
英語の/p/と/b/は、どちらも両唇を閉じてから開く音です。それでもpatとbatは別の単語として聞き分けられます。/f/と/v/も口の形は似ていますが、fanとvanの意味を区別します。
子音は、アルファベットの「子音字」と同じものではありません。子音(consonant)は、声道のどこかを閉じたり狭めたりして、肺から出る空気へ妨げを作る音です。英語の子音を体系的に見るには、①声帯が振動するか、②口のどこで妨げるか、③空気をどう妨げるか、という三つの軸が役立ちます。
この記事でわかること
- 子音と子音字の違い
- 英語の子音を決める三つの軸
- 有声音・無声音の仕組みと代表的なペア
- 調音位置と調音方法による分類
- 英語と日本語で子音体系がどう違うか
Contents
英語の子音とは?
Cambridge Handbook of Phoneticsは、子音を声道の閉鎖または閉鎖に近い狭めを伴って作られる音として説明しています。母音では空気が比較的自由に流れますが、子音では唇・歯・舌・口蓋・声門などが空気の通り道へ働きかけます。
英語の標準的な発音教育では、一般に24の子音音素が示されます。ただし、英語には多様な地域・社会アクセントがあるため、実際の音価や異音は一つに固定されません。ここでは学習用に広く用いられる体系を基準にします。
子音とアルファベットの子音字は同じではない
| 綴り | 音 | ポイント |
|---|---|---|
| ship | /ʃɪp/ | shの二文字で一つの子音/ʃ/ |
| box | /bɒks/など | xの一文字で二つの子音/ks/ |
| phone | /fəʊn/など | phの二文字で/f/ |
| knock | /nɒk/など | 語頭のkは通常発音しない |
したがって、英語の子音を数えるときは文字数ではなく、実際に区別される音を見ます。この違いはIPA(国際音声記号)を使うと明確になります。
英語の子音を決める3つの軸

一つの子音は、主に次の三点を組み合わせて説明できます。
- 声帯振動(voicing):声帯が振動するか
- 調音位置(place of articulation):声道のどこで空気を妨げるか
- 調音方法(manner of articulation):空気を完全に止めるか、狭い隙間へ通すか、鼻へ流すか
たとえば/p/は「無声・両唇・破裂音」、/b/は「有声・両唇・破裂音」です。位置と方法は同じで、声帯振動だけが主な違いになります。/t/は「無声・歯茎・破裂音」、/s/は「無声・歯茎・摩擦音」で、声帯振動と位置は近くても、空気の妨げ方が違います。
しゅみすけ(大山俊輔)
有声音と無声音は何が違う?
有声音(voiced consonant)では声帯が振動し、無声音(voiceless consonant)では基本的に声帯振動を伴いません。喉へ指を軽く当て、/ssss/と/zzzz/を交互に出すと、/z/で振動を感じやすくなります。
| 無声音 | 有声音 | 単語例 |
|---|---|---|
| /p/ | /b/ | pat / bat |
| /t/ | /d/ | ten / den |
| /k/ | /g/ | coat / goat |
| /f/ | /v/ | fan / van |
| /θ/ | /ð/ | thigh / thy |
| /s/ | /z/ | sip / zip |
| /ʃ/ | /ʒ/ | pressure / pleasure内の音 |
| /tʃ/ | /dʒ/ | cheap / jeep |
ただし、英語の「有声・無声」は単純なオン・オフだけではありません。特に英語の語頭の/p t k/は強い帯気を伴うことがあり、/b d g/も環境や話者によって閉鎖中ずっと声帯が振動するとは限りません。聞き分けには声帯振動だけでなく、破裂後に母音が始まるまでの時間なども関わります。
それでも、音韻体系を理解する第一歩として、有声・無声の対立は有効です。British Councilも、喉の振動を確かめながら/s/と/z/、/p/と/b/などを分類する方法を紹介しています。
調音位置とは?口のどこで子音を作るか
調音位置は、空気の通り道を閉じたり狭めたりする場所です。国際音声記号の子音表も、調音位置を口の前方から後方へ並べています。
| 主な調音位置 | 使う場所 | 英語の代表音 |
|---|---|---|
| 両唇音 | 上唇と下唇 | /p b m/ |
| 唇歯音 | 下唇と上の歯 | /f v/ |
| 歯音 | 舌と歯 | /θ ð/ |
| 歯茎音 | 舌先・舌端と歯茎 | /t d s z n l/ |
| 後部歯茎音 | 歯茎より少し後ろ | /ʃ ʒ tʃ dʒ r/ |
| 硬口蓋音 | 舌面と硬口蓋 | /j/ |
| 軟口蓋音 | 舌の後部と軟口蓋 | /k g ŋ/ |
| 声門音 | 声門 | /h/ |
/t/・/d/・/s/・/z/は歯茎付近、/k/・/g/は口の奥で作ります。この位置の違いがあるため、同じ破裂音でも/t/と/k/は別の音として認識されます。
調音方法とは?空気をどう妨げるか
調音方法は、声道をどの程度閉じ、空気をどこへ流すかという分類です。
| 調音方法 | 空気の動き | 英語の代表音 |
|---|---|---|
| 破裂音 | 完全に閉鎖してから開放 | /p b t d k g/ |
| 摩擦音 | 狭い隙間へ通して摩擦を作る | /f v θ ð s z ʃ ʒ h/ |
| 破擦音 | 閉鎖後、摩擦を伴って開放 | /tʃ dʒ/ |
| 鼻音 | 口を閉じ、鼻へ空気を流す | /m n ŋ/ |
| 接近音 | 強い摩擦を作らない程度に接近 | /r j w/ |
| 側面接近音 | 舌の側面へ空気を流す | /l/ |
/t/と/s/は、どちらも舌を歯茎付近へ近づける無声音です。しかし/t/では一度空気を完全に止め、/s/では細い隙間から流し続けます。「場所が近いから同じ音」ではなく、調音方法まで含めて子音が決まります。
日本語と英語の子音はどう違う?
