
英単語を一つずつなら聞き取れるのに、文になると知っている単語まで消えたように感じることがあります。その理由の一つが、単語を続けて話すときに起こる音声変化です。
実際の会話では、単語は辞書音声のまま独立して並びません。語末と次の語頭がつながり、隣の音に近づき、弱い音が短くなり、ときには一部が聞こえにくくなります。このように、複数の語が連続した発話として発音される状態をconnected speech(連続発話)と呼びます。
この記事では、英語のconnected speechを連結・同化・脱落・弱化の四つに分け、「なぜ音が変わるのか」「どこまで覚える必要があるのか」を、日本語との比較も交えて解説します。
この記事でわかること
- connected speechとは何か
- 連結・同化・脱落・弱化の違い
- 英語の単語が会話で別の音に聞こえる理由
- 日本語にも音声変化があるのか
- 音声変化を発音・リスニングへ生かす方法
Contents
connected speechとは?
connected speechは、単語を一語ずつ切り離さず、句や文として連続して話したときの音声です。日本語では「連続発話」「連結音声」などと説明されます。
辞書で単語を調べると、通常は単独で発音した形が示されます。しかし、会話では前後に別の音があり、強勢・リズム・話速・文脈の影響も受けます。発音器官は毎回完全に停止して次の音を作るのではなく、舌・唇・顎を連続的に動かします。
そのため、会話の音は次のように変化します。
| 現象 | 何が起こる? | 例 |
|---|---|---|
| 連結 | 語境界を越えて音がつながる | pick‿it‿up |
| 同化 | 隣接する音に近づく | did you → /dɪdʒə/ など |
| 脱落 | 一部の音が発音されにくくなる | next dayの/t/など |
| 弱化 | 母音や機能語が短く弱くなる | to /tuː/ → /tə/ |
これらは常に一つずつ独立して起きるわけではありません。一つの短い句の中で、弱化と連結、同化と脱落が重なることもあります。
連結とは?語と語の境界を越えて音がつながる
連結(linking/catenation)は、前の語の末尾と次の語の先頭が滑らかにつながる現象です。
- pick it up:pick‿it‿up
- turn it on:turn‿it‿on
- an apple:an‿apple
- take a look:take‿a‿look
特に、前の語が子音で終わり、次の語が母音で始まる場合、日本語話者には子音が次の語へ移ったように聞こえることがあります。しかし、綴りや単語の境界が変わったわけではありません。発音器官の動きが語境界で止まらず、次の母音へ続いているだけです。
英語の種類によっては、far awayのような環境でlinking rが現れたり、母音が連続する場所で/j/や/w/に近い渡り音が聞こえたりすることがあります。ただし、これらはアクセントや分析によって扱いが異なるため、すべての英語話者が同じように発音するわけではありません。
同化とは?隣の音に近づいて発音しやすくなる
同化(assimilation)は、ある音が前後の音の影響を受け、調音位置や調音方法などが近づく現象です。
調音位置が近づく例
ten boysの/n/は、直後の/b/に備えて唇を閉じるため、速い発話では[m]に近づくことがあります。舌先で作る/n/から、唇で作る/m/へ調音位置が移る例です。
/t/・/d/と/y/がまとまる例
- did you → /dɪdʒə/ に近い発音
- don’t you → /doʊntʃə/ に近い発音
- would you → /wʊdʒə/ に近い発音
/d/と/j/が接すると/dʒ/に、/t/と/j/が接すると/tʃ/に近づくことがあります。これは融合(coalescent assimilation/yod coalescence)として説明されます。
ただし、丁寧な発話では元の音が比較的保たれることもあり、地域・世代・話速・話者によって程度が変わります。
脱落とは?音が完全または部分的に聞こえなくなる
脱落(elision)は、連続した音を発音しやすくするため、一部の音が完全または部分的に実現されなくなる現象です。
- next day:子音の連続の中で/t/が聞こえにくくなることがある
- first class:/t/が弱まる・聞こえにくくなることがある
- old man:/d/が聞こえにくくなることがある
- family・different:弱い母音や音節が短縮される発音がある
脱落は「文字を読まない」という規則ではありません。どの音がどこまで実現されるかは連続的で、完全に消える場合もあれば、舌の動きだけが残り、音響的には聞き取りにくい場合もあります。
特に/t/や/d/が複数の子音に挟まれると、すべてを明瞭に開放する負担が大きいため、弱化・脱落しやすくなります。
弱化とは?強勢のない音が短く曖昧になる
弱化(reduction)は、アクセントのない母音や機能語が、単独形より短く弱くなる現象です。
- to /tuː/ → /tə/
- can /kæn/ → /kən/
- and /ænd/ → /ən/、/n/など
- for /fɔːr/ → /fər/など
弱化では母音が中央寄りのschwa /ə/へ近づくことが多く、英語の強弱リズムを支えます。詳しくは英語の弱形と強形とは?とschwa(シュワー)/ə/とは?で整理しています。
会話の中で4種類の音声変化はどう聞こえる?

