
「英語圏」と聞くと、アメリカ、イギリス、オーストラリアなどを思い浮かべる人が多いでしょう。ところが、世界へ目を向けると、英語はそれよりはるかに広い地域で使われています。
英語を家庭で使う人が多い国もあれば、家庭では別の言語を話しながら、学校・行政・仕事では英語を使う国もあります。さらに、英語が公用語ではなくても、観光や国際ビジネスでかなり通じやすい国もあります。
つまり、「英語圏」には世界共通の厳密な一つの線引きがあるわけではありません。何を知りたいかによって、含める国が変わります。
この記事では、英語が使われる国を次の3つの見方で整理します。
- 英語を母語として使う人が多い国
- 英語を公用語・行政言語として使う国
- 英語を第二言語・共通語として広く使う国
旅行先を選びたい人、留学先の英語環境を知りたい人、世界の英語の広がりを理解したい人にも分かりやすく見ていきましょう。
Contents
英語圏とは?簡単にいうと
英語圏とは、一般には英語が社会の中で広く使われている国や地域を指します。英語では the English-speaking world や English-speaking countries と表現できます。
- the English-speaking world:英語が使われる世界・文化圏全体
- English-speaking countries:英語が話されている国々
- an English-speaking country:英語が広く話される一つの国
ただし、English-speaking country と書かれていても、それが「国民の大多数が英語のネイティブ」という意味とは限りません。英語が公用語の一つである国や、異なる母語を持つ人同士の共通語として使われる国も含まれることがあります。
しゅみすけ(大山俊輔)
英語圏は3つの見方に分けると分かりやすい

世界の英語環境は、きれいに三分割できるものではありません。三つのグループは重なります。たとえば、英語を母語とする人が多く、同時に行政でも英語を使う国があります。一方、英語が公用語でも、家庭では別の言語を使う人の方が多い国もあります。
| 見方 | 英語の主な役割 | 代表例 |
|---|---|---|
| 母語として使う国 | 家庭や日常生活の第一言語 | アメリカ、イギリス、オーストラリアなど |
| 公用語として使う国 | 行政、教育、法律、公共機関など | シンガポール、インド、ケニアなど |
| 第二言語・共通語として使う国 | 異なる母語の人同士、仕事、観光など | フィリピン、南アフリカ、北欧諸国など |
英語を母語とする人が多い代表的な国
まず、日本で「英語圏」と聞いたときに最も想像しやすいグループです。英語が家庭、学校、メディア、仕事など日常生活の中心で使われています。
- アメリカ(the United States / the US)
- イギリス(the United Kingdom / the UK)
- カナダ(Canada)
- オーストラリア(Australia)
- ニュージーランド(New Zealand)
- アイルランド(Ireland)
ただし、この中にも多言語性があります。カナダでは英語とフランス語が重要な位置を占め、イギリスにもウェールズ語、スコットランド・ゲール語などがあります。アイルランドではアイルランド語も国の言語として大切にされています。
したがって、「英語母語国」と呼ばれる国でも、住民全員が英語だけを話すわけではありません。また、移民の多い都市では、家庭で中国語、スペイン語、アラビア語などを使う人も大勢います。
英語を公用語として使う代表的な国
公用語とは、政府、行政、法律、教育など、公的な場面で使うことが定められた言語です。英語が公用語だからといって、国民の大多数が英語を母語としているとは限りません。
- シンガポール:英語、マレー語、中国語(標準中国語)、タミル語が公用語
- インド:多言語社会の中で、英語が行政や高等教育、ビジネスで大きな役割を持つ
- フィリピン:フィリピノ語とともに英語が教育、行政、仕事で広く使われる
- ケニア:英語とスワヒリ語が国を越えた交流や公的場面で重要
- ナイジェリア:多数の言語がある中で、英語が行政や教育の共通言語として使われる
- 南アフリカ:英語を含む複数の公用語を持つ
- マルタ:マルタ語と英語が公用語
たとえばシンガポール憲法は、マレー語、中国語、タミル語、英語の4言語を公用語としています。英語は民族や家庭言語が異なる人同士をつなぐ役割も担います。これは「英語が公用語」と「英語が母語」が同じではないことを理解しやすい例です。
国別の英語名・国籍・言語・首都をまとめて確認したい場合は、アフリカの国名・国籍・言語・首都一覧、北米の国名・国籍・言語・首都一覧、中南米の国名・国籍・言語・首都一覧もあわせてご覧ください。
英語を第二言語・共通語として使う国
英語の役割を理解するうえで欠かせないのが、第二言語と共通語です。
第二言語は、母語とは別に、生活、教育、仕事などで継続的に使う言語です。共通語は、異なる母語を持つ人同士が意思疎通のために選ぶ言語で、英語では lingua franca と呼ばれます。
たとえば、日本人とドイツ人がフランスの会社で英語を使って話す場合、英語は誰の母語でもないかもしれません。それでも、英語が三者をつなぐ共通語になります。
この使われ方は、アジア、ヨーロッパ、アフリカ、中東など世界中に広がっています。British Councilは、英語を話す人の多数にとって英語は追加言語であり、世界の英語話者を約23億人とする情報を紹介しています。ただし、人数は「どの程度話せれば英語話者と数えるか」で変わるため、固定された唯一の数字ではありません。
英語が公用語ではなくても通じやすい国がある
英語の公用語指定と、旅行中の通じやすさも別の話です。オランダや北欧諸国などでは、英語が国の中心的な公用語ではなくても、観光地、ホテル、飲食店、交通機関などで英語が通じやすい場面があります。
反対に、英語が公用語の国でも、地方や家庭内では現地語が中心で、場所や世代によって英語の通じやすさが変わることがあります。
旅行の視点では、次の四つを分けて考えると実用的です。
- 英語が法律上の公用語か
- 学校教育でどの程度使われているか
- 都市部・観光地で英語対応があるか
- 自分が訪れる地域・施設で実際に通じるか
「英語圏だから必ずどこでも英語だけで大丈夫」「非英語圏だから英語は通じない」という二択ではありません。
世界では英語はどれくらい使われている?
