
restaurant、sky、science、tsunami。どれも現在は普通の英単語として使われていますが、その出発点は英語の外にあります。
ある言語が別の言語から取り入れた言葉を、英語では loanword または borrowed word と呼びます。取り入れる過程は borrowing です。日本語では「借用語」「外来語」と呼ばれます。
英語は、西ゲルマン語群を土台としながら、古ノルド語、フランス語、ラテン語、ギリシャ語、さらに世界各地の言語から言葉を受け入れてきました。そのため、意味の近い単語が複数あり、綴りと発音のパターンも多様です。
- sky:古ノルド語から
- government:フランス語を経由
- science:ラテン語から
- democracy:ギリシャ語の要素から
- tsunami:日本語から
この記事では、英語がどの言語からどんな単語を取り入れたのか、そして借りた言葉が英語の中でどう変化するのかを分かりやすく整理します。
Contents
英語の借用語・外来語とは?
loanword は、ある言語から別の言語へ取り入れられた語です。英語が日本語の tsunami を取り入れれば、英語にとって tsunami は日本語由来のloanwordです。反対に、日本語が英語のcomputerを「コンピューター」として取り入れれば、日本語にとって外来語になります。
「借りる」といっても、元の言語へ返すわけではありません(笑)。言語学でいう borrowing は、他言語の語を自分たちの語彙として使い始めることを表します。
借用された語は、元の発音や意味を完全に保つとは限りません。新しい言語の音・綴り・文法に合わせて変化し、長く使われるうちに「外国から来た語」と意識されなくなることもあります。
しゅみすけ(大山俊輔)
借用語・同源語・翻訳借用は何が違う?
借用語|形ごと取り入れる
sushi、piano、café のように、元の語の形や音をある程度保って取り入れたものです。
同源語|共通の祖先から分かれた
cognate(同源語) は、直接借りた語ではなく、共通の祖先にさかのぼれる語です。英語 father とドイツ語 Vater は似ていますが、一方が近代に他方から借りたのではなく、ゲルマン語の共通の祖先を持ちます。
翻訳借用|意味の部品を翻訳する
calque(翻訳借用) は、外国語の表現を自分の言語の語で部品ごとに翻訳したものです。形をそのまま借りるloanwordとは区別されます。
つまり、別の言語と似ている語がすべて借用語とは限りません。「いつ、どの言語から、どの経路で入ったか」を確認する必要があります。
英語はなぜ多くの言語から言葉を借りた?
言語は、人の移動、交易、征服、宗教、学問、科学技術、文化交流とともに接触します。新しい物・制度・考え方に出会うと、その名称も一緒に取り入れることがあります。
英語の場合、特に次の歴史的接触が語彙へ大きな影響を与えました。
- ブリテン島に定住したゲルマン系諸集団が古英語の基礎を形成
- ヴァイキングの定住と接触により古ノルド語系の語が流入
- 1066年のノルマン征服以後、フランス語が支配層・法律・行政・文化へ強く影響
- キリスト教、教育、学問を通じてラテン語・ギリシャ語系の語彙が流入
- 交易・植民・移住・世界交流を通じ、世界各地の言語から語を受け入れた
英語の起源と歴史全体は「英語はどこから来た?英語の起源と古英語の誕生」と「英語の歴史をわかりやすく解説」で詳しく扱っています。
英語の借用語を言語別に見る

古ノルド語から入った英単語
8世紀末以降、スカンディナヴィアの人々がブリテン島へ渡り、定住しました。古英語と古ノルド語は近縁だったため、人々の生活の中で言語が接触し、非常に基本的な語も英語へ入りました。
- sky:空
- egg:卵
- window:窓
- law:法律
- knife:ナイフ
- take:取る
- they・them・their:彼ら、それら
特に they / them / their のような代名詞が取り入れられたことは、接触の深さを示します。借用語は料理や珍しい物の名前だけではなく、文法の中心に近い語にも及ぶことがあります。
フランス語から入った英単語
1066年のノルマン征服後、イングランドの宮廷、行政、法律などでノルマン系フランス語が大きな役割を持ちました。庶民の日常では英語が使われ続けましたが、長い接触の中で大量のフランス語系語彙が英語へ入りました。
政治・法律・行政
- government:政府、統治
- court:裁判所、宮廷
- judge:裁判官、判断する
- justice:正義、司法
- parliament:議会
料理・衣服・芸術・文化
- restaurant:レストラン
- beauty:美、美しさ
- fashion:流行、ファッション
- colour / color:色
- dance:踊る、ダンス
英語には、ゲルマン系の日常語とフランス語・ラテン語系の改まった語が並ぶことがあります。たとえば ask に対して question、kingly に対して royal のように、近い意味でも響きや使う場面が異なります。
ラテン語・ギリシャ語から入った英単語
ラテン語は、キリスト教、教育、法律、学術の言語として英語へ長く影響しました。ギリシャ語の要素も、ラテン語やフランス語を経由したり、近代の学術用語を作るために用いられたりしています。
- science:科学
- education:教育
- information:情報
- telephone:電話
- democracy:民主主義
- biology:生物学
- philosophy:哲学
telephone や biology のような語は、古代ギリシャ語の要素を組み合わせて近代に作られた語です。古代から同じ形で英語に存在したわけではありません。
