
英語はアメリカやイギリスだけの言語ではありません。アジア、アフリカ、カリブ海、オセアニアなど、多くの国で政府、行政、法律、学校教育などに使われています。
ただし、ここで注意したいのが「英語が公用語の国」と「英語を母語とする人が多い国」は同じではないことです。
たとえば、シンガポールでは英語を含む4言語が公用語です。南アフリカでは英語は複数ある公用語の一つです。フィリピンではフィリノ語と英語が公的なコミュニケーションや教育に使われます。どの国でも、英語以外の大切な言語が人々の暮らしを支えています。
この記事では、英語を公用語・行政言語として使う代表的な国を地域別に整理し、公用語、母語、国語、共通語の違いも解説します。
先に世界全体の見取り図を確認したい方は、英語圏とは?英語が話されている国一覧もあわせてご覧ください。
Contents
英語を公用語とする国はどれくらいある?
British Councilの「Future of English」では、英語が67の国で公用語になっているという整理が紹介されています。ただし、「公用語国は正確に何か国か」という問いには、資料によって少し異なる数字が出ます。
理由は、次の違いがあるためです。
- 憲法や法律で英語を公用語と明記している国
- 中央政府や議会など、特定の公的機関で英語を使う国
- 法律上の呼び方とは別に、行政・教育で英語を実質的に使う国
- 独立国だけでなく、海外領土・自治地域も数える資料
- 連邦全体と州・地域で言語制度が異なる国
したがって、この記事では数字だけを暗記するのではなく、英語がその国のどの場面で、どのような地位を持っているかに注目します。
公用語とは?母語・国語・共通語との違い
公用語は英語で official language といいます。政府、議会、裁判所、行政文書、教育など、公的な領域で使用される言語です。
| 日本語 | 英語 | 意味 |
|---|---|---|
| 公用語 | official language | 国や公的機関が公式に使う言語 |
| 国語・国家語 | national language | 国の文化や国家的象徴として位置づけられる言語 |
| 母語 | mother tongue / first language | 幼い頃から家庭や地域で身につけた言語 |
| 第二言語 | second language | 母語とは別に社会生活で継続的に使う言語 |
| 共通語 | lingua franca / common language | 異なる母語を持つ人同士が意思疎通に使う言語 |

一人の人にとって、これらが同じ言語になることもあれば、別々になることもあります。英語が公用語の国で育っていても、家庭ではスワヒリ語、中国語、タミル語、ズールー語などを話す人がいます。
しゅみすけ(大山俊輔)
ヨーロッパで英語を公用語とする国
| 国 | 英語名 | 英語の位置づけ |
|---|---|---|
| アイルランド | Ireland | アイルランド語が第一公用語、英語が第二公用語 |
| マルタ | Malta | マルタ語と英語が公用語 |
アイルランド憲法第8条では、アイルランド語が国語であり第一公用語、英語が第二公用語と位置づけられています。実際の日常生活では英語が広く使われますが、制度上はアイルランド語の地位も非常に重要です。
マルタでは、マルタ語と英語が公用語です。英語を使いやすい留学先として知られていますが、マルタ語は国の文化とアイデンティティを支える言語です。詳しくはマルタは英語で?公用語と留学英語で解説しています。
イギリスは英語が公用語ではないの?
