英語教材の音声を選ぶとき、「イギリス英語ならRP」「アメリカ英語なら一般米語」と説明されることがあります。RPは Received Pronunciation、一般米語は General American のことで、どちらも英語学習や辞書、放送で参照されてきた発音モデルです。
ただし、RPはイギリス人全員の発音ではなく、一般米語もアメリカ人全員の発音ではありません。また、どちらかが世界で唯一の正しい発音でもありません。本記事では、二つのモデルの成り立ちと、r・t・母音・リズムの違い、学習者がどちらを選べばよいかを分かりやすく解説します。
しゅみすけ
Contents
RPと一般米語の違いを先に比較
| 項目 | RP | General American |
|---|---|---|
| 正式名称 | Received Pronunciation | General American |
| 主な地域との関係 | イングランドを中心とする英国 | アメリカの広い地域 |
| 語末・子音前のr | 通常は発音しない | 通常は発音する |
| bathの母音 | 長い母音になりやすい | 短い母音になりやすい |
| waterのt | tの性質を保ちやすい | 軽いdのようになりやすい |
| 位置づけ | 英国で参照されてきた発音モデル | 米国で地域色が比較的弱い発音の総称 |
最大の違いとして聞き取りやすいのは、car、hard、workなどの r です。一方、両者には共通点も多く、どちらも実際には話者・年代・場面による幅があります。表の特徴を「絶対の規則」ではなく、代表的な傾向として捉えてください。

RP(Received Pronunciation)とは?
RPは、イギリスで歴史的に高い社会的威信を持ってきたアクセントです。19世紀末から20世紀にかけて、寄宿学校、大学、上流・中上流階級、放送などと結びつきました。BBCが初期の放送で参照したことから、BBC Englishと呼ばれることもあります。
名前の received は「受け取られた」ではなく、当時の社会で広く認められた、受け入れられたという古い意味に近い言葉です。地域を明確に示しにくい発音とされますが、社会的な背景を持つアクセントであり、完全に中立な発音ではありません。
RPはイギリス人の多数派ではない
イギリスには、ロンドン、コックニー、エスチュアリー、ヨークシャー、リヴァプール、ニューカッスル、ウェールズ、スコットランドなど、多様なアクセントがあります。RPは歴史的な影響力が大きい一方、日常的に純粋なRPを話す人は限られています。
現在の放送では地域アクセントも広く聞かれ、RP自体も世代とともに変化しています。昔のニュース映像にある非常に格式ばった発音と、現代の教材で「RP」と呼ばれる発音が完全に同じとは限りません。英国英語全体についてはイギリス英語とは?もご覧ください。
一般米語(General American)とは?
General Americanは、アメリカ英語のうち、特定地域の特徴が強く感じられにくい発音をまとめて指す言葉です。辞書、放送、外国語としての英語教育などで参照されますが、RPのように境界のはっきりした一種類のアクセントではありません。
アメリカにも、南部、ニューヨーク、ニューイングランド、アパラチア、北部都市、西部など、多数の地域アクセントがあります。さらに人種、民族、世代、移住歴、社会集団による違いもあります。General Americanはそれらを消した「無アクセント」ではなく、強い地域性を感じさせにくい特徴の束です。
「アメリカ標準語」と完全には同じでない
一般米語は主に発音を指します。一方、標準アメリカ英語には文法、語彙、綴り、文章上の慣習も含まれます。color、center、apartmentなどは米国式の綴り・語彙ですが、それだけで話者のアクセントがGeneral Americanだとは判断できません。詳しくはアメリカ英語とは?で整理しています。
RPと一般米語の発音は何が違う?
1.rを発音するか
RPは非r音性(non-rhotic)のアクセントです。母音の後ろにあり、その後に母音が続かない r は通常発音しません。car、hard、teacherの語末のrが代表例です。一方、一般米語はr音性(rhotic)で、このrを舌を奥に引くようにして発音します。
| 単語 | RPの傾向 | 一般米語の傾向 |
|---|---|---|
| car | 最後のrを発音しない | 最後のrを発音する |
| hard | rは独立した子音にならない | rの響きが残る |
| teacher | 語末は曖昧母音で終わる | rを伴う母音で終わる |
| far away | 次が母音なのでrが現れることがある | 通常どおりrを発音する |
RPでも、far awayのように次の語が母音で始まると、語をつなぐrが聞こえることがあります。綴りだけを見て「イギリス英語はrを一切読まない」と覚えるのは正確ではありません。
2.bath・dance・askの母音
RPではbath、dance、ask、classなどの母音が、fatherに近い長い音になる傾向があります。一般米語ではcatに近い短い母音になるのが一般的です。これは英米差として目立ちますが、イギリス国内でも北部などでは短い母音を使う地域があります。
3.water・betterのt
一般米語では、water、better、cityのように、強勢のある母音と弱い母音の間にあるtが、非常に短い「軽いd」に近い音になることがあります。これは flap(フラップ)と呼ばれます。RPではtの性質を比較的保ちやすいものの、現代の英国の実際の会話にはtの声門化など別の変化もあります。
4.lot・hot・notの母音
典型的なRPでは、lotの母音は唇を丸めた短い音です。一般米語では、より口を開いたfatherに近い音になることがあります。そのためhotやnotが、英国教材と米国教材でかなり違って聞こえることがあります。
5.イントネーションとリズム
RPと一般米語はいずれも、内容語を強く、機能語を弱く読む英語らしい強勢リズムを持ちます。ただし、文末の上げ下げ、母音の長さ、子音の処理などが組み合わさり、全体の印象が変わります。「英国は常に上品」「米国は常に平板」といった印象論だけでは説明できません。
| 特徴 | 聞き分けの手掛かり | 注意点 |
|---|---|---|
| r | car、work、teacher | 英国にもrを発音する地域がある |
| BATH母音 | bath、dance、class | イングランド内にも地域差がある |
| tのフラップ | water、better、city | すべてのtで起こるわけではない |
| LOT母音 | hot、not、lot | 個人差や地域差も大きい |
| 抑揚 | 文全体の上げ下げ | 性別・年代・場面でも変化する |
RPと一般米語は標準英語なのか
厳密には、RPとGeneral Americanは発音モデルであり、Standard Englishそのものではありません。標準英語は主として、学校、行政、出版などで共有される文法・語彙・綴りの規範です。この区別は標準英語とは?で詳しく解説しています。
地域アクセントを持つ人が標準英語の文法を使うこともできます。反対に、RP風の発音で地域方言の文法を使うことも理論上は可能です。「何を言うか」と「どう発音するか」は関連しますが、同じ軸ではありません。
どちらが正しい・きれいな英語?
