英語の渡り音/j/・/w/とは?see it・go outで綴りにないY・Wが聞こえる理由

see itのYのような渡り音とgo outのWのような渡り音を比較するイラスト

see itを自然につなぐと、seeとitの間に「ヤ行」のような音が聞こえることがあります。go outでは、goとoutの間に「ワ行」のような音が現れます。しかし、どちらの綴りにもyやwはありません。

この小さな橋渡しの音が、渡り音(glide)です。英語の発音指導ではlinking /j/・linking /w/と呼ばれ、母音が二つ並ぶ場所を滑らかにつなぎます。

なお、音声記号の/j/はアルファベットのJの音ではありません。英語のyesの最初、日本語のヤ行に近い音です。

英語の渡り音/j/・/w/とは?

/j/と/w/は、母音に近い作り方をしながら、音節の中では子音のように働く音です。そのため、半母音(semivowel)接近音(approximant)と呼ばれます。

  • /j/:yes・youの最初にあるY系の音
  • /w/:we・waterの最初にあるW系の音

see itやgo outでは、これらを強い子音として意図的に差し込むというより、最初の母音から次の母音へ口を動かす途中に、/j/・/w/に似た短い移行区間が生まれます。

see itでは、なぜYのような音が聞こえる?

seeの最後の/iː/は、舌の前方を高く上げて作る母音です。この位置は、/j/を作る舌の構えと非常に近くなっています。

そこからitの/ɪ/など次の母音へ移ると、舌が高い前方位置から滑り出す瞬間が、短い/j/のように聞こえます。

  • see it
  • he asked
  • we are
  • she is
  • I agree
  • they entered

これらは、前の語が/iː/・/eɪ/・/aɪ/など、前方または高い位置へ向かう母音で終わります。その終点から次の母音へ移る軌道が、Y系の渡り音を作りやすくします。

go outでは、なぜWのような音が聞こえる?

goの最後は、多くの英語アクセントで/oʊ/・/əʊ/のように、唇を丸める方向へ動きます。/w/も、唇を丸め、舌の奥を高くして作る音です。

丸い唇の形を保ったままoutの母音へ移ると、その短い移行が/w/のように聞こえます。

  • go out
  • do it
  • two apples
  • you are
  • blue eyes
  • how old

前の母音が/uː/・/oʊ/・/aʊ/など、唇の丸みや舌の後方性を伴って終わるとき、W系の渡り音が生まれやすくなります。

母音の終わり方が、渡り音を決める

舌が前方にある母音ではY、唇が丸い母音ではWのような渡り音が生まれる説明図

渡り音を単語ごとの例外として暗記する必要はありません。前の母音を言い終えたとき、口がどこにいるかを見ると予測できます。

  • 舌が前・高い位置にいる:/j/の構えに近いため、Y系の橋になりやすい
  • 唇が丸く、舌が後方にいる:/w/の構えに近いため、W系の橋になりやすい

つまり、渡り音は前後の母音から独立した「第三の音」が突然追加されたというより、最初の母音の出口が、次の母音への入口になったものです。

しゅみすけ(大山俊輔)

YやWの音を強く足そうとしないでください。seeの舌の位置、goの唇の丸みを保ったまま、止まらず次の母音へ移ります。その途中の動きが自然な渡り音になるので、橋だけを大きく発音する必要はありません。

「音を挿入する」のか「移動が聞こえる」のか

教材では、母音と母音の間に/j/または/w/を「入れる」と説明されることがあります。練習上は分かりやすい説明ですが、音声学的にはもう少し曖昧です。

seeの/iː/と/j/は、舌の位置がよく似ています。doの/uː/と/w/も、口の構えがよく似ています。そのため、母音末尾の非音節的な部分を/j/・/w/と分析するのか、独立した接続子音が加わったと分析するのかは、表記の細かさによって変わります。

