
英語では、動詞を自動詞と他動詞に分けます。She smiled.はsmileだけで文が完結しますが、She opened the door.ではopenの後ろにthe doorという目的語が置かれます。
学校英語では「自動詞は目的語を取らず、他動詞は目的語を取る」と習います。もちろん正しい説明ですが、それだけでは、なぜ動詞によって後ろの形が変わるのか、なぜarrive Tokyoやdiscuss about the problemが不自然なのかまでは見えにくいでしょう。
自動詞と他動詞の違いは、動詞が表す出来事を、主語の中で完結させるか、別の対象へ届かせるかという違いです。英語は、その「動きの届き先」を語順と目的語によって明示します。
この記事では、英語がなぜ自動詞・他動詞を区別するのかを、日本語の「が・を」や「開く・開ける」と比較しながら考えます。
Contents
- 1 結論:自動詞は主語で完結し、他動詞は目的語まで出来事を広げる
- 2 英語では動詞が、後ろに必要な席の数を決める
- 3 日本語は「が・を」が動きの関係を見せる
- 4 日本語は「開く・開ける」、英語は同じopenで視点を変えられる
- 5 自動詞の後ろへ名詞を置くには、前置詞が橋になる
- 6 他動詞の後ろには、前置詞なしで目的語が置かれる
- 7 同じ動詞でも、自動詞と他動詞で意味が広がる
- 8 目的語を省略できても、他動詞としての性質が消えるとは限らない
- 9 自動詞・他動詞は受動態を作れるかにも関係する
- 10 自動詞・他動詞は、英語が出来事をどう切り取るかを決める
- 11 まとめ:自動詞・他動詞は、動きの「届き方」を文にする仕組み
結論:自動詞は主語で完結し、他動詞は目的語まで出来事を広げる
| 種類 | 基本構造 | 例 | 出来事の見え方 |
|---|---|---|---|
| 自動詞 | 主語+動詞 | The baby smiled. | 赤ちゃんの動きとして完結 |
| 他動詞 | 主語+動詞+目的語 | She opened the door. | 彼女の働きかけがドアへ届く |
The baby smiled.では、誰か・何かを「ほほ笑む」わけではありません。出来事はbabyの側で完結しています。一方、She opened the door.では、openという変化を引き起こす働きがthe doorへ届きます。
目的語は、単に動詞の後ろへ足す名詞ではありません。動詞が表す働きの対象、つまり出来事の中へ組み込まれた参加者です。
しゅみすけ(大山俊輔)
英語では動詞が、後ろに必要な席の数を決める
英語の動詞は、それぞれ後ろにどのような要素を必要とするかという型を持っています。
- She laughed.:laughは主語だけで完結できる
- She likes music.:likeは「何を好きか」を必要とする
- She gave me a book.:giveは受け手と物を置ける
- She made me happy.:makeは対象と、その結果の状態を置ける
この「動詞がどの席を開けるか」という性質が、英語の文型につながります。自動詞を中心とするSV、他動詞を中心とするSVO、その先にSVOOやSVOCがあります。
英語は助詞の代わりに語順の役割が大きいため、動詞の直後に名詞を置くかどうかが意味を左右します。She runs.ではrunという出来事だけを述べますが、She runs a company.ではcompanyを運営するという他動詞の意味になります。
日本語は「が・を」が動きの関係を見せる
日本語では、主語や出来事の主体に「が」、働きかけられる対象に「を」を付けることで関係を示せます。
- 赤ちゃんが笑った
- 彼女がドアを開けた
- 私が音楽を聴く
語順を「音楽を私は聴く」のように動かしても、助詞が役割を保ちます。一方、英語ではI listen to music.の語順と前置詞が関係を示します。動詞の後ろに名詞を直接置くのか、前置詞を介してつなぐのかが重要です。
| 言語 | 関係を示す主な手段 | 例 |
|---|---|---|
| 英語 | 動詞の型・語順・前置詞 | She opened the door. |
| 日本語 | 助詞と動詞の形 | 彼女がドアを開けた |
日本語にも自動詞・他動詞の区別はあります。しかし、日本語話者は助詞と文脈を頼りに関係を捉えるため、英語で「名詞を直接目的語にできるか」を意識しにくいことがあります。

日本語は「開く・開ける」、英語は同じopenで視点を変えられる
日本語では、自動詞と他動詞が別の形になる組み合わせが多くあります。
| 自動詞 | 他動詞 |
|---|---|
| ドアが開く | ドアを開ける |
| 電気がつく | 電気をつける |
| 会議が始まる | 会議を始める |
| 本が落ちる | 本を落とす |
英語では、同じ動詞が自動詞にも他動詞にも使われることがあります。
- The door opened.:ドアが開いた
- She opened the door.:彼女がドアを開けた
- The meeting started.:会議が始まった
- She started the meeting.:彼女が会議を始めた
- The glass broke.:グラスが割れた
- He broke the glass.:彼がグラスを割った
同じ出来事でも、変化したものだけを主語として見せれば自動詞文になり、変化を引き起こした人を主語にして対象を後ろへ置けば他動詞文になります。英語は語順を変えることで、原因を出すか隠すか、どこから出来事を見るかを選べるのです。
自動詞の後ろへ名詞を置くには、前置詞が橋になる
自動詞は目的語を直接取りません。しかし、場所・相手・対象などを追加したい場合には、前置詞句を使えます。
- She arrived at the station.
- He listened to music.
- We talked about the plan.
