
big gameにはgが二つ、black coffeeにはkが二つ、this songにはsが二つあります。では、英語では同じ子音を「グッ・ゲーム」「ブラック・コーヒー」のように二回発音するのでしょうか。
自然な会話では、口を同じ場所で二度作り直すことは通常ありません。最初の子音の構えをそのまま保ち、一つの子音を少し長くしたように発音します。破裂音なら閉鎖を長めに保って一度だけ解放し、摩擦音・鼻音なら空気の流れを途切れさせずに持続させます。
このような同一子音の連続は、音声学では重子音(geminate)、語や形態素の境界で生まれる場合は接触重子音(contact geminate)などと呼ばれます。英語のリンキングを「全部くっつけて一音を消すこと」だと考えると見落としやすい、音の長さの仕組みです。
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英語で同じ子音が続くとどうなる?
単語の最後と次の単語の最初に同じ子音が並ぶと、二つの調音動作が一つにまとまります。
- big game:/g/+/g/
- black coffee:/k/+/k/
- good day:/d/+/d/
- this song:/s/+/s/
- ten names:/n/+/n/
ただし「二つ目の音を削除して、普通の短い子音一つにする」という説明では不十分です。英語では、多くの場合、単独の子音よりも閉鎖・摩擦・鼻音などの持続時間が長くなるためです。
米国英語の音声学教材では、club badge・midday・pine nutのような同一子音列が、単独子音のおよそ1.5倍程度の長さになる傾向も説明されています。数値は話者・速度・強勢で変わりますが、「二回発音する」のでも「完全に一個へ消す」のでもなく、一つの構えを長く保つという理解が中心です。
なぜ二回発音せず、一つの長い音になる?
発音は文字を一文字ずつ音へ変換する作業ではなく、舌・唇・喉を連続的に動かす運動です。
bigの語末/g/を作るとき、舌の奥は軟口蓋付近へ接触して空気を止めます。続くgameの語頭/g/も、ほぼ同じ場所・同じ方法で作られます。
もし二つを完全に別々に発音するなら、次の動作が必要です。
- bigの/g/で舌を閉じる
- 一度開いて空気を解放する
- gameの/g/のために再び同じ場所を閉じる
- もう一度解放する
これは会話の流れの中では余分な動きです。そこで英語話者は、舌の閉鎖を途中で解かず、少し長めに保ってから一度だけ解放します。
big game → 閉じる・保持する・一度だけ開く
この動きなら二語の境界を時間として残しながら、口を閉じ直す必要がありません。
破裂音・摩擦音・鼻音では動きが違う

「一つの長い音になる」といっても、すべての子音で同じことが起こるわけではありません。音の作り方によって、何を保つかが変わります。
破裂音/p・b・t・d・k・g/:閉鎖を保つ
破裂音は、口のどこかで空気を完全に止め、その閉鎖を解くときに生まれる音です。
- pep pill:/p/+/p/
- good day:/d/+/d/
- night time:/t/+/t/
- black coffee:/k/+/k/
- big game:/g/+/g/
同じ破裂音が並ぶと、閉鎖を一度作り、その状態を通常より長く保った後で一度だけ解放します。間に母音を挿入したり、二度の破裂を明確に聞かせたりする必要はありません。
とくに/p・t・k/のような無声破裂音では、閉鎖が長くなり、最後の解放に息を伴うことがあります。/t/・/k/では、アクセントや位置によって声門の締めも重なる場合があります。
摩擦音/f・v・s・z・ʃ・ʒ/:摩擦を長くする
摩擦音は、狭い隙間へ空気を通して摩擦を作る音です。同じ音が続くと、隙間を作り直さず、その摩擦を少し長く保ちます。
- safe flight:/f/+/f/
- this song:/s/+/s/
- these zones:/z/+/z/
- fresh sheets:/ʃ/+/ʃ/
this songで/s/を二回「ス・ソング」と切るのではなく、thisの/s/を保ったままsongの母音へ進みます。音としては一続きの長い[sː]に近くなります。
鼻音/m・n・ŋ/:鼻への空気を保つ
鼻音では口の中を閉じ、空気を鼻へ通します。同じ鼻音が続けば、閉鎖位置と鼻への気流をそのまま保ちます。
- some money:/m/+/m/
- ten names:/n/+/n/
- young girls:/ŋ/+/g/なので同一音ではないが、舌の奥の動きが近い
some moneyでは両唇を閉じたまま/m/を少し長く鳴らし、moneyの母音へ移ります。途中で唇を一度開けて閉じ直す必要はありません。
Lの音:舌先の接触を保つ
full lengthのように/l/が続く場合、舌先を歯茎付近へ当てたまま、舌の両側から空気を流す時間を長くします。
ただし英語の/l/は、音節内の位置やアクセントによってclear L・dark Lの性質が変わります。前後で舌の奥の構えが完全に同じとは限りません。詳しくは英語のLはなぜ2種類に聞こえる?clear L・dark Lの違いで解説しています。
「一音になる」と「一音が消える」は同じではない
学習教材では「同じ子音が続くと一つになる」と説明されることがあります。練習上は便利ですが、聞き方によっては誤解が生まれます。
たとえばbig gameの/g/を、big aimの/g/とまったく同じ短さで発音すると、語境界や語頭子音の存在を示す時間的な手がかりが弱くなります。
- big game:/g/の閉鎖が長くなりやすい
- big aim:語末/g/が次の母音へつながる
どちらも破裂が一度に聞こえることはありますが、閉鎖の長さや後続音への移り方は同じではありません。
つまり、重子音化は「二個の子音を機械的に一個削除すること」ではなく、二つの子音位置を一回の長い調音動作で実現することです。
しゅみすけ(大山俊輔)
日本語の「っ」と英語の重子音は同じ?
