
リテリングとは、読んだり聞いたりした英文の内容を理解し、原文を見ずに自分の英語で話し直す練習です。英語では retelling といい、「もう一度物語る・伝え直す」という意味があります。
原文を一字一句覚える暗唱ではありません。登場人物、出来事、理由、結論などの要点を選び、知っている単語や文法へ置き換えて相手に伝えます。そのため、インプットした英語を「分かった」で終わらせず、「自分で取り出して話す」段階へ進める練習になります。
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リテリングとは?簡単な例で理解しよう
たとえば、次の短い英文を読んだとします。
Emma missed her train because she left home late. She called her manager and took the next train. She arrived at the office thirty minutes late.
これを丸暗記して繰り返すのではなく、内容を次のように話し直します。
Emma was late for work. She missed her train, so she called her manager. Then she took another train and arrived thirty minutes late.
使う単語や文の順番が原文と違っていても、重要な内容が相手に伝わればリテリングとして成立します。「同じ英語を再生する」のではなく、「同じ意味を別の英語で再構成する」のが本質です。
しゅみすけ(大山俊輔)
リテリング・要約・暗唱・シャドーイングの違い
| 練習法 | 行うこと | 主な目的 |
|---|---|---|
| リテリング | 内容を自分の英語で話し直す | 理解・検索・言い換え・発話 |
| 要約 | 重要部分を短くまとめる | 情報の選択と整理 |
| 暗唱 | 原文を覚えて再現する | 表現や文型の定着 |
| シャドーイング | 音声を少し遅れて追う | 音声知覚・リズム・発音 |
| オーバーラッピング | 原文を見て音声と同時に読む | 文字と音の対応 |
要約とリテリングは重なりますが、要約は短く整理する「結果」を重視し、リテリングは内容を口頭で再構成する「活動」を指すことが多いです。細部を含めて物語の流れを再現する場合も、要点だけを短く伝える場合もあります。
シャドーイングやオーバーラッピングは、お手本の音や表現を再現する練習です。リテリングではお手本から離れ、自分で内容・単語・文法を選びます。したがって、音声練習の後に置くと「まねる」から「使う」へ自然に移行できます。
英語学習で期待できる5つの効果
1.本当に理解できたか確認できる
英文を目で追っているだけでは、分かったつもりになることがあります。原文を閉じて話そうとすると、誰が何をしたのか、理由と結果がどうつながるのかが曖昧な部分に気づきます。リテリングは理解度を可視化する確認テストになります。
2.知っている英語を取り出す練習になる
会話では、必要な単語や文型を記憶から素早く取り出す必要があります。リテリングには話す内容がすでにあるため、「何を話すか」と「どう英語にするか」を同時にゼロから考える自由会話より負担を抑えつつ、検索練習ができます。
3.言い換える力が育つ
原文の難しい表現を覚えていなくても、簡単な英語に直せます。たとえば purchase が出なければ buy、was unable to attend が難しければ couldn’t come と言えます。この「別ルートを作る力」は、会話中に単語が出てこないときにも役立ちます。
4.語彙やチャンクを文脈の中で使える
新しい表現を単独で覚えるだけでなく、物語や説明の中で使い直します。既習の英語チャンクを別の文脈へ組み込むことで、固定された例文から応用可能な知識へ変えやすくなります。
5.スピーキングへの不安を下げやすい
何もない状態から話すのではなく、キーワードや絵を手がかりにできます。日本人大学生を対象とした研究では、リテリング前に短い計画時間を設けることが、英語で話す不安の軽減に関係したと報告されています。ただし、効果は教材・習熟度・実施方法で変わるため、リテリングだけですべての会話力が伸びるとは限りません。
初心者向け|リテリングの正しいやり方5ステップ

ステップ1.内容を理解する
英文を読み、分からない語句と文法を確認します。「誰が・いつ・どこで・何をした・なぜ・どうなった」を日本語でも説明できる状態にします。内容理解が不十分なまま話し始めると、英語以前に情報のつながりを失います。
ステップ2.要点を3つ選ぶ
最初は情報を三つに絞ります。物語なら「最初の状況・起きた問題・結末」、説明文なら「テーマ・重要な理由・結論」が使えます。すべてを再現しようとすると暗唱になりやすいため、細部は捨てて構いません。
ステップ3.キーワードだけメモする
英文の完成文ではなく、各要点につき2〜4語だけ書きます。先ほどの例なら late / missed train / called manager / next train / 30 minutes で十分です。絵や矢印を使っても構いません。
ステップ4.原文を閉じて自分の英語で話す
メモだけを見て30秒〜1分で話します。正確な表現が出なくても沈黙せず、簡単な語へ変えます。接続には First, Then, Because, So, Finally を使うと流れを作れます。
ステップ5.録音して一つだけ改善する
内容が伝わるか、重要情報が抜けていないか、同じ語を繰り返しすぎていないかを確認します。原文と違うこと自体は問題ではありません。修正点を一つ決め、もう一度話します。
しゅみすけ式「3点リテリング」なら初心者でもできる
話す内容が多いと止まってしまう人は、次の三つだけで構成します。
- 一言でテーマ:This story is about Emma.