英語話者数には複数の推計があります。母語話者だけを数えるのか、第二言語話者を含めるのか、学校で学んでいる人まで含めるのかによって結果が変わるからです。
大切なのは、英語は母語話者だけの言語ではないという点です。国際機関でも英語は重要な役割を持ち、国際連合では英語は6つの公用語の一つです。国連事務局では英語とフランス語が作業言語として使われています。
つまり、世界で英語を使う場面の多くは、「ネイティブ同士の会話」ではなく、異なる言語背景を持つ人同士の会話です。
しゅみすけ(大山俊輔)
英語圏の英語は全部同じではない
英語は使われる土地の歴史や他の言語との接触によって、発音、語彙、綴り、リズム、文法の一部が変化してきました。
- イギリス英語
- アメリカ英語
- カナダ英語
- オーストラリア英語
- ニュージーランド英語
- アイルランド英語
- インド英語
- シンガポール英語
- フィリピン英語
- アフリカ各地の英語
どれか一つだけが「本物の英語」で、ほかが間違いということではありません。場面に応じた標準的な書き言葉は必要ですが、話し言葉には地域と文化が現れます。この多様性は今後、「イギリス英語」「アメリカ英語」「World Englishes」などの記事で詳しくつないでいきます。
英語そのものの成り立ちを先に知りたい方は、英語は何語族?ゲルマン語派と他言語の関係、英語はどこから来た?英語の起源と古英語、英語の特徴と日本語との違いもおすすめです。
よくある疑問
英語圏は何か国ありますか?
「英語圏」に一つの公式定義がないため、何か国と断定することはできません。英語母語国だけを含めるのか、公用語国や第二言語として広く使う国まで含めるのかで数が変わります。British Councilの「Future of English」では、英語が67か国で公用語になっているという整理が紹介されていますが、制度変更や地域の扱い、数え方にも注意が必要です。
英語圏と英語が通じる国は同じですか?
同じではありません。英語圏は英語が社会の中で継続的な役割を持つ国・地域を指すことが多い一方、「英語が通じる国」は旅行者の体感や地域差を含む表現です。非英語圏でも都市部や観光地では英語がよく通じることがあります。
公用語なら国民全員が英語を話せますか?
いいえ。公用語は公的制度の中での言語の位置づけです。実際の会話力や家庭言語は、地域、教育、世代、職業などによって異なります。
アメリカ英語とイギリス英語のどちらを学ぶべきですか?
最初は、教材や先生に合わせて一方を基準にすると学びやすくなります。ただし、世界ではさまざまな英語が使われます。発音や単語の違いを「間違い」ではなく「地域差」として知り、複数の英語を聞く経験を増やす方が実践的です。
まとめ
- 英語圏には、世界共通の厳密な一つの定義はない
- 母語、公用語、第二言語・共通語の3つで見ると分かりやすい
- 英語が公用語でも、英語母語話者が多数とは限らない
- 英語が公用語でなくても、旅行や仕事で通じやすい国はある
- 世界の英語利用では、非ネイティブ同士の会話も大きな割合を占める
- 英語には地域ごとの発音、語彙、綴り、文化的な違いがある
英語圏を国のリストだけで覚えると、境界線が曖昧に見えます。しかし、「誰が、どこで、何のために英語を使っているか」に注目すると、英語が世界へ広がった姿が見えてきます。
英語は、アメリカやイギリスだけに閉じた言語ではありません。多くの母語と文化を持つ人が、自分たちの声で使っている世界の共有財産でもあります。
参考情報
- British Council: Future of English
- British Council: What role does English play in our multilingual world?
- United Nations: Official Languages
- Singapore Statutes Online: Constitution, Article 153A
英語そのものをもっと知りたい方へ:語族・起源・歴史・特徴・語彙・世界への広がりを一つの地図にまとめた「英語とは?」総合ガイドもあわせてご覧ください。