イギリスでは英語が政府と社会で圧倒的に広く使われていますが、「全国一律に、単一の成文法で英語を法定公用語と定める」という説明だけでは制度を正確に表せません。
ウェールズ語、スコットランド・ゲール語、アイルランド語などにも地域ごとの法的地位があります。英語は事実上の主要言語として機能している、と説明する方が安全です。
北米・カリブ海で英語を公用語とする国
| 国・地域 | 英語名 | 補足 |
|---|---|---|
| カナダ | Canada | 連邦レベルでは英語とフランス語が公用語 |
| アメリカ | the United States | 2025年の大統領令で英語を米国の公用語に指定 |
| ベリーズ | Belize | 英語が公用語。スペイン語やクレオール語なども使われる |
| バハマ | the Bahamas | 英語が公的場面で使われる |
| ジャマイカ | Jamaica | 英語が公用語。ジャマイカ・パトワも広く使われる |
| トリニダード・トバゴ | Trinidad and Tobago | 英語が公用語 |
| バルバドス | Barbados | 英語が公用語 |
| グレナダ | Grenada | 英語が公用語 |
| ドミニカ国 | Dominica | 英語が公用語。クレオール語も使われる |
| セントルシア | Saint Lucia | 英語が公用語。フランス語系クレオールも使われる |
カナダの連邦公用語は英語とフランス語で、両言語は連邦機関において同等の地位を持ちます。ただし、州によって言語環境は異なり、ケベック州ではフランス語が中心です。
アメリカは長く、連邦レベルで英語を公用語とする包括的な指定がない国として説明されてきました。しかし、2025年3月1日の大統領令で英語が米国の公用語に指定されました。これは比較的新しい制度変更なので、古い教材や記事では「アメリカに公用語はない」と書かれている場合があります。
アジアで英語を公用語・行政言語として使う国
| 国 | 英語名 | 英語の位置づけ |
|---|---|---|
| シンガポール | Singapore | 英語、マレー語、中国語、タミル語が公用語 |
| フィリピン | the Philippines | 公的コミュニケーションと教育ではフィリピノ語と英語が公用語 |
| インド | India | 連邦行政でヒンディー語とともに英語が継続して使われる |
| パキスタン | Pakistan | ウルドゥー語を国語とし、行政では英語も重要な役割を持つ |
シンガポール憲法第153A条は、マレー語、中国語、タミル語、英語の4言語を公用語としています。マレー語は国語であり、英語は民族背景の異なる人同士を結ぶ教育・行政・ビジネス上の共通語として大きな役割を持ちます。
フィリピン憲法では、公的なコミュニケーションと教育のための公用語はフィリピノ語と英語です。一方、各地域の言語も補助公用語・教育媒体として位置づけられています。
インドは説明に注意が必要です。憲法上、連邦の公用語はデーヴァナーガリー文字のヒンディー語ですが、法律に基づいて英語も連邦行政、議会、司法、高等教育などで継続的に使われています。「インドの公用語は英語だけ」と理解するのは誤りです。
アジア各国の国名・国籍・言語・首都は、東南アジアの国名一覧と南アジア・中央アジアの国名一覧でも比較できます。
アフリカで英語を公用語とする代表的な国
アフリカには多言語国家が多く、英語が民族や地域を越える行政・教育上の共通語として使われる国があります。
| 地域 | 代表的な国 |
|---|---|
| 東アフリカ | ケニア、ウガンダ、ルワンダ、タンザニアなど |
| 西アフリカ | ナイジェリア、ガーナ、ガンビア、シエラレオネ、リベリアなど |
| 南部アフリカ | 南アフリカ、ザンビア、ジンバブエ、ボツワナ、ナミビア、マラウイ、レソト、エスワティニなど |
| 中部アフリカ | カメルーンなど |
ケニア憲法第7条では、スワヒリ語が国語であり、スワヒリ語と英語が公用語です。南アフリカでは英語は多数ある公用語の一つで、2023年には南アフリカ手話も公用語に加わりました。
ここでも「英語が公用語=家庭で英語だけを話す」という意味ではありません。地域言語、民族言語、旧宗主国由来の言語が重なり合い、複数言語を使い分ける人が多くいます。
詳しくは、アフリカの国名・国籍・言語・首都一覧、ケニアの英語名・国籍・言語、南アフリカの公用語と3つの首都もご覧ください。
オセアニアで英語を公用語・行政言語として使う国
| 国 | 英語名 | 補足 |
|---|---|---|
| フィジー | Fiji | 英語、フィジー語、フィジー・ヒンディー語などが社会で使われる |
| パプアニューギニア | Papua New Guinea | 英語、トク・ピシン、ヒリ・モツ語などが使われる |
| ソロモン諸島 | Solomon Islands | 英語が公用語。共通語としてピジンも広く使われる |
| バヌアツ | Vanuatu | ビスラマ語、英語、フランス語が公用語 |
| キリバス | Kiribati | キリバス語と英語が公的場面で使われる |
| ツバル | Tuvalu | ツバル語と英語が使われる |
| パラオ | Palau | パラオ語と英語が公用語 |
| ミクロネシア連邦 | the Federated States of Micronesia | 英語が共通の公用語として使われる |
オーストラリアとニュージーランドは?
