英語の再音節化とは?turn off・pick it upで語末子音が次の母音へつながる理由

turn off、pick it up、leave itで語末子音が次の母音へつながる再音節化のイラスト

turn off、pick it up、leave it。文字では単語の間に空白がありますが、自然な英語を聞くと、語末の子音と次の語頭母音が一まとまりになって聞こえます。

これは一般に子音+母音のリンキングとして説明されます。その背後にある音節構造の考え方が、再音節化(resyllabification)です。単語だけで発音したときは前の音節の終わりにいた子音が、連続発話では次の音節の始まりのように働く、と分析します。

再音節化とは、音を別の音節へ組み直すこと

英語の音節には、中心となる母音と、その前後に置かれる子音があります。母音の前にある子音はオンセット、母音の後ろにある子音はコーダと呼ばれます。

turnを単独で発音すれば、最後の/n/は語末、つまり音節のコーダです。しかしturn offを一続きで発音すると、その/n/は後ろの母音/ɒ/または/ɔ/へ滑らかにつながり、offの音節を始める子音のようにも聞こえます。

音節の所属が組み直されたように見えるため、「再び音節化する」という意味で再音節化と呼ばれます。

pick it upでは、文字と音の境界がずれる

pick it upの文字の区切りと実際の音のまとまりを比較する説明図

文字では、pick|it|upという三つの単語です。ところが発音運動は、単語ごとに停止しません。

  • pickの最後の/k/が、itの母音/ɪ/へつながる
  • itの最後の/t/が、upの母音/ʌ/へつながる

その結果、聞き手には/k/や/t/が次の語を始めているように感じられます。ただし、意味や文法上の単語境界が消えたわけではありません。文字・語彙の境界は残ったまま、発音上の音節のまとまり方だけがずれるのです。

なぜ英語は語末子音を次の母音へつなげるのか

英語の音節は、母音の前に子音を置きやすい

英語では、母音だけで始まる音節より、子音+母音で始まる音節が非常に多くあります。語末子音の直後に母音が来ると、発音器官を止めて境界を作るより、その子音の解放を次の母音へ直接つなぐほうが運動として滑らかです。

単語ではなく、発話全体で音節が組まれる

会話では、話者は単語カードを一枚ずつ読み上げているわけではありません。意味上まとまった語句を、一つの韻律句として発音します。その範囲内では、単語境界を越えて音が互いに影響します。

したがって、leave itの/v/はleaveだけに閉じ込められず、後ろのitへ向かう運動の一部になります。この連続性が、英語の「単語がくっついて聞こえる」感覚を生みます。

しゅみすけ(大山俊輔)

リンキングを特別な変身ルールとして暗記するより、語末子音の出口に次の母音が待っている、と考えてみてください。子音でいったん止まってから母音を言い直すのではなく、その子音の動作を次の母音まで運ぶと、自然につながります。

再音節化とリンキングは同じもの?

日常的な発音指導では、turn offやpick it upのような現象を「リンキング」「リエゾン」と呼びます。一方、再音節化は、そのつながりを子音の音節所属が変わることとして説明する音韻論上の分析です。

したがって、両者は重なりますが、完全な同義語ではありません。

  • リンキング:隣り合う音が切れずにつながって発音される現象の広い呼び名
  • 再音節化:その現象を音節構造の組み直しとして捉える分析

リンキングには、子音+母音だけでなく、linking r、母音間に現れる/j/や/w/のような別の現象も含まれます。すべてを再音節化だけで説明する必要はありません。

語末子音は本当に「次へ移動」するのか

教科書的には、語末子音が次の音節のオンセットへ移る、と図示すると分かりやすくなります。しかし実際の音声では、子音が荷物のように完全に引っ越し、前の語との関係を失うとは限りません。

英語の研究では、語末子音が母音前で語頭子音と同じ性質を完全に獲得するかについて、音の種類・アクセント・方言による違いが報告されています。再音節化が限定的だとする研究や、部分的な再音節化、あるいは単に発音動作が重なっていると考える立場もあります。

そのため、本記事で使う「移る」は、自然なつながりを理解するためのモデルです。より正確には、語末子音が前の語との関係を保ちながら、次の母音の始まりとしての性質も帯びる場合があります。

前回の両音節性とはどう違う?