- 重要な出来事:She missed her train because she left home late.
- 結果:She took the next train and arrived late.
難しい英文を再現しようとせず、主語+動詞の短い文で意味の骨格を作ります。余裕が出たら、理由、感想、細部を一つずつ足します。
しゅみすけ(大山俊輔)
1日10分の練習メニュー
- 2分:30秒〜1分の英文を読む・聞く
- 2分:意味を確認し、要点を三つ選ぶ
- 1分:キーワードをメモする
- 1分:1回目を録音する
- 2分:原文と録音を比較する
- 1分:一つ修正して再録音する
- 1分:自分の意見を一文追加する
最後に I think… や In my case… を一文加えると、他人の内容を再現する活動から、自分の考えを話す活動へつながります。同じ素材を翌日もう一度行い、メモを減らすのも有効です。
教材選びの4つの条件
- 読めば8〜9割理解できる
- 30秒〜1分程度で、話の流れが明確
- 登場人物や因果関係を三つの要点に整理できる
- 日常会話や自分の関心に近い表現が含まれる
初心者には、短い日常エピソード、旅行の出来事、簡単なニュース、写真付きの物語が向いています。抽象的な論説や固有名詞の多いニュースは、情報整理だけで負担が大きくなります。
よくある失敗と対処法
原文を丸暗記してしまう
完成文をメモせず、キーワードと矢印だけにします。一度日本語で内容を説明してから、簡単な英語に戻す方法もあります。
一語出ないだけで止まる
上位語や説明へ逃げます。pharmacist が出なければ a person who works at a drugstore、exhausted が出なければ very tired で構いません。
細部を全部言おうとして長くなる
要点を三つに固定し、30秒で終える制限をつけます。短く伝えられた後に情報を足します。
文法ミスが気になって話せない
1回目は意味が通るか、2回目は動詞の時制、3回目は接続詞というように評価項目を分けます。正確さと流暢さを同時に完璧にしようとしないことが大切です。
よくある質問
リテリングは日本語を挟んでもよいですか?
初心者が内容を整理する段階では構いません。ただし、最終的には英語のキーワードから直接話す練習へ移ります。
原文と違う単語を使ってもよいですか?
問題ありません。重要な意味が保たれていれば、むしろ自分の語彙で言い換えられた証拠です。
どれくらい話せばよいですか?
最初は3文・30秒で十分です。慣れたら5〜7文、1分程度へ伸ばし、最後に自分の意見や経験を加えます。
まとめ|リテリングは「分かる英語」を「使える英語」へ変える
リテリングは、読んだり聞いたりした内容を、原文を見ず自分の英語で話し直す練習です。内容理解、要点選択、記憶からの検索、言い換え、発話を一つの活動でつなげられます。
オーバーラッピングで文字と音を合わせ、シャドーイングで音声を追い、最後にリテリングで内容を自分の言葉へ変える。この順番なら、まねる練習から実際の発話へ橋を架けられます。
参考文献
- 佐々木啓成『リテリングを活用した英語指導―理解した内容を自分の言葉で発信する』大修館書店.
- 甲斐晶子「物語文読解における再話の効果―学習者の熟達度と産出情報に焦点を当てて」全国英語教育学会紀要, 2008.
- 福島玲枝「リテリング活動を対話的に―やり取りを促す授業設計」英語教育研究, 2024.
- 遠藤香菜子「学生の習熟度に応じたリテリング活動の効果の検証」全国高等専門学校英語教育学会研究論集, 2024.
リテリングが発話の自動化へどうつながるかは、流暢さとは何か――速さ・区切り・修復で位置づけています。









