も参考になります。
過去形|昔の場面を時間軸に置く
この曲の過去の場面では、be動詞の過去形wereが重要です。
- We are young.
私たちは若いです。 - We were young.
私たちは若かったです。
areからwereへ変わるだけで、カメラが今から過去へ移動します。過去形は「昔を表す形」と暗記するより、出来事を今とは切り離された過去の位置へ置くと考えると分かりやすくなります。
- We lived near each other.
私たちは近所に住んでいました。 - We played under that tree.
私たちはあの木の下で遊びました。 - Everything felt different then.
そのころは、すべてが違って感じられました。
現在形と過去形の時間軸は、「英語の現在形・過去形・未来表現|出来事を時間軸に置く」につながります。
used toで「昔は〜だった」を話す
曲の歌詞にused toが中心表現として出てくるわけではありませんが、過去と現在を対比するこの曲を、自分の会話へ移すときに便利です。
used to+動詞の原形は、「昔はよく〜した」「以前は〜だったが、今は違う」という含みを持ちます。
- We used to play together.
私たちは昔、よく一緒に遊びました。 - I used to live near here.
以前はこの近くに住んでいました。 - There used to be a tall tree here.
昔ここには高い木がありました。 - We used to be close.
私たちは昔、親しい関係でした。
最後の例には、「今は以前ほど親しくない」という変化がにじみます。この過去と現在の距離が、「First of May」の感情にもよく合います。
wouldとの違いや、be used to「〜に慣れている」との区別は、be:RIZEの「used toの意味・使い方」をご覧ください。
しゅみすけ(大山俊輔)
発音のポイント|First of Mayをつなげる
First of Mayを一語ずつ「ファースト・オブ・メイ」と強く区切るより、first ofをなめらかにつなげます。
First‿of May
firstの最後の子音とofがつながり、「ファースタヴ」に近いまとまりになります。ただし、カタカナを正解にするのではなく、公式音源を聴きながら一息でまねすることが大切です。
Mayは日本語の「メ」「イ」と切らず、/eɪ/を一つの母音の動きとして発音します。day、say、wayの最後と同じ音です。
大人の英会話で使える「昔と今」の例文
- When I was small, this park looked huge.
幼いころ、この公園はとても大きく見えました。 - That tree has grown so tall.
あの木は本当に高く育ちました。 - We used to spend every summer together.
昔は毎年夏を一緒に過ごしていました。 - A lot has changed since then.
あのころから、いろいろなことが変わりました。 - I still remember those days.
今でもあのころを覚えています。 - We grew up, but the memory stayed with me.
私たちは大人になりましたが、その記憶は今も私の中に残っています。
昔の写真、故郷、学校、幼なじみについて話すときにそのまま応用できます。最初から長い思い出話を作らず、When I was small …で過去へ入り、Now …で現在へ戻るだけでも十分です。
「First of May」が英語初心者におすすめの理由
第一に、基本語だけで時間の経過が見えます。smallとtall、過去のwereと現在のare。反対に近い語と時制を並べることで、説明を増やさなくても物語になります。
第二に、テンポがゆっくりで、バリー・ギブの歌声が比較的明瞭です。すべてを聞き取るのではなく、when、small、tall、Mayのような目印を探す聴き方ができます。
第三に、自分の人生へ置き換えやすい曲です。子どものころ大きく見えた家、久しぶりに訪れた学校、疎遠になった友人など、多くの人に「昔と今」があります。歌詞を理解するだけでなく、自分の英語を作る材料になります。
3ステップ学習法
1.smallとtallの景色を描く
小さな子どもが高い木を見上げている場面を思い浮かべます。日本語訳より先に、二つの形容詞が作る大きさの対比を受け取ります。
2.whenで過去の扉を開く
When we were smallを一まとまりで声に出します。次に主語を変えて、When I was small、When my children were smallと言ってみます。
3.昔と今を二文で話す
- We used to play here. Now it is a parking lot.
- This tree was small. Now it is very tall.
- We were close then. Now we live far apart.
複雑な一文にせず、過去のSVと現在のSVを二つ並べます。それだけで、自分の中にある時間の変化を英語にできます。
まとめ|成長したからこそ見える、戻れない時間
ビージーズの「First of May」は、子どものころの二人と成長後の二人を、木の高さと基本的な英語で対比した名曲です。
- First of Mayは「5月1日」
- 邦題「若葉のころ」は直訳ではなく、若さと成長を表す美しい意訳
- when+主語+動詞で、文に「〜だったころ」という時間を足せる
- smallとtallの対比で、子どもの目線と時間の経過が見える
- growは変化、grow upは成長して大人になること
- used toを使えば、「昔はそうだったが今は違う」を会話で表せる
まずは自分の子ども時代の場所を一つ思い浮かべ、When I was small, …で話し始めてみてください。思い出を難しい英語に翻訳しなくても、見えた景色を短いSVにすれば、十分に物語は伝わります。
同じビージーズの、愛の深さを基本語で尋ねる名曲も学びたい方は、「How Deep Is Your Love」歌詞の意味・和訳もあわせてご覧ください。
ほかの懐かしい洋楽から英語を学びたい方は、「洋楽で英語を勉強する方法|初心者におすすめのアーティスト・名曲25選」へどうぞ。
ビージーズの5曲をまとめて学ぶ


