海外旅行の行き先を決めるとき、「英語が通じやすい国はどこ?」「英語が通じにくい国へ行っても大丈夫?」と気になる人は多いでしょう。
結論から言うと、英語が通じやすい傾向のある国は確かにあります。特に英語を母語とする国、英語が社会の共通語として定着している国、北・西ヨーロッパの一部では、旅行者が英語で用事を済ませやすい傾向があります。
ただし、「国別英語力ランキングが高い=旅行中どこでも英語が通じる」「低い=英語がまったく使えない」とは言えません。同じ国でも、大都市と地方、空港と市場、若い世代と高齢者では状況が変わるからです。
先に要点
・英語圏では、原則として英語で旅行しやすい
・非英語圏では、オランダ、北欧、中欧の一部などが英語力調査で上位
・シンガポールやフィリピンなど、英語が制度・教育に根づく国も使いやすい
・ランキング下位でも、国際空港や有名観光地では英語が通じることがある
・「通じにくい」は人の能力ではなく、英語を使う必要と機会が少ない環境を表す
Contents
英語が通じやすい国は大きく3種類ある
英語が通じやすい国を考えるときは、次の3種類に分けると理解しやすくなります。
1.英語を母語とする人が多い国
アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、アイルランドなどでは、英語が日常生活の中心です。空港やホテルだけでなく、交通、飲食店、病院、行政など幅広い場面で英語を使えます。
旅行者にとっては最も「英語だけで動きやすい」国々ですが、地域によって発音や語彙に違いがあります。また、多言語・多文化社会であり、住民全員が英語を母語とするわけではありません。詳しくは英語を母語とする人が多い国をご覧ください。
2.英語を公用語・第二言語として広く使う国
シンガポール、フィリピン、インド、南アフリカ、ケニアなどでは、英語が教育、行政、ビジネス、異なる母語を持つ人同士の共通語として使われます。英語が家庭の第一言語でなくても、社会の重要な場面で高い運用力を持つ人が多い国です。
ただし、公用語であることと、全国民が日常的に英語を話すことは同じではありません。大都市、教育機関、企業では通じやすくても、地方では地域言語が中心の場合があります。背景は英語を公用語とする国と英語を第二言語として使う国で解説しています。
3.非英語圏でも英語教育・国際交流が盛んな国
オランダ、ドイツ、オーストリア、ポルトガル、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーなどでは、英語は公用語でなくても、教育、仕事、旅行、映像コンテンツなどを通じて広く学ばれています。
自国語を大切にしながら、外国人との共通語として英語を使う社会です。ホテルや観光業だけでなく、一般の店や交通機関でも英語で助けてもらえる可能性があります。
しゅみすけ(大山俊輔)
非英語圏の英語力ランキング|2025年の上位国
非英語圏の比較でよく参照されるのが、EF Education FirstのEF English Proficiency Index(EF EPI)です。2025年版は、123の国・地域、成人約220万人の英語テスト結果をもとにしています。
2025年版の上位15か国・地域は次のとおりです。
| 順位 | 国 | スコア | 習熟度区分 |
|---|---|---|---|
| 1 | オランダ | 624 | 非常に高い |
| 2 | クロアチア | 617 | 非常に高い |
| 3 | オーストリア | 616 | 非常に高い |
| 4 | ドイツ | 615 | 非常に高い |
| 5 | ノルウェー | 613 | 非常に高い |
| 6 | ポルトガル | 612 | 非常に高い |
| 7 | デンマーク | 611 | 非常に高い |
| 8 | スウェーデン | 609 | 非常に高い |
| 9 | ベルギー | 608 | 非常に高い |
| 10 | スロバキア | 606 | 非常に高い |
| 11 | ルーマニア | 605 | 非常に高い |
| 12 | フィンランド | 603 | 非常に高い |
| 13 | 南アフリカ | 602 | 非常に高い |
| 13 | ジンバブエ | 602 | 非常に高い |
| 15 | ポーランド | 600 | 非常に高い |
上位にはヨーロッパ諸国が多く並びます。2024年のEurobarometer調査でも、EU市民の47%が英語を外国語として話せると回答し、15~24歳では10人中7人が英語で会話できるとされています。
ただしEF EPIは、英語を母語とする主要国を順位づけするものではありません。そのため、アメリカやイギリスが表にないからといって、英語力が低いわけではありません。また、シンガポールのように英語が社会で広く使われる国・地域の扱いも、年版や分類によって単純比較できない場合があります。

英語が通じやすいと感じやすい国・地域
オランダ
オランダはEF EPIで長年上位に入り、2025年版では1位です。オランダ語が公用語ですが、学校教育、大学、国際企業、観光などで英語に触れる機会が多く、アムステルダムなどの都市では旅行者が英語で行動しやすい傾向があります。
