
リピーティングとは、英語音声を一文または短い意味のまとまりまで聞き、音声を止めてから、聞いた内容を声に出して再現する練習法です。音声と同時に読むオーバーラッピング、少し遅れて追いかけるシャドーイングと違い、リピーティングには「音が消えた後も内容を保持して再生する」段階があります。英語の音を聞き分ける力だけでなく、語順の保持、意味理解、発音、聞き取れなかった箇所の発見に役立ちます。
ただし、長い英文を最初から丸ごと復唱する練習ではありません。初心者は2〜5秒程度の短いチャンクから始め、意味と英文を確認し、正確に再現できる長さを少しずつ伸ばします。この記事では、リピーティングの効果、正しい手順、他の音声練習との違い、できないときの調整法を解説します。
Contents
リピーティングとは?
リピーティングでは、①音声を聞く、②音声を一時停止する、③聞いた英語を保持する、④声に出して再現する、⑤原文と照合する、という処理を行います。単なる後追い発音ではなく、聞いた情報がいったん手元から消えるため、自分で保持して取り出す必要があります。
たとえば音声が Could you give me a moment? なら、最後まで聞いて停止し、その文を再現します。言えなかったときは「音を識別できなかった」「語の境界が分からなかった」「意味は分かったが語順を保持できなかった」「発音運動が追いつかなかった」など、原因を分けて考えます。
日本人大学生を対象に4か月間行われた研究では、リピーティング群とシャドーイング群の双方でリスニング力の向上が見られ、リピーティング群では音声を語へ区切るセグメンテーション力にも有意な向上が報告されました。ただし、一つの研究結果をすべての学習者や教材へそのまま一般化せず、自分の課題に合う方法を選ぶことが必要です。
リピーティング・オーバーラッピング・シャドーイングの違い

| 練習法 | 発話のタイミング | 台本 | 中心となる負荷 |
|---|---|---|---|
| リピーティング | 音声を止めた後 | 最初は見ない | 知覚・保持・再現 |
| オーバーラッピング | 音声と同時 | 見る | 文字・音・発音の照合 |
| シャドーイング | 少し遅れて追う | 原則見ない | 流れる音声の知覚と追跡 |
オーバーラッピングとの違い
オーバーラッピングは台本を見ながら音声とほぼ同時に発話します。文字を手掛かりにできるため、発音、リズム、音の連結や弱化をモデル音声と照合しやすい方法です。内容を保持してから再現する負荷はリピーティングより小さくなります。詳しくはオーバーラッピングのやり方をご覧ください。
シャドーイングとの違い
シャドーイングは音声を止めず、聞こえた音を少し遅れて追いかけます。次々に入る音を処理しながら直前の音を発話するオンライン性の高い練習です。一方、リピーティングは停止後に考える時間があり、保持できなかった語順や意味を確認しやすくなります。詳しくはシャドーイングの正しいやり方で整理しています。
しゅみすけ(大山俊輔)
リピーティングで期待できる5つの効果
1.聞き取れない箇所が具体的になる
全文を「なんとなく分かった」で終えず、再現できなかった音や語を特定できます。冠詞、前置詞、語尾、弱く発音される機能語など、自分が落としやすい部分が見えます。
2.英語の語順を短時間保持する
日本語へ訳してから組み直すのではなく、聞いた順番で英語を保持します。短いチャンク単位にすると、単語を一語ずつ抱えるより負荷を調整できます。
3.音と意味を結びつける
音だけを機械的にまねるのではなく、何を言っているか理解して再現すると、音声形式と意味を接続できます。意味を理解できない教材では正確に復唱できても応用が難しいため、練習前に内容を確認します。
4.発音とリズムを照合できる
自分の音声を録音し、モデルと比べると、強勢、リズム、音のつながり、母音や子音のずれが分かります。ただし、リピーティングだけで発音のすべてが自然になるとは限りません。必要に応じて発音の個別練習も加えます。
5.記憶から取り出す練習になる
音声が消えた後に再現するため、短期的な保持と検索が必要です。これは維持リハーサルと精緻化リハーサルのうち、音列を保つ反復を含みます。さらに意味や自分の場面と結べば、単なる音の反復から一歩進められます。
リピーティングの正しいやり方7ステップ
- 短く、内容が理解できる教材を選ぶ:初心者は一息で言える会話文を使います。
- まず全体を聞く:何の場面で、誰が何を伝えているか確認します。
- 台本で意味と音を確認する:未知語、音の連結、弱くなる語を調べます。
- 2〜5秒で止める:最初は文法単位より意味のまとまりを優先します。
- 台本を見ずに再現する:完全でなくても、覚えている範囲を声にします。
- 原文と照合して一か所直す:一度に全部直さず、抜けた語や音を特定します。