- She smiled at me.
arriveの出来事は主語だけで成立します。stationはarriveの直接の対象ではなく、到着した場所です。その関係をatが示します。同様に、listenは「耳を傾ける」という主語側の動きであり、音楽との方向関係をtoで結びます。
前置詞は、自動詞を他動詞へ変える印ではありません。動詞だけでは表していない関係を、別の橋として追加します。英語の前置詞が必要になる理由は、英語はなぜ前置詞を使う?日本語の助詞との違いでも解説しています。
他動詞の後ろには、前置詞なしで目的語が置かれる
他動詞は、動詞自体が対象との関係を含んでいます。
- We discussed the problem.
- She entered the room.
- He approached me.
- I answered the question.
日本語訳では「問題について話し合う」「部屋に入る」「私に近づく」「質問に答える」と助詞が現れます。そのため、英語でもdiscuss about・enter into・approach to・answer toとしたくなります。
しかし、英語のdiscuss・enter・approach・answerは、基本的な用法では対象との関係を動詞の中に含む他動詞です。名詞を直接目的語として置けます。
| 不自然になりやすい形 | 基本形 |
|---|---|
| discuss the problem | |
| enter the room | |
| approach me | |
| answer the question |
なお、enter into an agreementやanswer to a managerのように、別の意味・構文では前置詞を伴うことがあります。重要なのは単語の日本語訳ではなく、その用法で動詞がどの型を取っているかを見ることです。
同じ動詞でも、自動詞と他動詞で意味が広がる
多くの英語動詞は、自動詞か他動詞のどちらか一方に固定されていません。
| 動詞 | 自動詞 | 他動詞 |
|---|---|---|
| run | She runs every morning. 彼女は毎朝走る | She runs a company. 彼女は会社を経営する |
| change | Things changed. 状況が変わった | We changed the plan. 私たちは計画を変えた |
| move | The car moved. 車が動いた | He moved the car. 彼が車を動かした |
| stop | The rain stopped. 雨がやんだ | She stopped the car. 彼女が車を止めた |
辞書に「自動詞」「他動詞」と書かれているのは、単語へ永久に一枚のラベルを貼るためではありません。その用法で、出来事がどの参加者を必要とするかを示す情報です。
しゅみすけ(大山俊輔)
目的語を省略できても、他動詞としての性質が消えるとは限らない
会話では、何を指しているか明らかなとき、他動詞の目的語が省略されることがあります。
- Have you eaten?:もう食べた?
- I’m reading.:本などを読んでいる
- She already knows.:彼女はすでにそのことを知っている
表面上は目的語がありませんが、eat・read・knowが持つ対象との関係は文脈の中に残っています。文法分類は、目の前に名詞があるかだけでなく、動詞が意味上どのような参加者を想定するかも関係します。
反対に、sleep・arrive・happenのような典型的自動詞へ、文脈だけを理由に目的語を直接加えることはできません。必要なら前置詞や別の動詞を使います。
自動詞・他動詞は受動態を作れるかにも関係する
受動態は、他動詞の目的語を主語として前へ出す仕組みです。
- She opened the door.
- The door was opened by her.
一方、自動詞には直接目的語がないため、通常はそのまま受動態にできません。
- He arrived.
He was arrived.
受動態が成立するかを考えると、「動きが対象へ届く」という他動詞の性質がより見えやすくなります。具体的な作り方はbe:RIZEの英語の受動態とは?be動詞+過去分詞の作り方で確認できます。
自動詞・他動詞は、英語が出来事をどう切り取るかを決める
The door opened.とShe opened the door.は、現実には同じ場面を指しているかもしれません。しかし、前者はドアの変化だけを見せ、後者は変化を起こした人物まで描きます。
この選択には、情報の焦点や責任の見せ方も関係します。
- The vase broke.:花瓶が割れたという結果へ焦点
- I broke the vase.:自分が原因だと明示
- The situation changed.:状況の変化を描写
- The decision changed the situation.:変化を起こした原因を明示
自動詞文は原因を必ず隠す表現ではなく、出来事を変化した対象の側から眺めます。他動詞文は、働きかける側と影響を受ける側を同じ文の中に配置します。
まとめ:自動詞・他動詞は、動きの「届き方」を文にする仕組み
- 自動詞は、動作・変化が主語の側で完結する
- 他動詞は、動詞の働きが目的語へ届く
- 英語では動詞の型と語順が、誰が何へ働きかけるかを示す
- 日本語では「が・を」などの助詞と、自動詞・他動詞の語形が関係を示す
- 自動詞へ場所や相手を加えるとき、前置詞が関係の橋になる
- 他動詞は対象との関係を含むため、目的語を直接置ける
- open・change・moveなど、一つの動詞が両方の型で使われることも多い
- 自動詞と他動詞の選択は、同じ出来事をどの視点から見せるかを変える
自動詞・他動詞は、試験のための分類表ではありません。英語が出来事の参加者をどこまで文へ入れ、動きをどこへ届かせるのかを決める設計です。
目的語と補語の違いをさらに知りたい方は、b-cafeの英語の目的語と補語とは?OとCの違い、文型として実践的に整理したい方はbe:RIZEの英語の5文型とは?SV・SVC・SVO・SVOO・SVOCもご覧ください。
英語の動詞全体の大きな分岐は、英語はなぜbe動詞と一般動詞を分ける?で解説しています。
give me a bookのように目的語を二つ並べる理由は、英語はなぜ目的語を2つ置ける?SVOOで「受け手→物」と並べる理由で、受け手と物の情報順序・日本語の「に・を」と比較して解説しています。
動きが目的語へ届いたあと、その対象がどのような結果・状態になるかまで骨格へ組み込む仕組みは、英語はなぜ目的語の後ろに補語を置く?SVOCの理由で解説しています。








