英語の「一致」とは?主語と動詞・代名詞をなぜそろえるのか

英語のShe worksとThey workで離れた言葉の関係を一致が示す仕組み

英語では、She works. とは言えても、標準的な文法では She work. とは言いません。一方、主語が複数になると They work. となり、今度は動詞の -s が消えます。

このように、文の中にある二つ以上の要素が、人称・数・性・時間などの特徴をそろえることを一致(agreement/concord)と呼びます。

学校文法では「三単現にはsを付ける」と覚えます。しかし、英語はなぜ、意味がほとんど変わらない小さな印をわざわざ付けるのでしょうか。

一致の本質は、離れた言葉同士がどのような関係にあるかを文の形で示すことです。主語・動詞・代名詞などが対応する標識を持つことで、聞き手は「誰の動作か」「一人か複数か」「どの名詞を受けているか」を追いやすくなります。

しゅみすけ(大山俊輔)

一致を「間違えると減点される規則」ではなく、「離れた言葉が同じチームだと知らせる目印」と考えると、三単現のsにも役割が見えてきます。

英語の一致とは?文の中の要素が特徴をそろえる仕組み

英語の一致には、いくつかの種類があります。

一致の種類そろえるもの
主語と動詞の一致人称・単数/複数She works. / They work.
名詞と代名詞の一致人・物・数などEmma lost her key.
指示語と名詞の一致単数/複数this book / these books
時制・時間軸の対応発話時点・基準時点She said she was tired.

すべてを同じ規則として扱うことはできません。例えば主語と動詞の一致は形態上の対応ですが、いわゆる「時制の一致」は、他人の発言をどの時間的視点から伝えるかという問題です。

共通しているのは、文の別々の場所にある情報を関連づけ、聞き手が同じ対象・数・時間軸を追えるようにすることです。

主語と動詞の一致|誰が動作の担い手かを動詞にも表示する

現在形の一般動詞では、主語が三人称単数のときに動詞へ -s が付きます。

主語動詞
I / you / we / they原形They work here.
he / she / it-s形She works here.

be動詞では対応がさらに明確です。

  • I am ready.
  • She is ready.
  • They are ready.

主語を読めば誰のことか分かるため、動詞側の変化は一見すると重複に見えます。しかし、一致は聞き手へもう一度手掛かりを渡します。長い主語のあとでも、動詞の形が主語の数や人称を確認する補助線になります。

The woman who lives next door works at the hospital.

主語と動詞の間に who lives next door が入っても、works の形は中心となる単数主語 the woman と結びつきます。関係節については英語はなぜ関係詞を使う?で解説しています。

英語と日本語の違い|英語は形を変え、日本語は文脈で補う

英語はThe student worksとThe students workで動詞を変え、日本語は動詞を変えない比較図

言語一人複数
英語The student works.The students work.
日本語学生は働きます。学生たちは働きます。

日本語の動詞「働きます」は、主語が一人でも複数でも変化しません。主語が「私」「彼女」「学生たち」になっても同じ形です。

さらに、日本語では主語自体を省略できます。

  • 毎日ここで働いています。
  • もう帰りました。
  • 明日は行きません。

誰のことかは、それまでの会話や場面から推測します。一方、英語は主語を原則として置き、主語と動詞の関係を語順や一致で明示します。英語の主語が省略されにくい理由は、英語はなぜ主語が必要?日本語では省略できるのにでも詳しく扱っています。

英語は語形変化を減らしたが、一致を完全には捨てなかった

古英語には、現代英語よりはるかに多くの語尾変化がありました。名詞・形容詞・代名詞・動詞の形が、格・数・人称・文法上の性などに応じて変化していました。

その後、英語は多くの語尾を失い、語順や前置詞へ文法関係を任せるようになりました。現代英語の主語と動詞の一致は、豊かな語形変化の体系から残った比較的小さな仕組みです。

つまり現代英語は、すべての単語を複雑に変化させる言語ではありません。ただし、主語と動詞の骨格や、代名詞が何を指すかなど、文の理解に重要な場所では一致の標識を残しています。

名詞と代名詞の一致|同じ人物・物を追跡する

代名詞は、一度出した名詞を繰り返さずに指し直す言葉です。

Emma lost her key, so she called the hotel.
エマは鍵をなくしたので、ホテルへ電話しました。

hershe は、前に出た Emma を受けています。この対応により、聞き手は別の人物が突然登場したのではなく、同じ人物の話が続いていると分かります。

先行する名詞対応する代名詞の例
Emmashe / her / hers
the bookit / its
the studentsthey / them / their

現代英語では、性別が不明・無関係な一人を受ける singular they も広く使われます。

If a customer calls, tell them I’ll call back.

