「英語を第二言語として使う国」とは、英語を母語としない人が多い一方で、英語が学校、行政、仕事、メディア、異なる言語の人同士の会話などに日常的に使われている国を指します。
代表的なのは、インド、シンガポール、フィリピン、マレーシア、パキスタン、ナイジェリア、ガーナ、ケニア、南アフリカなどです。ただし、同じ国の中でも地域、世代、教育歴、職業によって英語を使う頻度や得意さは大きく異なります。
この記事では、「第二言語」と「外国語」の違いから、英語が第二言語として機能する代表的な国、そこで話される英語の特徴まで分かりやすく整理します。
先に結論:第二言語としての英語は、英米の英語を単にまねたものではありません。多言語社会で行政・教育・仕事・人と人をつなぐために育った、生活の中の英語です。
Contents
英語の「第二言語」とは?
第二言語(second language)とは、母語のあとに身につけ、その人が暮らす社会の中で実際に使う言語です。
たとえば、家庭ではタミル語を話し、学校の授業や職場では英語を使う人にとって、英語は第二言語になります。異なる母語を持つ隣人や同僚と話すために英語を使う場合も同じです。
ここでいう「第二」は、能力が2番目という意味ではありません。生活の変化によっては、母語より英語を頻繁に使ったり、読み書きは英語のほうが得意になったりする人もいます。また、三つ以上の言語を使う人にとって、英語が文字どおり「二つ目」とは限りません。
第二言語と外国語の違い
| 区分 | 意味 | 典型的な使われ方 |
|---|---|---|
| 母語・第一言語 | 幼少期から自然に身につけた言語 | 家庭、地域、日常生活 |
| 第二言語 | 母語以外で、その社会の中でも実際に使う言語 | 学校、役所、仕事、共通語、メディア |
| 外国語 | 主に学習対象として身につける外国の言語 | 授業、試験、海外旅行、外国人との交流 |
日本で英語を学ぶ多くの人にとって、英語は一般に外国語です。日本国内の行政や日常生活の大部分を、日本語だけで営めるからです。
一方、シンガポールやインドなどでは、英語を使わないと学校の授業、役所の文書、専門職の仕事、異なる言語集団との会話で不便が生じることがあります。このように、英語が社会の内部で役割を持つ場合、「第二言語としての英語」と捉えやすくなります。

しゅみすけ(大山俊輔)
英語を第二言語として使う代表的な国一覧
世界共通の厳密な認定リストはありません。ここでは、英語が公的制度や教育、仕事、国内の共通語として広く機能している代表例を挙げます。
| 国 | 主な母語・地域言語の例 | 英語が担う主な役割 |
|---|---|---|
| インド | ヒンディー語、ベンガル語、タミル語、テルグ語など | 連邦行政、州を越えた交流、高等教育、IT・ビジネス |
| シンガポール | 中国語系諸語、マレー語、タミル語など | 教育、行政、職場、民族間の共通語、家庭 |
| フィリピン | タガログ語、セブアノ語、イロカノ語など | 行政、教育、ビジネス、メディア、国際業務 |
| マレーシア | マレー語、中国語系諸語、タミル語など | 高等教育、民間企業、観光、民族間の交流 |
| パキスタン | パンジャブ語、パシュトー語、シンド語、ウルドゥー語など | 行政、司法、高等教育、専門職 |
| ナイジェリア | ハウサ語、ヨルバ語、イボ語など | 行政、教育、メディア、多民族間の共通語 |
| ガーナ | アカン諸語、エウェ語、ガ語など | 行政、学校教育、ビジネス、全国的な意思疎通 |
| ケニア | スワヒリ語、キクユ語、ルオ語など | 行政、教育、都市部の仕事、国際交流 |
| 南アフリカ | ズールー語、コサ語、アフリカーンス語など | 公用語の一つ。高等教育、ビジネス、全国メディア |
ほかにも、ウガンダ、ザンビア、ジンバブエ、ボツワナ、カメルーン、ルワンダなど、アフリカの多くの国で英語が重要な役割を果たしています。カリブ海や太平洋の国々にも、英語または英語系クレオールが広く使われる社会があります。
代表的な国の英語事情
インド:州を越えて人をつなぐ英語
インドは世界有数の多言語国家です。憲法の第8附則には22の言語が記載され、それ以外にも多くの言語・方言があります。連邦の公用語はヒンディー語ですが、英語も議会、司法、連邦と州の連絡などで引き続き使われています。
英語は特に、高等教育、科学技術、IT、医療、法律、全国規模の企業で重要です。異なる州の出身者同士が、互いの母語を知らないときの共通語になることもあります。
ただし、インド人全員が英語を流暢に話すわけではありません。都市と農村、教育機会、社会階層による差もあります。「インドでは英語が通じる」と「どこでも誰にでも英語が通じる」は別の話です。
