
私たちは普段、英語を「覚えるもの」「話せるようになるもの」として見ています。でも、少し視点を変えて、英語はどんな特徴を持つ言語なのかを知ると、今まで不思議だった文法や表現にも理由が見えてきます。
英語は、語順によって単語の役割を示す傾向が強く、主語を明示することが多い言語です。また、冠詞、単数・複数、時制など、日本語では必ずしも言葉にしない情報を、文の形として表します。
一方で、語形変化は比較的少なく、短い基本単語を組み合わせて多くの意味を作れるという特徴もあります。この記事では、日本語との違いを手がかりに、英語という言語の全体像を見ていきましょう。
Contents
英語の特徴を簡単にまとめると
英語の代表的な特徴は、次の8つです。
- 語順が意味を決める重要な手がかりになる
- 主語を省略しないことが多い
- a・an・theという冠詞がある
- 単数と複数を区別する
- 動詞の形で時間や話し手の見方を表す
- 綴りと発音が一致しないことが多い
- さまざまな言語から単語を取り入れている
- 短い基本単語の組み合わせで意味を広げられる
もちろん、すべての英文が単純にこの説明へ収まるわけではありません。ただ、この骨格を知っておくと、英語を日本語の語順のまま一語ずつ置き換えようとして苦しくなる理由が分かります。
しゅみすけ(大山俊輔)
特徴1:英語は語順がとても大切
英語の基本語順は、主語+動詞+目的語(SVO)です。
I like coffee.
私はコーヒーが好きです。
She opened the window.
彼女は窓を開けました。
英語では、単語が置かれた位置が「誰が」「何をした」「何に対してした」を判断する大きな手がかりになります。
たとえば、次の2文は同じ単語を使っていますが、意味が反対になります。
- The dog chased the cat.(犬が猫を追いかけた)
- The cat chased the dog.(猫が犬を追いかけた)
日本語では「犬が」「猫を」のような助詞によって役割を示せるため、語順を変えても意味が通じる場合があります。しかし英語では、語順を変えると「行動する側」と「行動を受ける側」が入れ替わってしまいます。

英語を話すときは、最初に誰が+どうするを置く。この小さな習慣が、英語らしい文を作る土台になります。
特徴2:英語は主語を明示することが多い
日本語では、会話の流れで分かる主語をよく省略します。
「昨日、映画を見たよ」
「もう食べた?」
「雨が降っているね」
英語では、多くの普通の文で主語が必要です。
- I watched a movie yesterday.(私は昨日、映画を見ました)
- Did you eat yet?(もう食べましたか)
- It is raining.(雨が降っています)
天気を表す It is raining. の it は、特定の物を指しているわけではありません。それでも、英語の文を組み立てるための主語として置かれます。
日本語では「何について話しているか」が共有されていれば省略できますが、英語では文の中に動作や状態の主体を置く傾向が強い。この違いが、日本人が英語を話すときに主語を忘れやすい理由の一つです。
特徴3:a・an・theで聞き手との共有状況を示す
英語には、名詞の前に置く冠詞があります。
- a book:ある1冊の本
- the book:話し手と聞き手がどの本か分かっている本
- books:本というもの、または複数の本
冠詞は単に「aは一つ」「theはその」と暗記するだけでは分かりにくいものです。実際には、話し手がその名詞をどう捉え、相手とどの程度共有できていると思っているかを表す手がかりです。
I saw a dog. と言えば、会話に初めて登場する犬です。その後に The dog was very friendly. と言えば、先ほど登場した犬だと分かります。
日本語ではこの違いを文脈に任せることが多いため、冠詞は日本人にとって難しく感じられます。ただし、冠詞は「正解を当てる小さなテスト」ではなく、相手が名詞を特定できるかどうかを助ける仕組みです。
特徴4:単数と複数を文の形で区別する
英語では、数えられる名詞が一つなのか複数なのかを表すことが多く、複数なら一般に語尾へ -s や -esを付けます。
- a flower / two flowers
- one box / three boxes
- a child / two children
さらに、主語が単数か複数かによって動詞の形が変わる場合もあります。
- She likes music.
- They like music.