ここでは文法上の単純な「単数ならheかshe」という対応より、現実の人物をどう指すかが優先されています。一致は固定された機械規則だけでなく、言語共同体の使い方とともに変化します。

this/these、that/thoseも数をそろえる

英語では、指示語も名詞の単数・複数に応じて変わります。

  • this bookthese books
  • that womanthose women

日本語の「この本/この本たち」「あの女性/あの女性たち」では、「この」「あの」の形は変わりません。英語では名詞だけでなく、その前の指示語にも数が表示されます。

一つの名詞句の中に複数の手掛かりがあることで、聞き手は早い段階から一つか複数かを予測できます。these を聞いた時点で、後ろに複数名詞が来る構えができます。

意味による一致|形だけでなく「一つと見るか、複数と見るか」

一致は、目の前の名詞に機械的に引っ張られるだけではありません。話し手が対象をどのように捉えるかも関係します。

The team is ready.
チームは準備できています。

チーム全体を一つの単位として見れば単数動詞が使われます。特にイギリス英語では、構成員それぞれを意識して複数動詞を使うこともあります。

The team are wearing their new uniforms.

これは「正しい数を数える」だけでなく、集合を一つのまとまりとして見るか、複数の人々として見るかという概念化の違いです。

動詞は直前の名詞ではなく、主語の中心語と一致する

主語が長いと、動詞の直前にある名詞へ引っ張られやすくなります。

The box of chocolates is on the table.

動詞の直前は複数形 chocolates ですが、主語の中心は単数の box です。そのため is になります。

The students in this class are very friendly.

class は単数でも、中心となる主語は複数の students なので are です。

一致を決めるには、動詞に一番近い名詞ではなく、文が何を主役として述べているかを見ます。主語・目的語・補語の違いは英語の目的語と補語とは?OとCの違いでも確認できます。

しゅみすけ(大山俊輔)

長い主語では、動詞の直前だけを見ないようにしてください。「この文は何について述べているのか」という中心語を見つけると、一致させる相手が分かります。

everyoneが単数扱いになるのはなぜ?

everyoneeverybodyeach は複数の人を含みますが、標準的な文法では単数動詞を使います。

  • Everyone is ready.
  • Each student has a ticket.

everyeach は、集団を一括して見るというより、構成員を「一人ずつ」取り出す考え方を持ちます。そのため動詞は単数になります。

一方、後ろで受ける代名詞には、現代英語では自然に they が使われます。

Everyone is ready, aren’t they?

動詞は文法上の単数、代名詞は性別を限定しない they です。一致には、形・意味・社会的な用法が複数の層として関わっています。

時制の一致は「形をそろえる規則」だけではない

学校文法でいう時制の一致では、主節が過去になると、従属節も過去方向へ移ることがあります。

She said, “I am tired.”

She said that she was tired.

ただし、これは過去形を機械的にそろえるだけではありません。他人の発言を、現在の話し手の地点から過去の出来事として置き直しています。

今も変わらない事実や一般的真理では、現在形を保つこともあります。

The teacher said that the Earth moves around the Sun.

間接話法と時間軸の詳しい組み替えは、be:RIZEの間接話法とは?人から聞いた話を自分の視点と時間軸に置き直すへつないでいます。b-cafeでは、「一致」という表面上似た現象の背後に、対象追跡と視点調整という異なる仕組みがあることを押さえます。

一致は意味の重複ではなく、聞き手を助ける冗長性

She works. では、she だけでも一人の第三者だと分かります。それでも動詞に -s を付けます。このように同じ情報を複数箇所へ置くことを、単なる無駄と見る必要はありません。

会話には雑音、聞き逃し、長い挿入、言い直しがあります。複数の標識があれば、一つを聞き逃しても別の手掛かりから関係を復元できます。

  • 主語が誰か
  • 単数か複数か
  • 現在か過去か
  • 代名詞が何を指すか

一致は、文の中へ小さな確認信号を繰り返し配置する仕組みです。英語の文法が情報を一度だけ伝えるのではなく、複数の場所から支えていることが分かります。

日本語は一致が少ないから曖昧な言語なのか?

