
イギリス英語とアメリカ英語は、発音だけでなく、綴り・単語・文法・日付の書き方などにも違いがあります。colour と color、flat と apartment、I’ve just eaten. と I just ate. などが代表例です。
しかし、両者は別の言語ではありません。基本的な文法と語彙の大部分を共有しており、通常は問題なく意思疎通できます。違いの多くは「正しい・間違い」ではなく、それぞれの地域で一般的な選択の違いです。
この記事では、イギリス英語(British English / BrE)とアメリカ英語(American English / AmE)の違いを、発音・綴り・単語・文法・表記の順に比較します。最後に、日本人学習者はどちらを選ぶべきか、混ざっても大丈夫なのかも整理します。
しゅみすけ(大山俊輔)
Contents
イギリス英語とアメリカ英語の違いを一覧比較
| 比較項目 | イギリス英語 | アメリカ英語 |
|---|---|---|
| 語末のr | RPなどでは弱い・発音しない | 比較的はっきり発音 |
| 母音間のt | 教材では比較的明瞭 | 軽いラ行のようになることがある |
| 綴り | colour, centre | color, center |
| 住居 | flat | apartment |
| エレベーター | lift | elevator |
| 最近の出来事 | I’ve just eaten. | I just ate. も一般的 |
| 集合名詞 | 単数・複数の両方 | 単数扱いが一般的 |
| 日付 | day / month / year | month / day / year |
これは大きな傾向を示したものです。両国の中にも多様な地域アクセントがあり、映画・SNS・移住などを通して語彙も相互に流入しています。「イギリス人なら必ずこう言う」という絶対的な境界ではありません。

違い1:発音|r・t・母音・単語の強勢
英米差として最も耳に入りやすいのが発音です。ただし「イギリス英語の発音」として教材で扱われるのは、主にReceived Pronunciation(RP)に近いモデルです。実際のイギリスには多数の地域アクセントがあり、アメリカにも南部、東海岸、中西部など多様な話し方があります。
car・teacherなどのr
RPなど多くのイングランド系アクセントでは、母音の後のrを通常は発音しません。car、hard、teacher の語末は、rの響きが弱くなります。アメリカ英語ではrを比較的はっきり発音するのが一般的です。
ただし、スコットランド英語やイングランド南西部などにはrを発音するアクセントがあります。「イギリス英語はrを発音しない」は、イギリス全土に当てはまる規則ではありません。
water・betterなどのt
標準的なイギリス英語教材では、water や better のtを比較的明瞭に発音します。一般的なアメリカ英語では、母音に挟まれたtがflap tとなり、日本語の軽いラ行に近く聞こえることがあります。
一方、実際のイギリスの話し言葉ではtが声門閉鎖音となり、途中が一瞬止まるように聞こえる場合もあります。「アメリカはtが弱く、イギリスは常にはっきり」という単純な対立ではありません。
bath・dance・can’tの母音
RPや南部イングランド系では、bath、dance、class、can’t などを長めの「アー」に近い母音で発音します。アメリカ英語では cat に近い母音が一般的です。ただし、イングランド北部ではアメリカ英語に近い短い母音も広く使われます。
tomato・schedule・advertisement
単語そのものの発音や強勢が違う例もあります。
- tomato:UKは「トマートウ」、USは「トメイトウ」に近い
- schedule:UKでは /ʃ/ で始まる発音、USでは /sk/ が一般的
- advertisement:母音と強勢の位置が異なる
- vitamin:最初の母音がUKとUSで異なる
発音はカタカナだけで正確に再現できません。Cambridge DictionaryなどでUK・US両方の音声を聞き比べるのが確実です。
違い2:綴り|colourとcolor、centreとcenter
文章では発音より境界が見えやすく、英米で代表的な綴りの傾向があります。
| パターン | イギリス英語 | アメリカ英語 |
|---|---|---|
