英語のlinking R・intrusive Rとは?far awayでRが戻りlaw and orderでRが増える理由

far awayのlinking Rとlaw and orderのintrusive Rを比較するイラスト

イギリス英語では、farを単独で言うと最後のrが聞こえないことがあります。ところがfar awayになると、突然rが現れます。さらにlaw and orderやidea ofでは、綴りにrがないのにrのような音が入ることさえあります。

前者がlinking R(つなぎのR)、後者がintrusive R(挿入のR)です。なぜ、普段は発音しないrが戻り、ときには存在しないrまで増えるのでしょうか。

まずrhoticとnon-rhoticの違いを知ろう

linking Rとintrusive Rを理解するには、英語のアクセントをrhotic(R音性)non-rhotic(非R音性)に分けて考える必要があります。

  • rhoticアクセント:母音の後ろや語末にあるrも発音する。一般米語、カナダ英語、アイルランド英語、スコットランド英語などに多い
  • non-rhoticアクセント:rは基本的に母音の直前で発音し、語末や子音前では発音しない。イングランドの多く、オーストラリア、ニュージーランドなどに多い

したがって、farを普段からr付きで発音する一般米語では、far awayのrが「戻った」とは分析しません。最初から発音されているrが、そのまま次の母音へ続いているだけです。

linking Rとintrusive Rが独立した問題になるのは、主にnon-rhoticアクセントです。

linking Rとは、綴りにあるrが母音前で現れること

non-rhoticアクセントでは、語末のrは常に消えるわけではありません。直後に母音音が続くと、rが発音されることがあります。

  • far from:次が子音/f/なので、語末rは通常発音しない
  • far away:次が母音/ə/なので、rを発音してつなぐ
  • her name:次が子音/n/なので、rは通常発音しない
  • her eyes:次が母音/aɪ/なので、rを発音してつなぐ

このrがlinking Rです。綴りにも歴史的な発音にもrがあり、母音前という環境で表面に現れます。

intrusive Rとは、綴りにないrが母音間へ入ること

一方、intrusive Rでは、最初の語にrが書かれていません。それでも、特定の母音で終わる語の直後に別の母音が来ると、間に/r/が現れることがあります。

  • law and order
  • idea of it
  • media event
  • Australia and New Zealand
  • draw a picture

たとえばlaw and orderでは、lawの綴りにもandの綴りにもrはありません。しかしnon-rhoticな話者の一部は、二つの母音の間へ滑らかな/r/を入れます。

「勝手に文字を読み足した」のではなく、話者の音韻体系が母音間の接続音として/r/を選んでいるのです。

Rが現れる三つの条件を比較

far from、far away、idea ofでRが発音される条件を比較する説明図

1.far from:次が子音ならrは眠ったまま

non-rhoticアクセントでは、farの語末rは子音の前や休止前では通常発音されません。far fromでは次の音が/f/なので、rを橋渡しとして使う環境がありません。

2.far away:次が母音なら綴りのrが現れる

farの後ろに母音で始まるawayが来ると、rが二つの母音をつなぎます。これがlinking Rです。rはawayの音節の始まりのようにも働き、前回扱った再音節化とも関係します。

3.idea of:綴りにrがなくても現れる

ideaの語末母音とofの語頭母音が連続する場所へ/r/が入ります。これがintrusive Rです。話者によって、はっきり入る場合、弱く入る場合、入らない場合があります。

しゅみすけ(大山俊輔)

綴りのrだけを目印にすると、intrusive Rは「間違って音を足した」ように見えます。でも話者は文字を読み違えているのではなく、二つの母音を滑らかにつなぐ音の橋を作っています。まずは聞こえたrを、単語の一部ではなく境界の現象として捉えてみてください。

なぜ綴りにないrまで入るのか

non-rhotic英語では、rの有無が母音の性質に溶け込んだ

歴史的には、far、law、ideaの語末母音は同じものではありません。しかしnon-rhotic化が進むと、母音後の/r/が発音されなくなり、rを含んでいた語と含まない語の語末が、音声上よく似た形になる場合が生まれました。

たとえばnon-rhoticアクセントでは、lawとlore、tunaとtunerが、文脈によって同じ、または非常に近い語末音を持つことがあります。それでもlore awayやtuner isで/r/を出すなら、話者は「綴りにrがある語だけ」というより、この種類の母音と次の母音の間にはrを置けるというパターンを獲得できます。

そのパターンがlawやideaのようなrのない語にも広がったものが、intrusive Rだと考えられます。

二つの母音が直接ぶつかるhiatusを避ける

母音と母音が境界を挟んで連続する状態をhiatus(母音接続)と呼びます。英語では、母音をそのまま並べることもできますが、/r/・/j/・/w/などの接続音を挟み、発音運動を滑らかにすることがあります。

ただし「英語は必ず母音の衝突を嫌う」という絶対規則ではありません。話者は休止を置いたり、声門閉鎖音を入れたり、二母音をそのまま発音したりもします。

linking Rとintrusive Rは、今の話者には同じ現象?