一致変化が少ないことは、情報が少ないことと同じではありません。日本語は、助詞・敬語・語彙・語順・省略・共有文脈など、別の手段で関係を示します。

例えば「行きました」という動詞だけでは主語の人称や数は分かりません。しかし、会話の流れで誰のことか明らかなら、毎回表示する必要がありません。

英語は主語と動詞の骨格を文の形に出しやすく、日本語は共有された場面へ多くを預けやすい。これは優劣ではなく、情報をどこへ置くかという設計の違いです。

よくある質問

主語と動詞の一致は現在形だけですか?

一般動詞で三単現の -s が現れるのは現在形ですが、be動詞には過去形でも was/were の単複差があります。完了形の has/have も主語に応じて変わります。

主語がandで結ばれたら必ず複数ですか?

通常は複数です。Tom and Emma are here. のようになります。ただし、二語で一つの料理・概念を表す場合や、同一人物を指す場合など、単数として捉えられることがあります。一致は形だけでなく意味上のまとまりにも影響されます。

there is/there areは何と一致しますか?

there は場所を表す通常の主語ではなく、存在を導入する形式的な要素です。標準的な形では後ろの名詞句に応じて There is a problem.There are two problems. と使い分けます。会話では複数名詞の前でも There’s が使われることがあります。

一致を間違えると意味が通じませんか?

多くの場合、文脈から意味は伝わります。しかし一致が安定すると、主語と動詞の関係が明確になり、長い文でも聞き手が情報を追いやすくなります。単なる試験上の正誤ではなく、処理を助ける標識として理解することが大切です。

まとめ|一致は、文の中に張られた見えない糸

  • 一致とは、文中の要素が人称・数・性・時間などの特徴を対応させること
  • 主語と動詞の一致は、誰の動作かを動詞側にも表示する
  • 名詞と代名詞の一致は、同じ人物・物を追跡させる
  • 英語は語形を変えて関係を示し、日本語は文脈や省略へ多くを預ける
  • 一致は直前の名詞ではなく、主語の中心語や意味上のまとまりで決まる
  • 時制の一致は、他人の発言を話し手の時間軸へ置き直す仕組み
  • 一致による情報の重複は、聞き手の理解を支える手掛かりになる

文を構成する単語は、ばらばらに並んでいるわけではありません。主語と動詞、名詞と代名詞、発言と時間軸の間には、目には見えない関係があります。英語の一致は、その関係を語形として表面へ出す仕組みです。

英語の文法を「なぜこの形があるのか」から整理する場合は、親記事英語の基本・構造とは?もあわせてご覧ください。

参考資料

I・my・me・mineがなぜ別の形になるのか、英語の格と日本語の助詞を比較して知りたい方は、英語はなぜI・my・me・mineを使い分ける?代名詞の形が変わる理由もご覧ください。

this・that・these・thoseを英語の「距離×数」と日本語の「こ・そ・あ」の比較から知りたい方は、英語はなぜthis・that・these・thoseを使い分ける?日本語の「こ・そ・あ」との違いもご覧ください。

英語がThere is・There areで場面を先に開き、新しい存在を後ろから紹介する理由は、英語はなぜThere is・There areを使う?「〜がある・いる」と語順が違う理由で日本語と比較しながら解説しています。

be動詞と一般動詞がなぜ別の骨格を持つのかは、英語はなぜbe動詞と一般動詞を分ける?「状態」と「動き」を別の骨格で表す理由で、日本語の述語構造と比較しながら解説しています。

この記事を書いた人
しゅみすけ(大山俊輔)

b わたしの英会話および英語コーチングGRIT/be:RIZE代表。米国MBA取得、外資系企業4社での勤務経験を持ち、これまで多くの大人の英語学習を支援。日本語と英語の処理構造の違いに着目した「英語OS」の考え方をもとに、独学で伸び悩む人の学び直しをサポートしています。

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