音声変化を理解するときは、カタカナの「ピキラップ」「ディジャ」のような固定表記へ置き換えすぎないことが大切です。実際の音は、話者や前後の文脈によって連続的に変わります。
カタカナは最初の気づきには便利ですが、最終的には実際の音声を聞き、どの音がつながり、どこが弱くなったのかを確認しましょう。
しゅみすけ(大山俊輔)
なぜ英語では音声変化が起こるの?
発音器官は連続して動くから
舌や唇は、一音ごとに完全な中立位置へ戻りません。次の音を予測して早めに動き始め、前の音の動きも次へ残ります。この重なりによって連結や同化が生まれます。
重要な情報と周辺情報に強弱を付けるから
英語では、内容語や新情報が強勢を受け、機能語や既知情報が弱くなりやすくなります。弱い部分の母音が短縮されることで、文の情報構造が音として見えるようになります。
限られた時間で滑らかに話すから
会話では、すべての音を辞書音声と同じ明瞭さで発音すると、発音器官の移動が大きくなります。伝達に必要な区別を残しながら動きを効率化する結果、脱落や同化が起こります。
前の記事英語のリズムとは?で扱った強勢拍リズムも、弱い部分で音声変化が起こりやすい背景です。
日本語にも連結・同化・脱落はある?
あります。音声変化は英語だけの特別な現象ではありません。
たとえば日本語の撥音「ん」は、後ろの音によって実際の調音位置が変わります。「さんぽ」では後続する/p/に備えて唇を閉じ、[m]に近い音になることがあります。「しんぶん」でも/b/の前で同様の同化が起こります。
また、「している」が会話で「してる」に近づくなど、音節の一部が短縮・脱落する現象もあります。日本語話者はこれらを毎回規則として意識せず、自然な会話の中で使っています。
| 比較 | 英語 | 日本語 |
|---|---|---|
| 同化 | ten boysの/n/が[m]に近づく | さんぽの「ん」が[m]に近づく |
| 短縮・脱落 | next dayの/t/が聞こえにくくなる | している→してる |
| 弱化 | to /tə/など | 英語ほど体系的な母音弱化を中心にしない |
違いは、英語だけが「崩れる」ことではなく、どの環境で何を残し、何を変えやすいかです。
リンキングとリエゾンは同じ意味?
日本の英語学習では「リエゾン」が、音の連結や音声変化全般を表す言葉として広く使われます。一方、英語音声学・英語教育では、linking、assimilation、elision、reductionなどを分けて説明することが一般的です。
フランス語学のliaisonには、特定の環境で通常発音しない語末子音が現れるという、より限定された意味があります。そのため英語について話すときは、「リエゾン=すべての音声変化」と固定せず、具体的に何が起きているかを見る方が正確です。
実用的な例文と練習方法は、tipsの英語のリンキングの意味とは?一覧や例文で解説をご覧ください。
すべての音声変化を再現する必要はある?
いいえ。まず必要なのは、聞いたときに元の単語と結び付けられることです。
音声変化は、話速・丁寧さ・地域アクセント・個人差によって変わります。特定の変化を「ネイティブなら必ずこう言う」と覚えると、別の話者の英語へ対応できなくなることがあります。また、無理に脱落させると、必要な音まで失って伝わりにくくなる可能性があります。
- 最初は丁寧な形でもよい
- 連結は自然な口の動きとして取り入れる
- 弱形は強い語との対比から練習する
- 同化・脱落はまず聞き取れることを優先する
- 一つのアクセントだけを絶対的な正解にしない
connected speechを身につける5ステップ
- 短い音声と台本を用意する
一文5~10語程度から始めます。 - 内容語と強勢を確認する
まずリズムの骨格を見つけます。 - 単語単独の音と比較する
辞書音声と文中音声の差を確認します。 - 変化を一種類だけ探す
連結、弱化、同化、脱落のどれかに絞ります。 - 音声へ重ねて録音する
速さではなく、口の移動と強弱を比較します。
音声変化を知っても聞き取れない場合、音と意味を処理する練習が不足している可能性があります。be:RIZEの英語の音声変化を覚えても聞き取れない理由、英語のリエゾンは暗記しなくてもいい?、英語リスニングの正しい練習順へ接続しています。
まとめ:会話の音は単語の足し算ではない
- connected speechは、複数の語を連続して話したときの音声
- 主な音声変化には連結・同化・脱落・弱化がある
- 発音器官の連続運動、強勢とリズム、話速などが変化を生む
- 日本語にも同化や短縮・脱落はある
- すべてを暗記・再現するより、音声の幅を認識できることが先
英語の音・発音全体へ戻る場合は、親記事の英語の音・発音とは?をご覧ください。音声学と音韻論の視点は音声学と音韻論の違いとは?で整理しています。