歴史と綴りを基準にすれば、二つは明確に分かれます。

  • linking R:歴史的・綴字上のrがある
  • intrusive R:歴史的・綴字上のrがない

しかし現代の発音体系だけを見ると、どちらも「特定の母音と後続母音の間へ/r/が現れる」という同じ分布を持ちます。そのため研究では、両者をまとめて/r/-sandhi/r/-liaisonと呼ぶことがあります。

話者が会話中に綴りを思い浮かべてからrを選んでいるわけではありません。音の環境と韻律によって、同じ接続パターンが自動的に働いていると考えるほうが自然です。

Rはいつでも必ず入るわけではない

linking Rもintrusive Rも可変的です。次の要因で現れやすさが変わります。

  • 速くくだけた会話か、ゆっくりした朗読か
  • 二語が一つの意味・韻律のまとまりを作るか
  • 間に休止や強い境界があるか
  • 後ろの母音に強勢があるか
  • 話者の地域・年代・社会的スタイル
  • intrusive Rを「誤り」と意識して避けるか

Cambridgeの研究では、エリザベス2世の67年間にわたる音声でも/r/-sandhiの使用が調査され、音声環境や言語的条件によって変動することが示されています。王室英語でさえ、一枚岩の固定規則ではないのです。

intrusive Rは間違った英語?

intrusiveという名称には「侵入した」という響きがあり、綴りを重視する人から誤用と見なされてきた歴史があります。しかし、多くのnon-rhoticアクセントでは自然な連続発話の一部です。

イングランドの標準的な話し方でも観察され、ニュース読みや公的発話にも現れます。したがって、言語学的には単純な「発音ミス」とは扱えません。

一方、すべての英国人が使うわけでも、学習者が必ず再現すべき音でもありません。聞き取りでは知っておく価値がありますが、自分の発音モデルが一般米語なら、無理にintrusive Rを追加する必要はありません。

アメリカ英語ではどうなる?

一般米語はrhoticなので、far、her、teacherなどのrを、後ろが子音でも休止でも通常発音します。そのためfar awayのrだけを特別にlinking Rと呼ぶ必要性は低くなります。

また、law and orderやidea ofへ、イギリス英語型のintrusive Rを一般的に入れるわけではありません。母音間はそのままつなぐか、声門の立ち上がりなど別の方法で境界を示します。

RP・General Britishと一般米語の違いは、RP・一般米語とは?Received PronunciationとGeneral Americanの発音比較でも整理しています。

日本語話者が聞くと、なぜ別の単語に感じるのか

日本語話者は綴りと単語境界を基準に英語を探しがちです。そのためidea ofの間に/r/が聞こえると、ideaの語末に未知の子音が付いたように感じます。

しかし、/r/はideaの新しい語尾でも、ofの本来の語頭でもありません。二語を同じ韻律句として結ぶ境界音です。「どちらの単語の音か」と決めるより、二つの母音の間で起きた接続として聞くと理解しやすくなります。

イギリス英語全体の発音・語彙・地域差については、イギリス英語とは?特徴・発音・単語・綴りへつなげています。

まとめ:Rは文字ではなく、音の環境で現れる

linking Rは、far awayのように綴りにあるrが後続母音の前で現れる現象です。intrusive Rは、law and orderやidea ofのように、綴りにない/r/が母音間へ挿入される現象です。

どちらも主にnon-rhoticアクセントで起こり、現代の音韻体系では同じ/r/-sandhiとして捉えられることがあります。ポイントは「イギリス英語はrを発音しない」と丸暗記するのではなく、rは母音の直前で現れやすく、単語境界を越えて働くと理解することです。

英語の発音は、綴りの一文字ずつに固定されていません。前後の音、話す速さ、韻律、アクセント体系によって、眠っていた音が現れ、書かれていない接続音まで生まれます。

参考資料

この記事を書いた人
しゅみすけ(大山俊輔)

b わたしの英会話および英語コーチングGRIT/be:RIZE代表。米国MBA取得、外資系企業4社での勤務経験を持ち、これまで多くの大人の英語学習を支援。日本語と英語の処理構造の違いに着目した「英語OS」の考え方をもとに、独学で伸び悩む人の学び直しをサポートしています。

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