シンガポール:英語が共通語から家庭の言葉にもなった国
シンガポールには英語、マレー語、中国語、タミル語という四つの公用語があります。民族や家庭の言語が異なる人々をつなぐ共通語として、英語が学校教育、行政、ビジネスで中心的な位置を占めています。
シンガポール統計局の2020年国勢調査では、5歳以上の居住者の48.3%が家庭で最もよく話す言語として英語を挙げました。第二言語や共通語として広がった英語が、次の世代では家庭の主要言語や第一言語になることもある。その変化がよく見える例です。
日常会話では、英語に中国語系諸語、マレー語、タミル語などの影響が重なった「シングリッシュ」も使われます。場面に応じて標準的な英語とシングリッシュを使い分ける人も少なくありません。
フィリピン:教育・仕事・メディアで使われる英語
フィリピンの公用語はフィリピノ語と英語です。フィリピン統計庁の2020年国勢調査では、家庭で最も広く話されていたのはタガログ語で、全世帯の39.9%でした。つまり、英語が重要でも、家庭の中心言語は地域の言葉である人が多いということです。
英語は学校教育、政府、法律、大学、ビジネス、放送などに深く浸透しています。国際企業の業務やBPO産業でも大きな役割を持ちます。
フィリピン英語にも独自の発音、語彙、表現があります。それは学習途中の英語というより、社会の中で定着した英語の一種として捉えられています。
マレーシア:マレー語を軸に英語も広く使う
マレーシアではマレー語が国語・公用語の中心です。一方、英語は民間企業、高等教育、観光、国際取引、都市部の日常会話などで広く使われます。
マレー系、中国系、インド系など多様な背景の人々が暮らすため、英語が民族間の橋渡しになることがあります。会話ではマレー語や中国語系諸語、タミル語などの影響を受けたマレーシア英語も聞かれます。
ナイジェリア:多民族国家の共通語
ナイジェリアには数百の言語があるとされます。ハウサ語、ヨルバ語、イボ語など大規模な言語がある一方、国全体の行政、教育、全国メディア、異なる民族間のやり取りには英語が使われます。
また、英語を基盤とするナイジェリア・ピジンも広く話されます。公的文書で使われる標準的な英語と、日常の親しい会話で使われるピジンを場面によって使い分ける人もいます。
ケニア:スワヒリ語と英語を使い分ける
ケニアではスワヒリ語と英語がともに重要です。スワヒリ語は地域を越えた日常の共通語として強く、英語は行政、学校、高等教育、専門職、国際ビジネスで使われます。
家庭の言語、地域の言語、スワヒリ語、英語を使い分ける人も多く、「母語+共通語+英語」という多層的な言語生活が見られます。
南アフリカ:英語は有力だが、最大の母語ではない
南アフリカでは、南アフリカ手話を含む12の公用語が認められています。2022年の統計では、家庭で最もよく使われる言語はズールー語が24.4%、コサ語が16.3%、アフリカーンス語が10.6%で、英語は最大の家庭言語ではありません。
それでも英語は、企業、高等教育、政府機関、全国メディア、異なる言語集団間の交流で大きな存在感を持ちます。母語人口の割合だけでは、その社会的影響力を説明できない好例です。
なぜこれらの国で英語が第二言語になったのか
1.イギリス植民地支配の歴史
多くの国では、イギリスの植民地支配の中で英語が行政、裁判、学校教育に導入されました。独立後も、すでに法律や官僚制度、高等教育に組み込まれていた英語が残りました。
英語の広がりには支配と格差の歴史も含まれます。単に「便利だから自然に選ばれた」とだけ説明すると、その背景を見落としてしまいます。
2.多数の言語を持つ国内の共通語
多言語国家では、一つの民族や地域の言語だけを全国共通語にすると、別の集団に不公平だと受け止められることがあります。そこで、国内の誰にとっても母語ではない、または特定地域だけの言葉ではない英語が橋渡し役として残る場合があります。
3.高等教育と専門知識への入口
大学教材、研究論文、医学、工学、ITなどでは英語の情報量が多く、英語による授業が行われる国もあります。英語力が進学や専門職への入口になりやすい一方、教育格差を広げるという課題も生まれます。
4.国際ビジネスと雇用
観光、貿易、IT、金融、BPO、多国籍企業など、国外との接点が多い産業では英語が仕事の共通語になります。その結果、家庭では使わなくても、職場では毎日英語を使う人が増えます。
英語が世界規模でこの役割を持つようになった歴史は、なぜ英語が世界共通語になったのかで詳しく解説しています。
「第二言語として英語を使う国」の人は全員英語が得意?