再音節化と両音節性(ambisyllabicity)は近い概念です。

  • 両音節性:一つの子音が前後二つの音節へ同時に関わる
  • 再音節化:もともとの音節所属が、周囲の音によって組み直される

happyやcityでは、一語の中の中央子音が左右両方へ関わります。turn offやleave itでは、単語境界を越えた子音と母音の関係が問題になります。ただし実音声では、この二つが重なるような分析もあり、境界は必ずしも明確ではありません。

/t/はつながるだけでなく、別の音へ変わることもある

get it、put it on、shut upなどでは、語末の/t/が後続母音へつながります。アメリカ英語では、アクセント環境によって/t/が舌先を軽く弾くフラップ[ɾ]になったり、声門閉鎖を伴ったりすることもあります。

つまり、連続発話では「どの音節へつながるか」と「どの音として実現するか」が同時に変化します。/t/の異音は、英語の/t/は何種類ある?帯気音・フラップ・声門閉鎖音で詳しく扱っています。

日本語話者には、なぜ単語が消えたように聞こえるのか

日本語では、かなと拍の境界が比較的対応しやすく、単語を「一音ずつ」追いやすい傾向があります。その感覚でpick|it|upを三つに切って待つと、実際の音声にその休止がないため、知っている単語でも見失います。

さらに、語末子音を日本語のように母音付きで処理すると、pickを「ピック」、leaveを「リーヴ」のように一度完成させてしまいます。そこからitを新しく始めるため、自然な英語より境界が強くなります。

英語では、語末子音を「前の単語の終点」だけでなく、次の母音へ渡る接続点として聞くことが重要です。

再音節化が起きにくい場面もある

音が常に同じ強さでつながるわけではありません。次のような条件では、語境界が保たれやすくなります。

  • 話者が意図的にゆっくり、明瞭に話す
  • 二語の間に意味上の区切りや強調がある
  • 息継ぎや言い直しによる休止が入る
  • 後ろの語を対比・訂正のため強く発音する

たとえばturn OFF, not onのようにoffを対比させれば、境界や声門の立ち上がりが強くなることがあります。再音節化は機械的な綴り変換ではなく、韻律と話し方に左右される現象なのです。

音節構造から理解し、練習はbe-rize.comへ

オンセット・核・コーダという基本構造は、中間親の英語の音節とは?syllableの数え方・構造と日本語のモーラとの違いで整理できます。

実際にリンキングを聞き取り、発音へ落とし込みたい場合は、姉妹サイトbe-rize.comの英語のリエゾンは暗記しなくてもいい?音が自然につながる仕組みへ進むと、今回の「なぜ」を練習へつなげられます。

まとめ:英語は単語境界より、音の流れを優先する

再音節化とは、turn off・pick it up・leave itのような連続発話で、語末子音が次の母音の始まりのように働くことを、音節の組み直しとして説明する考え方です。

ただし、子音が常に完全移動するとは限りません。部分的な所属変化、前後二音節への関与、発音動作の連続など、複数の捉え方があります。

共通しているのは、文字の空白が発音の停止を意味しないことです。英語の音節は単語カードごとに完結せず、意味とリズムのまとまりの中で組み直されます。この視点を持つと、「ネイティブが単語を省略している」のではなく、知っている音が別の境界でまとまっていたことが見えてきます。

参考資料

この記事を書いた人
しゅみすけ(大山俊輔)

b わたしの英会話および英語コーチングGRIT/be:RIZE代表。米国MBA取得、外資系企業4社での勤務経験を持ち、これまで多くの大人の英語学習を支援。日本語と英語の処理構造の違いに着目した「英語OS」の考え方をもとに、独学で伸び悩む人の学び直しをサポートしています。

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