
They made him happy. を「彼らは/した/彼を/幸せに」と単語ごとに追うと、英語は少し不思議に見えます。日本語なら「彼を幸せにした」のように、助詞や語尾を使って「彼」と「幸せ」の関係を示します。一方、英語は him の直後に happy を置き、対象のすぐ後ろに、その対象がどうなるかを重ねることで関係を作ります。
この骨格が第5文型SVOCです。ただし、この記事の目的は文型記号や動詞一覧を覚えることではありません。なぜ英語には「目的語+補語」という並びがあり、なぜ They made happy him. ではなく They made him happy. なのか。英語という言語が、出来事をどの順番で組み立てているかを日本語と比較しながら考えます。
- 英語が目的語Oの直後に補語Cを置く理由
- SVOCが「対象→結果・状態」を一つの出来事として描く仕組み
- 結果・呼び名・評価・知覚に共通するOとCの関係
- SVOOとSVOCが似て見えても、内部構造が異なる理由
- 日本語の「を・に・と・く」と英語の語順の違い
Contents
SVOCは「対象」と「その対象の姿」を隣り合わせる骨格
SVOCでは、Sが働きかけの出発点、Vが働きかけ、Oがその対象、Cが対象について成立する説明です。
| 文 | O(対象) | C(対象の説明) | 関係 |
|---|---|---|---|
| They made him happy. | him | happy | 彼が幸せな状態になる |
| They painted the wall blue. | the wall | blue | 壁が青い状態になる |
| We call him Ken. | him | Ken | 彼の呼び名がKenである |
| I found the book useful. | the book | useful | 本を役立つものと評価した |
教科書でよく使う「O=C」は、単なる見分け方ではありません。him = happy、the wall = blue のように、CがOへ情報を返していることを表します。Oが動作の対象で終わらず、直後のCによって「どんな状態か」「何と呼ぶか」「どう評価するか」まで輪郭を与えられるのです。
目的語と補語そのものの定義や、SVC・SVOとの見分け方は、英語の目的語と補語とは?OとCの違いで整理しています。本記事では、そのOとCがなぜ隣り合うのかに焦点を絞ります。
英語はまず対象を示し、そのあとに対象の到達点を置く
They made … と聞いた段階では、「彼らが何かに働きかけた」ことしか分かりません。続く him で対象が定まり、最後の happy でその対象の到達点が分かります。情報は働きかける人→働きかけ→対象→対象の姿という順に展開します。
この順番は、聞き手が英文を前から処理するうえで合理的です。先に「誰について説明するのか」を置き、そのすぐ後ろへ説明を接続すれば、Cがどの名詞に結び付くのかが明確になります。英語は格語尾が少なく、単語の位置が文中の役割を強く示す言語です。そのため、説明される対象と説明内容を隣接させることに大きな意味があります。
英語の語順が大きな責任を負うようになった歴史的な背景は、英語はなぜ語順が重要?格変化を失った歴史とSVOの成立でも解説しています。SVOCも、位置によって関係を見せる英語らしさの一例です。

しゅみすけ(大山俊輔)
日本語は「を・に・と・く」で関係を編み込む
日本語にも、対象とその状態を表す発想はあります。しかし、英語と同じ方法では表しません。
| 英語 | 日本語 | 日本語側の目印 |
|---|---|---|
| made him happy | 彼を幸せにした | 対象「を」+状態「に」 |
| painted the wall blue | 壁を青く塗った | 対象「を」+形容詞の連用形「く」 |
| call him Ken | 彼をケンと呼ぶ | 対象「を」+呼称「と」 |
| found the book useful | その本が役立つと分かった | 小さな文のように捉え直す |
日本語は助詞や活用によって語同士の関係を細かく表示できます。「幸せに」「青く」「ケンと」の形を見れば、後ろの語が対象にどう関わるかが分かります。語順をある程度動かしても、助詞が役割を支えます。
英語には日本語の「に・と・く」に一対一で対応する目印がありません。その代わり、Vの後ろにOを置き、その直後にCを置くという配置が関係を伝えます。日本語が語尾へ関係を織り込むのに対し、英語は空間的な並びによって関係を見せる、と考えられます。
「結果・呼び名・評価」は別物に見えて同じ方向を持つ
SVOCを取る動詞は、学校文法ではmake型、call型、find型、知覚動詞などに分類されます。しかし、英語の世界観から見ると、共通しているのは対象だけで話を終えず、その対象についてもう一つの像を提示することです。
結果を作る:対象が別の状態へ移る
They made him happy. や They painted the wall blue. では、Cは働きかけの結果です。出来事の開始時点では必ずしも him はhappyではなく、wallはblueではありません。Vを通じてOがCの状態へ到達します。SVOCは変化の前後を長く説明せず、一つの骨格に圧縮します。