オランダ語と英語がともにゲルマン語派に属し、言語的に近いことも学びやすさの一因と考えられます。ただし、地方の小さな施設や高齢者との会話まで保証するものではありません。
北欧諸国
デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドなども上位の常連です。英語教育に加え、人口規模の小さい言語市場では、英語の映画、音楽、インターネット、仕事に触れる必要と機会が多くなります。
主要都市、ホテル、交通、飲食店では英語が通じる可能性が高く、初めての個人旅行でも比較的動きやすい地域です。ただし、緊急時の制度説明や医療の細部は、現地語資料や通訳を確認しましょう。
ドイツ・オーストリア・ベルギーなど
中欧・西欧の一部も英語力調査で高い水準にあります。大都市、大学都市、国際展示会の開催地、観光地では英語対応が見つかりやすいでしょう。
一方、ベルギーのように国内で複数の公用語が使われる国もあります。英語は便利な橋渡しになりますが、その国の言語構成を知り、挨拶や地名は現地語でも確認すると移動がスムーズです。
ポルトガル・クロアチア
観光客が多いポルトガルやクロアチアも2025年版で上位です。リスボン、ポルト、ドゥブロヴニク、スプリトなど、国際観光の盛んな都市では、宿泊・飲食・ツアーで英語が使われやすい傾向があります。
ただし、観光中心部から離れた住宅地や地方交通では現地語が中心になることがあります。「観光客の多い国」と「国内の全地域で同じように英語が通じる国」は同じではありません。
シンガポール・フィリピン
アジアで旅行者が英語を使いやすい代表例が、シンガポールとフィリピンです。シンガポールでは英語が行政・教育・ビジネスをつなぐ重要な言語で、公共表示にも広く使われます。フィリピンでも英語は公用語のひとつで、学校、メディア、サービス業などで広く使われています。
ただし、英語の発音やリズム、地域独自の表現には多様性があります。「アメリカ英語と同じでなければ正しくない」と考えず、世界の英語として耳を慣らすことが大切です。
「英語が通じにくい国」はどう考えればよい?
ランキングの下位にある国を、そのまま「英語が通じない国」と呼ぶのは正確ではありません。より適切なのは、英語を日常的に使う必要や機会が、国全体では比較的少ない可能性がある国と考えることです。
たとえば、国内人口が多く、現地語だけで教育、仕事、娯楽が成立する社会では、多くの人が英語を日常的に話す必要がありません。また、英語以外の国際語や旧宗主国の言語が使われる地域もあります。
東アジアの一部
日本、中国、韓国などでは、国際空港、主要駅、ホテル、観光地の英語表示は整備されていても、一般の人が日常会話で英語を使う頻度は高くありません。学校で長く学んでいても、話すことには慎重な人もいます。
EF EPI 2025で日本は123か国・地域中96位、スコア446で「非常に低い」区分でした。しかし、日本を旅行した外国人が、東京・大阪・京都の空港やホテルで何もできないわけではありません。表示、翻訳端末、観光案内、スタッフの定型対応など、個人の会話力以外の仕組みが旅行を支えています。
中南米の一部
中南米ではスペイン語またはポルトガル語が広い地域で通じるため、国内生活で英語を必要としない人が多くいます。リゾートや国際ホテルでは英語が通じても、長距離バス、地域の食堂、地方の町では現地語が役立ちます。
これは住民の学習能力の問題ではなく、生活の中で英語を使う必要性の違いです。簡単なスペイン語やポルトガル語の挨拶を覚えるだけでも、旅の安心感が大きく変わります。
中東・中央アジアの一部
湾岸の国際都市や航空ハブでは、英語が多国籍の人々をつなぐ共通語になっています。一方、国全体の平均値では低い区分に入る国もあります。首都の高級ホテルと地方の行政窓口では、英語環境がまったく異なることがあります。
また、安全保障、査証、宗教・文化上のルールは言語力とは別問題です。渡航前には外務省などの最新情報を確認し、重要書類は現地語または正式な翻訳も用意してください。
フランス語圏など英語以外の共通語が強い地域
西・中央アフリカの一部やフランス語圏では、国際的な場面でもフランス語が優先されることがあります。「非英語圏=現地語ひとつ」ではなく、地域の歴史によって複数の言語が使い分けられています。
英語ランキングだけを見ると低く見えても、別の国際語で広く意思疎通できる社会かもしれません。英語の順位は、その国の言語能力全体を表す成績表ではありません。
ランキングをそのまま旅行難易度にできない5つの理由
1.調査対象者が全国民の縮図とは限らない
EF EPIは大規模な資料ですが、受検者は自らオンライン英語テストを受けた成人です。インターネットにアクセスでき、英語学習や試験に関心がある人が参加しやすいため、無作為抽出した国勢調査とは性質が違います。
TOEFLを運営するETSも、受験者数や受験目的、教育条件が国ごとに違うため、TOEFL平均点で国を順位づけするのは適切でないと明記しています。どの英語試験も、「誰のデータなのか」を確認して読む必要があります。
2.国の平均は地域差を隠す