日本語にも破裂音・摩擦音・鼻音などがあります。ただし、二つの言語は同じ子音一覧を共有しているわけではなく、似た音でも調音位置や方法が異なる場合があります。
英語の/l/と/r/に対応する二分法が日本語にはない
英語の/l/は舌先を歯茎付近へ付け、空気を舌の側面へ流す側面接近音です。英語の/r/は多くの発音で、舌を接触させず接近させる音です。一方、日本語のラ行子音は一般に短い接触を伴う音として現れ、英語の/l/・/r/のどちらとも同一ではありません。
英語の/θ/と/ð/は日本語の子音体系にない
thinkの/θ/とthisの/ð/は、舌と歯の間に狭めを作る歯摩擦音です。日本語では意味を区別する独立した音素として使われないため、/s/・/z/・/t/・/d/など既知の音へ近づけて知覚・発音しやすくなります。
英語の/f/と日本語の「ふ」の子音は完全には同じでない
英語の/f/は下唇と上の歯で作る唇歯摩擦音です。標準的な日本語の「ふ」に現れる子音は、両唇を近づけて作る[ɸ]として説明されることが多く、接触する場所が異なります。
英語は語末へ多くの子音を置ける
日本語の子音は多くの場合、後ろの母音とまとまります。英語はcatの/t/、deskの/sk/、textsの/ksts/のように語末へ子音を置けます。この差は、先ほどの記事英語の子音連続とは?や英語の音節とは?につながります。
しゅみすけ(大山俊輔)
英語の子音は、意味をどう区別する?
子音は、単語の意味を区別する音素として働きます。子音一つだけが違う次のような組み合わせは、最小対語として音の機能を示します。
- pat / bat:/p/と/b/
- fan / van:/f/と/v/
- sip / zip:/s/と/z/
- light / right:/l/と/r/
- thin / sin:/θ/と/s/
- cap / cat:/k/と/t/
違いを作るのは「舌の形」だけではありません。声帯振動、調音位置、調音方法のいずれかが変わることで、聞き手は別の音素として処理します。
子音を理解するための5つの観察ポイント
- 文字ではなく発音記号を見る:文字と音は一対一ではありません。
- 喉の振動を確認する:/s/と/z/などを比較します。
- 接触する場所を確認する:唇・歯・歯茎・口蓋のどこかを見ます。
- 空気の出口を確認する:口か鼻か、完全閉鎖か狭めかを見ます。
- 単語内の位置を見る:同じ音素でも周囲の音によって実際の音は変化します。
実際の発音練習や修正の優先順位は、be:RIZEの英語の発音は何から練習する?、英語の発音はどこまで直すべき?、ネイティブを真似しても発音できない理由で扱っています。本稿は子音の体系、be:RIZEは学習上の診断と解決という棲み分けです。
発音学習の入り口としては、tipsの日本人に英語の発音が難しい理由と英語の発音が分かるフォニックスとは?も参考になります。
まとめ:子音は声・場所・空気の組み合わせ
- 子音は声道を閉じたり狭めたりして作る音
- 子音とアルファベットの子音字は同じではない
- 英語の子音は声帯振動・調音位置・調音方法の三軸で整理できる
- 同じ口の位置でも、声帯振動や空気の妨げ方が違えば別の音になる
- 日本語と英語では子音の種類と配置の規則が異なる
子音は単独の「口の形」ではなく、発音器官の協調運動です。英語の音全体へ戻る場合は英語の音・発音とは?、物理的な音と意味を区別する仕組みは音声学と音韻論の違いとは?をご覧ください。