| -our / -or | colour, favourite, labour | color, favorite, labor |
| -re / -er | centre, theatre, metre | center, theater, meter |
| -ce / -se | defence, offence | defense, offense |
| 子音字の重なり | travelling, cancelled | traveling, canceled |
| -ogue / -og | catalogue, dialogue | catalog, dialogも一般的 |
| 名詞・動詞 | licence / license、practice / practise | license、practice |
ただし、organise と organize には注意が必要です。イギリスでは-iseが広く使われますが、Oxford系の表記では-izeも採用されます。そのため、-izeを見ただけで必ずアメリカ英語とは限りません。
メールや会話で綴りが混ざっても、通常は意味が通じます。ただし、論文、出版物、試験、企業文書では表記の一貫性が重視されます。WordやGoogle Docsの校正言語をEnglish (UK)またはEnglish (US)に設定すると統一しやすくなります。
違い3:単語|flatとapartment、liftとelevator
日常生活の単語には、英米で異なるものが多数あります。
| 日本語 | イギリス英語 | アメリカ英語 |
|---|---|---|
| アパート | flat | apartment |
| エレベーター | lift | elevator |
| 休暇 | holiday | vacation |
| 携帯電話 | mobile phone | cell phone |
| 懐中電灯 | torch | flashlight |
| 車のトランク | boot | trunk |
| 車のボンネット | bonnet | hood |
| ガソリン | petrol | gas / gasoline |
| 列 | queue | line |
| ごみ | rubbish | trash / garbage |
| 郵便番号 | postcode | ZIP code |
| 映画 | film | movie |
| お菓子 | sweets | candy |
| 紙おむつ | nappy | diaper |
| サッカー | football | soccer |
同じ単語でも意味が違う場合
特に注意したいのは、同じ単語が異なるものを指す例です。
- pants:USではズボン、UKでは下着を指すことがある
- chips:UKではフライドポテト、USではポテトチップス
- crisps:UKでポテトチップス
- biscuit:UKでは甘い・塩味の焼き菓子、USでは柔らかいパンに近い食品
- first floor:UKでは日本の2階、USでは日本の1階
とはいえ、文脈があれば多くの場合は理解できます。通じなければ、the place where you live、the back of the car のように知っている英語で説明すれば十分です。
違い4:文法|現在完了・集合名詞・過去形
英米で文法の基本構造は共通しています。違いは主に「どの形を好むか」に現れます。
現在完了と過去形
イギリス英語では、現在に関係する最近の出来事に現在完了を使いやすい傾向があります。
UK: I’ve just finished.
US: I just finished.
already、just、yet を伴う文でも、アメリカ英語では過去形が自然に使われます。ただし、アメリカ英語でも現在完了を使い、イギリス英語でも過去形は使われます。
集合名詞の単数・複数
イギリス英語では team、government、staff などを構成員の集まりとして捉え、複数動詞で受けることがあります。
UK: The team are playing well.
US: The team is playing well.
イギリス英語でも一つの組織として捉える場合は単数にできます。意味の見方によって形が変わるため、必ず複数になるわけではありません。
have gotとhave
所有を表すとき、イギリス英語では have got がよく使われます。
UK: I’ve got a new car.
US: I have a new car.