とくにI agreeの/aɪ/やgo outの/oʊ/のような二重母音では、すでに一つ目の母音内部で舌や唇が動いています。その動きが語境界を越えて続くため、「ここからが渡り音」と一本の線を引くことは簡単ではありません。

intrusive Rとの共通点と違い

前回扱ったlinking R・intrusive Rも、二母音の間へ接続音が現れる現象です。

共通点は、どちらも母音が直接並ぶhiatusを処理し、発音を滑らかにすることです。ただし、発生条件には違いがあります。

  • /j/・/w/:前の母音の舌・唇の終点から自然に予測しやすく、多くの英語アクセントで起こる
  • intrusive R:特定の語末母音と結びつき、主にnon-rhoticアクセントで起こる

一般米語でもsee itやgo outに/j/・/w/系の移行は生じ得ますが、イギリス英語型のintrusive Rを同じように使うわけではありません。

すべての母音境界に渡り音が入るわけではない

二つの母音が並べば、必ず明確な/j/・/w/を発音するわけではありません。話者は次のような方法も使います。

  • 二つの母音をそのまま連続させる
  • 語境界に弱い声門閉鎖を置く
  • 強調や対比のため短い休止を入れる
  • 前の母音を短くし、渡りを目立たなくする

たとえばHe asked, not sheのようにaskedを対比すれば、境界を強く立て、/j/系の滑らかな接続が弱まる場合があります。渡り音は綴りから自動変換される義務的ルールではなく、話速・韻律・強調で変わる音声現象です。

「Y」「W」とカタカナで強く発音しすぎない

日本語話者が仕組みを知ると、今度はsee-Y-it、go-W-outのように橋を大きくしすぎることがあります。しかし自然な渡り音は非常に短く、独立した音節を作りません。

YやWを一音追加するというより、次のように考えるほうが自然です。

  1. 前の母音の口の形を正確に作る
  2. 声を止めない
  3. その形から次の母音へ一続きで移る
  4. 途中に生まれる軽い橋は、そのままにする

「入れなければ」と力むより、境界で口をリセットしないことが重要です。

日本語にも「わたり」の動きはある?

日本語でも「愛」「青い」など、母音が続く場所で舌や唇は連続的に動きます。ただし、日本語はモーラの境界を比較的均等に保ちやすく、英語ほど語境界を越えた接続音として意識されない場合があります。

英語は強い音節と弱い音節を一つのリズム群へまとめるため、単語間の空白より発音運動の連続が前面に出ます。日本語の拍感覚で一語ずつ口を初期位置へ戻すと、渡り音が消え、英語が途切れて聞こえやすくなります。

英語の音声変化の中では「連結」にあたる

/j/・/w/の渡り音は、connected speechで起こる連結(linking)の一種です。英語の会話には、このほか同化・脱落・弱化などもあります。

全体像は中間親の英語の音声変化とは?連結・同化・脱落・弱化とconnected speechで整理しています。

子音+母音の境界で語末子音が次の音節へつながる仕組みは、英語の再音節化とは?turn off・pick it upで音がつながる理由で詳しく解説しています。

仕組みを理解したら、実践練習へ

b-cafe.netでは、なぜ綴りにない音が聞こえるのかを、母音・半母音・音節の仕組みから説明しました。実際に聞き取りや発音を練習する場合は、姉妹サイトbe-rize.comの英語のリエゾンは暗記しなくてもいい?音が自然につながる仕組みへ進むと、connected speechの実践へつなげられます。

まとめ:渡り音は、二つの母音を結ぶ移動の軌跡

see itやhe askedでは、前方・高い舌位置から次の母音へ動く途中に/j/、つまりYのような渡り音が聞こえやすくなります。go outやdo itでは、丸い唇や後方の舌位置から動く途中に/w/、つまりWのような渡り音が聞こえやすくなります。

これらは綴りにない音ですが、文字を読み間違えて加えたものではありません。母音の口の形を保ったまま次の母音へ移ると、その軌道が半母音として聞こえます。

英語の音を理解するときは、「何の文字を足したか」だけでなく、舌と唇がどこからどこへ移動したかを見ることが大切です。

参考資料

この記事を書いた人
しゅみすけ(大山俊輔)

b わたしの英会話および英語コーチングGRIT/be:RIZE代表。米国MBA取得、外資系企業4社での勤務経験を持ち、これまで多くの大人の英語学習を支援。日本語と英語の処理構造の違いに着目した「英語OS」の考え方をもとに、独学で伸び悩む人の学び直しをサポートしています。

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