日本語にも「きて(来て)」と「きって(切って)」のように、子音の閉鎖時間が意味を区別する仕組みがあります。「っ」は促音と呼ばれ、後続子音へ入る前の閉鎖・待機時間を一モーラとして数えます。
英語のcontact geminateにも子音を長く保つ点で似た面があります。ただし、役割は同じではありません。
- 日本語:子音の長さが単語の意味を区別することがある
- 英語:単語・形態素の境界に同じ子音が偶然並び、結果として長くなることが多い
英語では、子音の長短だけで多数の単語を区別する仕組みは中心的ではありません。しかし、I doとI’d do、we leaveとwe’ll leaveのように、境界の子音を短くしすぎると文法情報が聞こえにくくなる場合があります。
短縮形でも同じ子音の重なりが起こる
英語では助動詞やbe動詞の短縮形が、次の語頭子音と重なることがあります。
- I’d do it.:I’dの/d/+doの/d/
- we’ll leave:we’llの/l/+leaveの/l/
- they’ve visited:they’veの/v/+visitedの/v/
- I’m meeting her.:I’mの/m/+meetingの/m/
ここで同じ子音を完全に短い一音へ縮めると、短縮形の存在が弱まり、I do it・we leave・they visitedのように別の文法へ聞こえる可能性があります。
自然な発音は、短縮形を一音ずつ誇張することではありません。重なった子音をわずかに長く保ち、文法上の境界を時間に変換します。
違う子音が続く場合との違い
同一子音では口の位置を保てますが、違う子音が続くときは、二つの調音位置の間を移動する必要があります。
- big game:/g/→/g/なので舌の奥を保つ
- big deal:/g/→/d/なので舌の奥から前へ移動する
- black coffee:/k/→/k/なので閉鎖を保つ
- black tea:/k/→/t/なので舌の奥から前へ移動する
違う破裂音が続く場合、最初の音を完全に破裂させず、二つ目の閉鎖へ移ることもあります。この「破裂を解放しない」仕組みは、同一子音の長音化とは別のテーマです。
連接(juncture)では、長さが語境界の手がかりになる
前回のice creamとI screamはなぜ似て聞こえる?英語の連接(juncture)では、会話の語境界が強勢・タイミング・音の出し方・文脈によって示されることを見ました。
同一子音の重なりも、その一例です。書き言葉のスペースは無音として発音されませんが、子音を少し長く保つことで「ここに二つの語・形態素が接している」という情報が残ります。
同じ子音を二回破裂させなくても、境界が完全に消えるわけではありません。境界は空白ではなく、持続時間として音の中に埋め込まれます。
connected speech全体の中ではC-Cリンキング
同じ子音が境界で重なる現象は、子音と子音をつなぐC-C linkingの一種です。
英語の連続発話には、このほかにも次のつながりがあります。
- 子音+母音:turn off・pick it upの再音節化
- 母音+母音:see it・go outの渡り音/j/・/w/
- 同じ子音+同じ子音:閉鎖・摩擦・鼻音などを長く保つ
- 違う子音+違う子音:調音位置を連続的に移動する
全体像は英語の音声変化とは?連結・同化・脱落・弱化とconnected speechで整理しています。
まとめ:同じ子音は「二回」ではなく「長く一回」
big game・black coffee・this songのように、単語境界で同じ子音が並ぶと、英語では口の位置を二度作り直しません。
- 破裂音は閉鎖を長く保ち、一度だけ解放する
- 摩擦音は同じ摩擦を長く続ける
- 鼻音は口の閉鎖と鼻への気流を保つ
- Lは舌先の接触を保ちながら側方へ空気を流す
これは子音を雑に一つ消したものではなく、二つの子音位置を一回の長い調音動作で表したものです。語境界は、停止やスペースではなく、音の持続時間として残ります。
英語の音を文字の個数ではなく、舌・唇・空気がどの状態をどれくらい保つかで見ると、リンキングは暗記する規則ではなく、身体が選ぶ自然な運動として理解できます。
実際の発音練習へ落とし込みたい場合は、姉妹サイトbe-rize.comの英語のリエゾンは暗記しなくてもいい?音が自然につながる仕組みもあわせて参照してください。