オーストラリアでは英語が社会と政府の主要言語ですが、連邦レベルで「英語を唯一の法定公用語」とする単純な説明には注意が必要です。
ニュージーランドでも英語は最も広く使われる事実上の主要言語です。一方、マオリ語とニュージーランド手話には法律上の公用語としての地位があります。
つまり、英語母語話者が多い国でも、英語の法的地位が最も単純とは限りません。オセアニア全体の国名・言語はオセアニアの国名・国籍・言語・首都一覧でも確認できます。
英語が公用語なら、旅行でどこでも通じる?
必ずしもそうではありません。公用語は制度上の位置づけであり、一人ひとりの会話力や日常言語を保証するものではないからです。
- 都市部と地方で英語の使用頻度が違う
- ホテル・空港と市場・住宅地で違う
- 世代や教育歴によって違う
- 英語は読めても会話では現地語を使う場合がある
- 標準英語と現地の英語・クレオールの間に発音や語彙の違いがある
一方、英語が公用語ではないオランダや北欧諸国などで、旅行中に英語がよく通じることもあります。「公用語か」と「旅行で通じやすいか」は、関連はあっても同じ指標ではありません。
しゅみすけ(大山俊輔)
英語で「英語は公用語です」と言うには?
- English is an official language in Singapore.
英語はシンガポールの公用語の一つです。 - Canada has two official languages: English and French.
カナダには英語とフランス語という二つの公用語があります。 - English is widely used in government and education.
英語は政府と教育で広く使われています。 - English is not the first language of everyone.
英語が全員の第一言語というわけではありません。 - Many people speak another language at home.
多くの人は家庭で別の言語を話します。
よくある疑問
英語を公用語とする国は67か国ですか?
British Councilには67か国という整理があります。ただし、独立国だけか領土も含むか、法律上の公用語だけか実務上の行政言語も含むかによって数は変わります。「約60〜70の国で公的役割を持つ」と捉え、個別国では最新の憲法・法律を確認するのが正確です。
公用語と国語は同じですか?
同じとは限りません。公用語は政府や行政で使う制度上の言語、国語・国家語は国家の象徴や文化的中心として位置づけられる言語です。ケニアではスワヒリ語が国語で、スワヒリ語と英語が公用語です。
公用語が複数あるのはなぜですか?
複数の民族・言語共同体が暮らしていること、歴史的に複数言語が行政や教育で使われてきたこと、言語的権利を守る必要があることなどが理由です。複数公用語は、社会の多様性を制度に反映する仕組みでもあります。
英語が公用語なら英語留学に向いていますか?
公用語であることは一つの材料ですが、それだけでは決まりません。授業言語、教師の質、日常で英語を使う頻度、現地英語の特徴、費用、治安、ビザなども確認しましょう。
まとめ
- 英語は世界の約60〜70か国で公用語・行政言語として重要な役割を持つ
- 正確な国数は、公用語の定義や領土の数え方によって変わる
- 公用語は政府や公的機関で使う言語であり、母語とは別の概念
- 英語が公用語でも、家庭では別の言語を話す人が多い国がある
- 英語が公用語でなくても、旅行や仕事で英語が通じやすい国はある
- アメリカでは2025年の大統領令により英語が公用語に指定された
- イギリス、オーストラリア、ニュージーランドなどは、実際の使用と法的地位を分けて見る必要がある
英語を公用語とする国の一覧は、単なる暗記表ではありません。その背後には、植民地化、独立、多民族社会、教育、行政、地域言語の保護というそれぞれの歴史があります。
次は「英語を母語とする人が多い国」「英語を第二言語として使う国」へ進むと、公用語だけでは見えなかった世界の英語の姿がさらに立体的になります。
参考情報
- British Council: Future of English
- The White House: Designating English as the Official Language of the United States
- Government of Canada: Official Languages
- Constitution of Ireland: Article 8
- Singapore Statutes Online: Constitution, Article 153A
- 1987 Constitution of the Philippines
- Constitution of Kenya
- Constitution of South Africa: Founding Provisions









