
英語を学ぶと「なぜ英語は主語を毎回言うのか」「なぜ日本語のカタカナ発音では通じにくいのか」と疑問が生まれます。その答えには、英語だけでなく、自分の母語である日本語の特徴を知ることが必要です。
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金田一春彦とは
金田一春彦は1913年生まれ、2004年没。日本語の音韻、方言アクセント、語彙、国語辞典、邦楽などを研究した言語学者です。各地のアクセント調査と『日本語』などの一般向け著作を通じ、日本語の特徴を比較の視点から説明しました。

日本語と英語の音の違い
日本語は「子音+母音」を中心とする拍のリズムが強く、英語は強く読む音節と弱い音節の差が大きい言語です。そのためstrikeを「ストライク」のように母音を補って聞き取り・発音しやすくします。
また、日本語のアクセントは主に音の高低、英語の強勢は強さ・長さ・母音の質などで示されます。英語発音では個々の音だけでなく、強弱の波を学ぶ必要があります。
しゅみすけ(大山俊輔)
主語を省ける日本語、省きにくい英語
日本語は文脈からわかる主語や目的語を省きやすい一方、英語は文の骨組みとして主語を明示することが多い言語です。「行きます」を英語にするときは、誰が行くのかを先に決めなければなりません。
日本語の豊かなオノマトペと敬語
日本語は「しとしと」「どきどき」のようなオノマトペが日常語に多く、人間関係を動詞や語尾に織り込む敬語体系も発達しています。英語に一語で対応しない場合は、状況を分解して説明します。
比較するときの注意
「日本語は曖昧、英語は論理的」といった民族性の断定は危険です。どの言語でも明確にも曖昧にも表現できます。違うのは、日常的に何を文法や語彙で示しやすいかです。
しゅみすけ(大山俊輔)
英語や言語を研究してきた人物を、世界の言語学と日本の英学・翻訳・教育という二つの流れからたどる場合は、中間ガイド「言語を研究した人々|英語・言語学の歴史を変えた研究者・英学者」をご覧ください。
まとめ
金田一春彦の日本語研究は、母語を客観的に見る窓を開きました。音の単位、アクセント、主語省略、語彙の得意分野を英語と比較すれば、間違いの原因を能力不足ではなく言語間の違いとして理解できます。
金田一春彦の生涯と研究の広がり
金田一春彦は、アイヌ語研究で知られる金田一京助の長男として生まれました。日本語研究を家学として受け継ぎながら、自らは特に音韻と方言アクセントの研究を深めます。各地を歩いて発音を聞き、地域ごとの高低アクセントを分類しました。
研究対象は話しことばだけでなく、国語辞典、古典芸能の平曲、語彙、文法、日本語教育へ広がります。専門研究を一般読者へわかりやすく伝えたことも大きな功績です。
アクセント調査が示した日本語の多様性
東京式、京阪式、無アクセントとされる地域など、日本語のアクセント体系は全国一様ではありません。同じ「橋」と「箸」でも地域によって高低の置き方が異なり、別の仕組みで区別します。標準語の発音だけを日本語そのものと考えると、この豊かさを見落とします。
日本語の「拍」と英語の「音節」
日本語では「がっこう」を「が・っ・こ・う」のような拍で捉えます。英語では強勢を中心とした音節がリズムを作り、弱い母音が短く曖昧になります。computerをすべて同じ強さで「コンピューター」と言うより、強い音節を中心に弱強の差を作るほうが英語らしいリズムになります。
練習例
- I WANT to GO.:内容語を強くする
- Could you SEND it to ME?:重要情報に強勢を置く
- photograph / photography:派生で強勢位置が変わる
日本語は本当に曖昧なのか
日本語は主語を省きやすい一方、敬語や終助詞で関係性・態度を細かく示します。英語は主語を明示しやすい一方、代名詞や定冠詞で共有情報を扱います。明示する情報の場所が違うのであり、一方が本質的に論理的、他方が曖昧とは言えません。
翻訳できないときは情報を分解する
「懐かしい」に完全一致する英単語を探す代わりに、This reminds me of my childhood.、I have warm memories of this place.と状況を説明できます。「もったいない」ならIt is too good to waste.と基本語で表せます。
日本語の一語に英語の一語を当てるのではなく、何が起き、誰がどう感じるかへ分解することが、言語比較を実用へ変える方法です。
しゅみすけ式:主語を補って基本文型へ
- 「ちょっと難しいです」→ I find it a little difficult.
- 「間に合わなかった」→ I couldn’t get there in time.
- 「気まずくなった」→ We didn’t know what to say.
- 「よろしくお願いします」→目的に応じて Thank you for your help. / I look forward to working with you.
日本語の定型句を直訳せず、場面の主語・動作・目的へ戻すのがポイントです。
金田一の特色論を読む際の注意
言語の特徴を民族性へ短絡させると、「日本人は非論理的」「英語話者は直接的」といった固定観念になります。実際の話し方は個人、地域、世代、場面で変わります。比較は優劣を決めるためでなく、自分が無意識に使う仕組みを発見するために行います。
英語学習への実践
- 自分の誤りを日本語との違いから分類する
- 発音では子音だけでなくリズムを録音比較する
- 日本語で省いた主語を英語化の前に補う
- 一語で訳せなければ二つの基本文に分ける
- 英語と日本語の得意な表現を楽しむ
語彙の特徴を英語と比べる
日本語は擬音語・擬態語、敬語、季節語、人間関係を示す呼称などが豊富です。英語は移動の仕方を動詞へ入れるstroll、dash、crawlなどを多く持ち、句動詞で位置関係や動作の完了を表します。
どちらの言語も必要なら詳しく説明できますが、日常的に一語で言いやすい領域が違います。語彙の豊かさを単語数の優劣ではなく、文化と使用習慣の違いとして見ます。
よくある質問
英語を話すとき、日本語で考えてはいけませんか?
初心者が母語を使うのは自然です。ただし長い日本語文を丸ごと訳さず、意味を短い単位へ分けて英語の語順へ置きます。慣れた表現は英語のまとまりで取り出します。
カタカナ語は英語学習の邪魔ですか?
意味を予測する足場になりますが、発音や意味範囲が違う場合があります。claimは日本語の「クレーム」と同じではなく、英語では主張する意味が中心です。既知語ほど辞書で確認します。
日本語と英語、どちらが難しいですか?
学習者の母語、年齢、目的、接触量で難しさは変わります。言語全体に絶対的な難易度をつけるより、音・文字・語順など具体的な課題へ分けます。
比較言語の視点を持つと、誤りを恥ではなく仮説の手がかりとして見られます。冠詞を落としたら、日本語では名詞に同じ標識を要求しないことを確認し、英語が「共有済みか、数えられるか」をどう示すかへ戻ります。母語との差を説明できれば、修正方法も具体的になります。
この比較は、英語だけでなく日本語の表現力も高めます。普段無意識に省いている情報や、敬語・語尾に込めている態度へ気づけば、翻訳時に何を補い、何を別の方法で伝えるべきか判断しやすくなります。