首都、大学都市、観光都市では英語が広く使われても、地方では現地語中心という国は多くあります。反対に、国全体の順位が低くても、国際リゾートでは英語だけで滞在できる場合があります。
3.英語力と旅行インフラは別
住民の英語力が高くなくても、多言語表示、分かりやすい交通アプリ、翻訳端末、観光案内所が充実していれば旅行者は困りにくくなります。英語力が高い国でも、地方交通が複雑なら別の準備が必要です。
4.日常会話と専門対応は別
レストランの注文ができても、病状、保険、契約、警察への説明まで英語で正確にできるとは限りません。「通じやすい国だから通訳不要」とは考えず、重要な場面ほど支援手段を確認しましょう。
5.発音への慣れで体感が変わる
英語力の高い相手でも、発音やリズムが自分の学んだ英語と違うと聞き取りにくく感じます。逆に、互いに非母語話者だからこそ、簡単な単語で丁寧に確認し合い、よく通じることもあります。
英語が通じにくい場所へ行く前の準備
- 宿泊先の名前と住所を現地語でも保存する
英語表記、現地語表記、地図、電話番号をスクリーンショットにします。 - オフライン翻訳を入れる
現地語のデータを事前にダウンロードし、通信がなくても文字を見せられるようにします。 - 重要な情報を短文で用意する
アレルギー、持病、薬、緊急連絡先、保険情報を英語と現地語で用意します。 - 数字・時刻・目的地は文字で確認する
聞き間違いを避けるため、金額や出発時刻を画面や紙に書いて確認します。 - 現地語の5表現を覚える
こんにちは、ありがとう、すみません、英語を話せますか、助けてください、だけでも役立ちます。 - 英語対応先を先に調べる
病院、保険会社、カード会社、大使館・領事館など、困ったときの連絡先を保存します。
困ったときは、この簡単な英語で乗り切れる
難しい表現を暗記しなくても、短い英語と画面提示を組み合わせれば、多くの用事は解決できます。
- Do you speak English?
英語を話せますか。 - A little English is OK.
少しの英語で大丈夫です。 - Can you show me?
見せてもらえますか。 - Please write it here.
ここに書いてください。 - This place, please.
この場所をお願いします。 - I need help.
助けが必要です。 - One moment. I’ll translate it.
少し待ってください。翻訳します。
しゅみすけ(大山俊輔)
英語が通じるか調べるときのチェックリスト
渡航先を調べるときは、「国名+英語」で検索するだけでなく、次の項目を確認しましょう。
- 訪れる都市と地方の違い
- 空港・駅の英語表示
- ホテルの英語対応レビュー
- 交通アプリの対応言語
- 観光案内所の有無
- 医療機関の通訳・英語対応
- 現地SIM・Wi-Fi・オフライン地図
- 緊急連絡先と旅行保険
さらに、前の記事英語は世界のどこで通じる?では、空港、ホテル、都市部、地方、医療・行政など「場所×場面」の違いを詳しく整理しています。
よくある質問
ヨーロッパはどこでも英語が通じますか?
いいえ。北・西ヨーロッパや主要都市では比較的通じやすい傾向がありますが、ヨーロッパ全域が同じではありません。国、地域、世代、場面によって差があり、地方では現地語が必要になることがあります。
アジアで英語が通じやすい国はどこですか?
旅行者の体感では、シンガポールやフィリピンは英語を使いやすい代表例です。マレーシアやインドの都市部でも英語が広く使われます。ただし、どの国にも地域差があります。
日本は本当に英語が通じにくい国ですか?
国際的な英語力調査では低い区分に入ることがありますが、主要空港、都市交通、有名観光地には英語表示や多言語支援があります。会話力の平均と、外国人旅行者が実際に移動できるかは同じ指標ではありません。
英語圏なら現地語の準備は不要ですか?
基本的な旅行は英語でできます。ただし、地域固有の発音・語彙、多言語社会への理解は必要です。また、医療や法律など重要な場面では、英語圏でも専門家の説明を十分に確認しましょう。
まとめ|ランキングは入口、旅の準備は都市と場面で決める
英語が通じやすい国としては、まず英語を母語とする国々、英語を公用語・第二言語として使う国々が挙げられます。非英語圏では、EF EPI 2025でオランダ、クロアチア、オーストリア、ドイツ、北欧諸国などが上位でした。
一方、ランキング下位の国でも、国際空港、主要ホテル、有名観光地では英語が使える場合があります。反対に、上位国でも、地方の小さな店や専門的な手続きでは英語だけで十分とは限りません。
英語の通じやすさは、国の平均だけでなく、都市と地方、旅行の場面、そして自分の準備で決まります。ランキングを人や国の優劣として読むのではなく、旅の準備量を考える入口として使いましょう。
参考資料
- EF English Proficiency Index 2025
- EF EPI Reports and methodology
- European Commission:Europeans and their languages(2024)
- ETS:TOEFL iBT Test and Score Data Summary