呼び名を与える:対象にラベルを重ねる
We call him Ken. では物理的な変化はありません。それでも、Oの上にCという認識上のラベルを重ねる構造は同じです。彼という対象を先に共有し、その対象を会話の中でどう呼ぶかを後ろに置きます。
評価・認識を示す:話し手が対象をどう捉えたか
I found the book useful. の useful は、本に起きた変化ではなく話し手の評価です。ここでも the book が評価対象、useful が評価内容です。英語は「私はその本を見いだした」と「その本は役立つ」を、OとCを隣接させて一つの認識として表します。
つまりCは、Oに起きた客観的な結果だけを表すのではありません。呼称や主観的評価まで含め、文の中でOについて成立させたい第二の情報です。
SVOOとSVOCは「後ろに2要素」でも中身が違う
She gave me a book. と They made him happy. は、どちらもVの後ろに二つの要素が続きます。しかし構造は同じではありません。
| 型 | 例 | 後ろの関係 | 等号 |
|---|---|---|---|
| SVOO | She gave me a book. | 受け手+渡される物 | me ≠ a book |
| SVOC | They made him happy. | 対象+対象の結果 | him = happy |
SVOOでは二つとも動詞が要求する参加者・物です。SVOCでは、Oだけが働きかけの対象で、CはOへ折り返して説明を加えます。SVOOの「受け手→物」という情報順序については、英語はなぜ目的語を2つ置ける?をご覧ください。
この違いは、単語の品詞だけでは決まりません。They made him a cake. なら「彼のためにケーキを作った」でSVOO(him ≠ a cake)。They made him a leader. なら「彼をリーダーにした」でSVOC(him = a leader)です。同じ動詞、似た並びでも、後ろの二語の関係によって骨格が変わります。
Cには形容詞・名詞だけでなく「動き」も置ける
対象について伝えたい第二の情報は、性質や呼び名だけとは限りません。
- I saw him cross the street.:彼が道路を渡る一連の動きを見た
- I saw him crossing the street.:彼が道路を渡っている途中を見た
- She kept me waiting.:私が待っている状態を続けさせた
- I want you to stay.:あなたが残ることを望む
学校文法では原形不定詞、現在分詞、to不定詞と別々に習いますが、土台には「Oについて、どんな動き・状態が成立するかをCで示す」という一貫性があります。形が変わるのは、動作を丸ごと見るのか、進行中として見るのか、これから実現することとして見るのかが異なるためです。
自動詞・他動詞の違いを目的語へ動きが届く仕組みと捉えるなら、SVOCはその先です。動きがOに届いたあと、Oがどんな状態・行為に結び付くかまで文の骨格へ組み込みます。
なぜCをOより先に置かないのか
仮に They made happy him. とすると、happy が誰を説明するのか確定する前に説明内容が現れます。また英語では、形容詞が名詞の前に置かれると名詞句内部の修飾と解釈されやすく、文の骨格が曖昧になります。
英語は基本的に、中心となる要素を先に提示し、その後ろへ長い情報を足す傾向があります。SVOCでも、まずOという説明対象を確保し、次にCを置くことで聞き手は「ここからはOの中身だ」と処理できます。これは、新しい情報や重い説明が後ろへ向かいやすい英語の流れとも調和します。
しゅみすけ(大山俊輔)
まとめ:SVOCは対象にもう一枚の像を重ねる
英語が目的語の後ろに補語を置くのは、対象とその対象について成立する結果・状態・呼び名・評価を隣り合わせ、語順によって関係を明示するためです。
- Oは働きかけや認識の対象、CはOについて成立する第二の情報
- 英語は「対象→対象の姿」の順に情報を前から展開する
- 日本語は「を・に・と・く」などの助詞・語尾で同じ関係を示す
- SVOOは二つの目的語、SVOCはOにCが情報を返す構造
- 結果・呼称・評価・知覚は「Oについて何が成立するか」という点でつながる
SVOCを「第5文型の公式」として覚えるだけでは、make、call、find、seeが別々の用法に見えます。しかし「対象を置き、その直後に対象のもう一つの像を置く」と考えれば、同じ英語の情報設計として理解できます。
実際の見分け方、よく使う動詞、原形不定詞・分詞・to不定詞を含む例文は、姉妹サイトbe:RIZEの第5文型SVOCとは?O=Cの見分け方・動詞・例文で実践的に整理しています。b-cafe.netで「なぜこの骨格があるのか」をつかみ、be:RIZEで使い方を確認すると、理解と運用をつなげやすくなります。
Cが形容詞・名詞からさらに動詞へ広がり、Oを主語とする小さな出来事を作る仕組みは、英語はなぜ目的語の後ろに動詞を置ける?で続けて解説しています。