どちらも英米双方で理解されます。アメリカ英語にも have got はありますが、単純な所有では have がより一般的です。
過去形・過去分詞
learned / learnt、dreamed / dreamt、burned / burnt などは、イギリス英語で-t形が比較的よく使われ、アメリカ英語では-ed形が一般的です。ただし、両方が認められる語も多くあります。
違い5:前置詞・表現
| 意味 | イギリス英語 | アメリカ英語 |
|---|---|---|
| 週末に | at the weekend | on the weekend |
| 入院して | in hospital | in the hospital |
| チームで | in a team | on a team |
| 月曜から金曜まで | Monday to Friday | Monday through Friday |
| 誰かに手紙を書く | write to someone | write someone / write to someone |
また、イギリス英語では提案に shall を使う Shall we go? が比較的身近です。アメリカ英語でも通じますが、Should we go? や Do you want to go? などがよく使われます。
違い6:日付・時刻・句読点
日付の順序
イギリス式は日・月・年、アメリカ式は月・日・年が基本です。
- UK: 16 August 2026 / 16/08/2026
- US: August 16, 2026 / 08/16/2026
数字だけの 03/04/2026 は、イギリス式なら4月3日、アメリカ式なら3月4日になり得ます。国際的な文書では月を英単語で書くと安全です。
時刻表現
イギリスでは half past six、quarter to seven のような表現をよく耳にします。アメリカでも通じますが、six thirty、six forty-five のように数字で言うことが多くあります。
引用符と句読点
出版スタイルでは、イギリス式が一重引用符を基本にする場合が多く、アメリカ式は二重引用符を基本にします。またアメリカ式ではピリオドやコンマを引用符の内側へ入れるのが一般的です。ただし媒体ごとのスタイルガイドが優先されます。
どちらが正しい?どちらが世界で通じる?
どちらも正しい英語です。英語が世界共通語となった現在、実際に耳にする英語はイギリス式とアメリカ式だけでもありません。カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、インド、シンガポールなど、それぞれの地域に特徴があります。
アメリカ英語は映画・音楽・ITを通して世界的な露出が大きく、イギリス英語はヨーロッパ、旧英連邦諸国、IELTSなどで接する機会があります。どちらか一方しか通じないということではありません。
日本人はどちらを学ぶべき?
目的が明確なら、それに近い英語を基準にしましょう。
- イギリス留学・IELTS・英国企業との仕事:イギリス英語を軸にする
- アメリカ留学・TOEFL・北米企業との仕事:アメリカ英語を軸にする
- 特に目的がない:今使っている教材の方式を基準にする
日本の学校教育や市販教材ではアメリカ英語が多いため、無理に変更する必要はありません。一方、リスニングでは両方に触れることをおすすめします。発音を一種類に固定して覚えるより、複数の音を同じ単語として認識できるほうが実用的です。
イギリス英語とアメリカ英語が混ざっても大丈夫?
会話では、ほとんどの場合問題ありません。colour と書きながら tomato をアメリカ式に発音しても、意味が通じなくなるわけではありません。英語母語話者自身も、メディアや移住の影響で複数の表現を知っています。
ただし、正式な文章では統一したほうが読みやすくなります。特に履歴書、論文、Webサイト、契約書、試験では、綴り・日付・句読点を一つの方式に揃えましょう。
しゅみすけ(大山俊輔)
まとめ|違いはあるが、どちらも同じ英語
- 発音ではr・t・母音・強勢に違いがある
- 綴りではcolour / color、centre / centerなどの傾向がある
- 単語ではflat / apartment、lift / elevatorなどが異なる
- 文法では現在完了、集合名詞、have gotなどの好みに違いがある
- 日付はUKが日・月・年、USが月・日・年
- 会話で混ざっても問題は少ないが、正式な文章では統一するとよい
英米差は、どちらが正しいかを選別するための知識ではありません。異なる英語に出会ったとき、意味を取りこぼさないための地図です。
イギリス国内の多様な発音や言葉を詳しく知りたい方は、イギリス英語とは?特徴・発音・単語・綴りをご覧ください。英語が各地へ広がった歴史は、なぜ英語が世界共通語になったのかで解説しています。
参考資料
- Cambridge Dictionary: British and American English
- British Council: British English and American English
- British Council IELTS: British or American English?
- Cambridge Dictionary: UK and US pronunciation symbols
英語そのものをもっと知りたい方へ:語族・起源・歴史・特徴・語彙・世界への広がりを一つの地図にまとめた「英語とは?」総合ガイドもあわせてご覧ください。