- 最後に文全体を使う:短い区間ができたら、少し長くして再現します。
目安は「少し努力すれば再現できる長さ」です。毎回ほぼ何も言えないなら区間が長すぎます。簡単すぎるなら一語または一チャンクだけ延ばします。
初心者向け10分メニュー
- 1分:場面と意味を確認する
- 2分:台本を見ながら音声を聞く
- 3分:短い区間でリピーティングする
- 2分:録音して原音と一か所比較する
- 1分:文の一部を自分の内容へ置き換える
- 1分:翌日に再現する文を二つ選ぶ
長時間続けるより、短い素材を高い注意で扱う方が原因を確認しやすくなります。同じ日に完成させるのではなく、翌日以降も答えを見る前に再現しましょう。
リピーティングができない原因と対策
聞いた直後なのに忘れる
区間を短くし、意味のまとまりで止めます。未知語が多い素材は避け、先に意味を理解します。ワーキングメモリへ一度に入れる量を減らすことが先決です。
単語は分かるのに文として再現できない
語順を一語ずつ覚えず、Could you / give me / a moment? のようにチャンクへ分けます。台本を見て構造を確認し、再び音だけで試します。
自分の発音がモデルと大きく違う
リピーティングの前にオーバーラッピングを入れます。台本を見ながら同時に発話し、強勢とリズムを合わせてから、音声を止める練習へ移ります。
意味を考える余裕がない
音を再現する回と意味を言い換える回を分けます。最初から音・意味・発音を同時に完璧にしようとすると負荷が高くなります。
しゅみすけ(大山俊輔)
しゅみすけ式:復唱した英文を会話へつなげる
教材をそのまま再現できたら、主語、時制、目的語の一つだけを変えます。Could you give me a moment? なら Could you give me a minute?、I need a moment.、Give me a moment, please. のように広げます。次に、自分が実際に使う場面を決め、質問への応答として発話します。
リピーティングはモデル音声を再現する練習であり、自由会話そのものではありません。再現→置換→応答という順番を作ると、音声練習で終わらず、知識を会話で取り出す練習へ接続できます。
よくある質問
何回繰り返せばよいですか?
固定回数はありません。同じ誤りを考えずに十回繰り返すより、一回ごとに原文と照合し、修正点を一つ決めます。その場でできたら、翌日にも再現できるか確認します。
台本を見てもよいですか?
準備と答え合わせでは見て構いません。ただし、再現するときは一度閉じます。最初から最後まで台本を読み続けると、リピーティングではなく音読やオーバーラッピングに近くなります。
長い文ほど効果がありますか?
長ければ良いわけではありません。保持できない長さでは音や語を推測してしまいます。正確に再現できる短さから始め、少しずつ伸ばします。
ディクテーションとの違いは何ですか?
ディクテーションは聞いた英語を文字で書き取り、音と綴り、語の抜けを確認する練習です。リピーティングは声で再現するため、保持に加えて発音運動も必要になります。聞こえなかった原因を細かく調べるならディクテーション、聞いた語順を保って口から再現するならリピーティングが中心です。両方を同時に行う必要はなく、復唱できない箇所だけ書き取って確認する使い方もできます。
自分の声は録音した方がよいですか?
毎回録音する必要はありませんが、一つの素材につき最初と最後を録音すると変化を確認できます。聞きながら話している最中は、自分の発音や語の抜けへ十分に注意できないことがあります。録音を原音と比べ、強勢、語尾、抜けた機能語など修正点を一つに絞ってください。声質をモデルと同じにするのではなく、意味が伝わる明瞭さとリズムを目標にします。
再生速度は遅くしてもよいですか?
通常速度でほとんど知覚できない場合は、一時的に速度を落として構いません。ただし、遅い音声だけで完成させず、音と意味を確認した後は段階的に元の速度へ戻します。速度を落とす前に、区間を短くする、台本を確認する、未知語を減らす方法も試しましょう。
:聞いた英語を止めて、保持して、再現する
リピーティングは、英語音声を聞き、止め、台本を見ずに再現する練習です。流れる音を追うシャドーイング、台本を見て同時に話すオーバーラッピングとは負荷が異なります。短いチャンク、意味理解、原文との照合を基本にし、できない原因に応じて区間や手順を調整してください。
最後は教材の一文を自分の内容へ変え、実際の応答で使います。「正しくまねる」と「自分の言葉として取り出す」を橋渡しすることで、リピーティングを会話力へつなげられます。
文字から意味のまとまりを見抜く練習は、スラッシュリーディングとは何かも参考にしてください。