いいえ。国の制度として英語が使われていても、国民全員が同じレベルで話せるわけではありません。
- 都市部と農村部
- 英語で教育を受けた期間
- 公立・私立など学校環境
- 家庭の経済状況
- 職業や日常的に英語を使う頻度
- 地域社会で使われる共通語
こうした条件によって差が生まれます。反対に、英語が母語でなくても、仕事や学業で毎日使い、非常に高い運用力を持つ人もいます。
英語を公用語とする国と、英語を話せる人が多い国も完全には一致しません。制度、母語、実際の使用、能力を分けて見ることが大切です。
第二言語として話される英語も「本物の英語」
インド英語、シンガポール英語、フィリピン英語、ナイジェリア英語などには、それぞれ発音、語彙、リズム、表現の特徴があります。地域の言語や文化と接触しながら、何世代にもわたって発展してきたためです。
これらをすべて「アメリカ英語やイギリス英語から外れた間違い」と見るのは適切ではありません。公的・国際的な場では広く通じる表現を選び、地元の会話では地域らしい英語を使うというように、話者は場面に合わせて調整しています。
世界で実際に英語を使う人の多くは、英語母語話者同士ではなく、異なる母語を持つ人同士です。その意味で、第二言語として話される英語は、現代の世界英語の中心にあります。
しゅみすけ(大山俊輔)
旅行で英語はどのくらい通じる?
第二言語として英語が使われる国では、空港、ホテル、観光地、大学、都市部、国際企業では英語が通じやすい傾向があります。しかし、地方の市場や小さな商店、年配者との会話では地域言語の比重が高くなることがあります。
旅行者としては、次の姿勢が役立ちます。
- 短く、具体的な英語で話す
- 相手のアクセントが分からなければ、ゆっくり繰り返してもらう
- こちらの英語も伝わっているか確認する
- 地名や住所は文字で見せる
- 挨拶やお礼だけでも現地語を覚える
- 「英語が公用語だから全員話せる」と決めつけない
国ごとの言語や首都も確認するなら、東南アジアの国名・国籍・言語・首都、アフリカの国名・国籍・言語・首都もあわせて活用してください。
よくある質問
日本では英語は第二言語ですか?
一般的には外国語です。日本語が行政、教育、仕事、日常生活の中心であり、日本国内で暮らすために英語が必須とは限らないからです。ただし、英語を家庭や職場で日常的に使う個人にとっては、英語が第二言語になることがあります。
第二言語と公用語は同じですか?
同じではありません。公用語は国や地域の制度上の地位、第二言語は人や社会における身につけ方・使われ方を表します。英語が公用語でも使う機会が少ない人もいれば、正式な公用語でなくても仕事や教育で英語を頻繁に使う人もいます。
シンガポールの英語は第二言語ですか?
人によって異なります。家庭で中国語系諸語、マレー語、タミル語などを身につけ、学校で英語を学ぶ人には第二言語です。一方、現在は家庭で英語を最初に身につける人も多く、その人にとって英語は母語・第一言語になり得ます。
英語を第二言語として使う人は、ネイティブではないのですか?
一般には非母語話者と呼ばれますが、境界は単純ではありません。幼少期から複数言語を身につけた人や、英語を最も得意な言語として使う人もいます。「ネイティブ/非ネイティブ」だけでは、多言語話者の実像を表せない場合があります。
まとめ:第二言語としての英語は、多言語社会を動かしている
英語を第二言語として使う代表的な国には、インド、シンガポール、フィリピン、マレーシア、パキスタン、ナイジェリア、ガーナ、ケニア、南アフリカなどがあります。
これらの国では、多くの人が地域や家庭の言語を持ちながら、英語を行政、教育、仕事、異なる言語集団間の共通語として使っています。
世界の英語を理解するには、「英語を母語とする国」だけを見るのでは不十分です。英語圏とは?英語が話されている国一覧や、英語を母語とする人が多い国とあわせて読むと、英語が世界で果たす複数の役割が見えてきます。
主な参考資料
- Government of India: The Official Languages Act, 1963
- Government of India: Languages Included in the Eighth Schedule
- Singapore Department of Statistics: Census 2020
- Philippine Statistics Authority: Language Spoken at Home, 2020 Census
- Statistics South Africa: Language patterns from Census 2022