日本語の「花」「箱」「子ども」は、単数にも複数にも使えます。必要なら「二つ」「たくさん」などを加えます。英語は、数の情報を名詞や動詞の形にも反映させる言語です。
特徴5:動詞の形で時間と話し手の見方を表す
英語では、動詞の形や助動詞を使って時間を表します。
- I work here.(ここで働いています)
- I worked here.(ここで働いていました)
- I will work here.(ここで働く予定です)
- I am working now.(今、働いています)
- I have worked here for five years.(ここで5年間働いています)
ただし、英語の時制や完了形は、カレンダー上の時間だけを表すものではありません。現在とのつながり、途中なのか完了しているのか、現実として見ているのか仮定として距離を置いているのか、といった話し手の見方も表します。
英語の動詞を日本語訳だけで覚えると、同じ日本語訳になる形が複数出てきて混乱します。「出来事をどこから見ているか」という視点を加えると、英語の形が選ばれる理由が見えやすくなります。
特徴6:綴りと発音が一致しないことが多い
英語はアルファベット26文字で書かれますが、同じ文字や文字の組み合わせが、いつも同じ音になるとは限りません。
- though
- through
- thought
- tough
これらは見た目が似ていても、母音部分の発音が異なります。また、read は現在形と過去形で綴りが同じでも発音が変わります。
その背景には、英語の発音が長い歴史の中で変化した一方、綴りは必ずしも同じ速度では変わらなかったことや、フランス語・ラテン語など多様な言語から単語を取り入れたことがあります。
そのため、初めて見る単語を綴りだけから完全に読めないことがあるのは、学習者の能力不足ではありません。英語そのものが持つ歴史的な特徴です。
特徴7:さまざまな言語から単語を取り入れている
英語の土台はゲルマン語派に属します。しかし、歴史の中で古ノルド語、フランス語、ラテン語、ギリシャ語などから大量の単語を取り入れてきました。
たとえば、日常的な短い単語にはゲルマン系のものが多く見られます。
- come
- go
- eat
- drink
- house
- mother
一方、少し抽象的・専門的・格式のある語彙には、フランス語やラテン語に由来するものが多くあります。
- information
- education
- communication
- government
- liberty
この重なりが、英語に似た意味の単語が多い理由の一つです。たとえば ask、question、interrogate は、いずれも「尋ねる」に関係しますが、場面や響きが異なります。
英語の歴史的な成り立ちについては、既存記事の「知ってた!?英語の歴史」でも紹介しています。今後、この「英語とは・英語の世界」カテゴリで、古英語・中英語・近代英語や語族についても詳しく掘り下げていきます。
特徴8:短い基本単語を組み合わせて意味を広げる
英語は、難しい単語だけで意味を細かく表す言語ではありません。短い基本動詞と前置詞・副詞を組み合わせた句動詞が、日常会話で大きな役割を果たします。
- get up:起きる
- find out:知る、突き止める
- work out:うまくいく、解決する、運動する
- get through:通り抜ける、乗り切る、つながる
- take off:脱ぐ、離陸する、急に成功する
一つひとつの単語は簡単でも、組み合わせによって意味が広がります。これは英語を難しく見せる面でもありますが、基本単語を使い回せるという強みでもあります。
しゅみすけ(大山俊輔)
英語と日本語の違いを比較
| 比較する点 | 英語 | 日本語 |
|---|---|---|
| 基本語順 | 主語+動詞+目的語(SVO) | 主語+目的語+動詞(SOV)が基本 |
| 役割の手がかり | 語順の影響が大きい | 助詞の影響が大きい |
| 主語 | 明示することが多い | 文脈で分かれば省略しやすい |
| 冠詞 | a・an・theがある | 英語と同じ冠詞体系はない |
| 単数・複数 | 名詞の形で区別することが多い | 同じ形で表せることが多い |
| 発音と文字 | 綴りと発音が一致しない場合が多い | 仮名は比較的、音との対応が分かりやすい |
| 情報の置き方 | 文の前方で主体と動作を示しやすい | 動詞や結論が文末に来やすい |
この比較は、どちらの言語が優れているかを決めるものではありません。同じ世界を説明するために、情報をどの順番で、どの形にして相手へ渡すかが異なるのです。
英語の特徴を学習にどう生かす?
英語を話すときに、最初から長い日本語文を完成させて翻訳しようとすると、語順の違いが大きな負担になります。
代わりに、次の順番で組み立ててみましょう。
- 誰が、何が:I / She / This / The train
- どうする、どういう状態:want / need / is / stopped
- 何を、どこで、いつ:some water / at the station / today
たとえば「今日はちょっと疲れているので、家でゆっくりしたいです」なら、最初から全部を訳さなくても構いません。
I’m tired today. I want to relax at home.
二つの短い文に分ければ、英語の「主語+動詞」という骨格を保ちながら伝えられます。日本語の美しい一文を、そのまま一つの英文へ移す必要はありません。
よくある疑問
英語は日本語より簡単ですか?
簡単な部分と難しい部分があります。英語は動詞や名詞の語形変化が比較的少ない一方、語順、冠詞、発音と綴りのずれなどは日本語話者にとって難しく感じられます。母語との距離によって、難しさの感じ方は変わります。
英語は直接的な言語ですか?
日本語と比べて主語や結論を明示する傾向はありますが、「英語はいつも直接的」と言い切ることはできません。英語にも遠回しな依頼、婉曲表現、皮肉、曖昧さがあります。違いは性格ではなく、情報を示す仕組みや文化的な慣習として見る方が正確です。
英語はどこの国で生まれたのですか?
英語の基礎は、ゲルマン系の人々がブリテン島へ持ち込んだ言語から発達しました。その後、古ノルド語やノルマン・フランス語などの影響を受け、現在の英語へ変化していきました。
アメリカ英語とイギリス英語は別の言語ですか?
どちらも英語です。綴り、発音、語彙、文法の一部に違いがありますが、基本的には相互に理解できます。今後、イギリス英語・アメリカ英語・世界各地の英語も、このカテゴリで詳しく紹介します。
まとめ
- 英語は語順によって単語の役割を示す傾向が強い
- 主語、冠詞、単数・複数などを文の形に表すことが多い
- 時制や動詞の形には、時間だけでなく話し手の見方も現れる
- 綴りと発音のずれには歴史的な背景がある
- 英語は多くの言語から語彙を取り入れてきた
- 短い基本単語の組み合わせで、多くの意味を表せる
英語の特徴を知ると、文法は理由のない規則の集まりではなく、一つの言語が情報を整理して相手へ渡すための仕組みに見えてきます。
ここを入口に、英語の歴史、語族、英語圏、世界共通語になった理由、イギリス英語とアメリカ英語の違いへ進むと、「英語を覚える」だけではなく、英語という言語そのものが立体的に見えてきます。
英語そのものをもっと知りたい方へ:語族・起源・歴史・特徴・語彙・世界への広がりを一つの地図にまとめた「英語とは?」総合ガイドもあわせてご覧ください。