言語学的には、RPと一般米語のどちらかが優れているわけではありません。両者が教材や放送で広く使われたのは、歴史、教育、政治、メディア、出版市場などの影響です。「きれい」「知的」「親しみやすい」といった印象も、音そのものだけでなく社会的な経験から作られます。
また、RPや一般米語から外れるアクセントが間違いということでもありません。世界の英語話者の多くは、母語や地域の影響を持つ英語を使います。詳しくは英語の方言と訛りの違いも参考になります。
日本人学習者はどちらを選べばよい?
結論は、目的と接触量で選べば十分です。日本の学校教育、米国企業、アメリカ映画に触れる機会が多ければ一般米語が自然です。イギリス留学、英国文化、BBCや英国ドラマへの関心が強ければRP系の教材が学びやすいでしょう。
| 目的・環境 | 最初のモデル | その後にすること |
|---|---|---|
| 日本の学校教材を継続 | 一般米語が合わせやすい | 英国発音にも耳を慣らす |
| 英国留学・英国勤務 | 現代的なRP系モデル | 現地の地域アクセントを聞く |
| 米国留学・米国勤務 | 一般米語 | 米国内の多様な発音を聞く |
| 国際的な仕事 | 使い慣れた方を一つ | 非母語話者の英語も聞く |
| 映画・ドラマを楽しむ | 好きな作品に近い方 | 人物ごとの差を観察する |
話すモデルは一つ、聞くモデルは複数
発音練習では、一つのモデルを選んだほうが口の動きや音のルールを整理しやすくなります。一方、リスニングでは複数のモデルに触れるほうが実践的です。話すときは一般米語でも、RPやオーストラリア英語、インド英語を聞き取れる状態を目指せます。
しゅみすけ
聞き分け・発音練習のコツ
- 同じ単語を英米音声で聞く:car、bath、water、hotなどから始めます。
- 一つの違いだけに集中する:最初はrだけ、次はtだけと分けます。
- 短文を録音する:単語単体より、前後の音とのつながりを確認できます。
- 速度を落として真似る:音だけでなく強勢と区切りもコピーします。
- 人物を固定する:同じ話者を継続して聞くと特徴をつかみやすくなります。
辞書のUK・US音声を交互に聞くのも有効です。ただし、辞書音声は明瞭に作られた見本であり、日常会話そのものではありません。慣れたらインタビュー、ニュース、映画などへ広げましょう。英米差全体はイギリス英語とアメリカ英語の違いで確認できます。
よくある質問
Q1. RPはQueen’s Englishと同じですか?
近い意味で使われることがありますが、完全な同義語ではありません。王室メンバーの発音にも世代差・個人差があり、RP自体も変化しています。
Q2. General Americanはニュース英語ですか?
放送で地域色の弱い発音が使われることはありますが、ニュース話者全員が一つの同じアクセントを使うわけではありません。
Q3. イギリス英語ではrを発音しませんか?
RPなど非r音性のアクセントでは語末・子音前のrを通常発音しません。しかし、スコットランドやイングランド南西部など、rを発音する英国アクセントもあります。
Q4. 英米発音を混ぜると不自然ですか?
多少混ざっても通常は問題なく通じます。試験や専門的な発音訓練では一貫性が役立ちますが、実用英会話では明瞭さが優先です。
Q5. 日本人訛りを完全に消すべきですか?
必要ありません。意味を区別する音、単語の強勢、文のリズムを整え、聞き返されやすい部分を改善するほうが現実的です。
まとめ
RPはイギリスで歴史的に参照されてきたReceived Pronunciation、一般米語はアメリカで地域色が比較的弱い発音をまとめたGeneral Americanです。代表的な違いは、語末のr、bathの母音、waterのt、lotの母音などに現れます。
どちらも英語全体を代表する唯一の正解ではなく、学習や辞書で役立つ発音モデルです。自分が使いやすい一方を話す軸にしながら、聞く英語は世界へ広げる。それが、多様な話者と実際に会話するための学び方です。
参考資料
- Cambridge English, “Pronunciation models and false choices”
- Cambridge Dictionary, “Pronunciation”
- British Council, “English Language Day”
- Cambridge University Press, “The History of Received Pronunciation”
- Library of Congress, American English Dialect Recordings