学術語に共通の語根が多いのはこのためです。bio-(生命)、tele-(遠く)、-logy(学問)などを知ると、未知の語の意味を推測しやすくなります。「英語の接頭辞・語根・接尾辞とは?」も参考になります。
世界各地の言語から入った英単語
英語の借用はヨーロッパの言語に限りません。交易、食文化、動植物、地域固有の制度などを通じて、世界各地から語が入りました。
- algebra:アラビア語由来
- coffee:アラビア語などを経由
- yogurt:トルコ語由来
- pajamas / pyjamas:南アジアの言語に由来
- shampoo:ヒンディー語系の語に由来
- chocolate:ナワトル語系の語がスペイン語を経由
- tomato:ナワトル語系の語がスペイン語を経由
借用の経路は一段階とは限りません。ある言語から別の言語へ移り、さらに英語へ入ることがあります。そのため「何語由来か」は、直接の借用元と、さらに古い起源を分けて説明する必要があります。
日本語から英語に入った借用語
日本の自然現象、食文化、武道、芸術、社会文化とともに、日本語由来の語も英語で使われています。
- tsunami:津波
- sushi:寿司
- karaoke:カラオケ
- kimono:着物
- karate:空手
- judo:柔道
- origami:折り紙
- anime:日本のアニメーション
- manga:日本の漫画
- emoji:絵文字
ただし、英語に入ると発音や意味の範囲が変わることがあります。anime は日本語ではアニメーション全般の略として使えますが、英語では特に日本発・日本風のアニメーションを指すことが一般的です。
karaoke は、日本語の「空」と英語由来の「オーケストラ」が結びついて日本で生まれ、その語全体が英語へ借用された興味深い例です。言葉は一方向に移るだけでなく、複数の言語を行き来します。
借用後、発音・綴り・意味はどう変わる?
英語の音に合わせて発音が変わる
借用語は、英語話者が発音しやすい音へ調整されます。元の言語とまったく同じ発音である必要はありません。karaoke や karate は、英語圏で日本語とは異なる発音を聞くことがあります。
複数形など英語の文法に入る
借用語も英語の文法に組み込まれます。
- two pizzas
- several cafés
- different types of sushi
sushi のように通常不可算的または集合的に扱われやすい語もあり、すべてが単純に -s を取るわけではありません。実際の辞書例を確認するのが安全です。
意味が広がる・狭まる
借用された文化の中で、意味が限定されたり、反対に広がったりします。元の言語での使い方と英語での使い方が同じとは限りません。
外国語らしい記号が消えることがある
café が cafe と書かれるように、アクセント記号が省かれる場合があります。一方、résumé のように別の英単語との区別を助けるため記号が残る場合もあります。
借用語が英語のスペルと発音を複雑にした
英語は異なる言語から、異なる綴りと発音の慣習を受け入れました。同じ ch でも、ゲルマン系・フランス語系・ギリシャ語系の来歴によって音が変わることがあります。
- chair:/tʃ/
- chef:/ʃ/
- chorus:/k/
借用語は英語の語彙を豊かにした一方、綴りと発音の対応を複雑にしました。この関係は「英語のスペルと発音が一致しないのはなぜ?」で詳しく解説しています。
借用語とカタカナ英語・和製英語は別物
日本語でいうカタカナ英語には、少なくとも次の三つが混ざっています。
- 英語から日本語へ入った外来語:ホテル、コンピューターなど
- 英語由来だが、日本語で意味や使い方が変わった語
- 英語風の材料で日本で作られた和製英語:サラリーマン、コンセントなど
今回の記事は「英語が他の言語から借りた語」が中心です。日本語話者が英語として使うと通じにくい言葉については「日本語の発音だと通じないカタカナ英語一覧」や「身近な和製英語」が参考になります。
しゅみすけ(大山俊輔)
単語の由来を調べるときのポイント
- 現在の意味だけでなく、辞書の語源欄を見る
- 直接の借用元と、さらに古い起源を分ける
- 似た形だけで「この言語から来た」と判断しない
- 借用された時代によって発音・綴りが異なることを意識する
- 複数の信頼できる辞書で確認する
語源は、単語を覚える助けになります。ただし、語源と現在の意味が完全に一致するとは限りません。今の使い方は、現代の辞書と実例で確認しましょう。
まとめ
- loanword / borrowed word:他言語から取り入れた借用語
- borrowing:言葉を取り入れる過程
- 英語は古ノルド語、フランス語、ラテン語、ギリシャ語などから大量の語を受け入れた
- 日本語由来のtsunami・sushi・karaokeなども英語で使われる
- 借用後は、発音・綴り・複数形・意味が英語化することがある
- 借用語、共通祖先を持つ同源語、翻訳借用は区別される
- 多言語からの借用は、英語の豊かな語彙と複雑な綴りの両方につながった
英語の語彙は、一つの民族や一つの時代だけで完成したものではありません。人々が出会い、争い、交易し、学び、文化を交換した痕跡が、単語の中に残っています。借用語を知ることは、英単語の暗記を超えて、英語が歩んだ歴史を読むことでもあります。
文字・綴り・語源・語形成をまとめて見渡したい方は「英語の文字・単語とは?」へ戻って全体像を確認できます。
参考:Merriam-Webster “loanword”、Encyclopaedia Britannica “English language”
単語の意味だけでなく、実際の頻度・文脈・自然な組み合わせを調べたい方は、英語コーパスとは?辞書との違い・使い方もご覧ください。









