斎藤兆史とは?英語を学ぶ意味は「会話」だけではない

斎藤兆史の英語教育論を表すイラスト

英語教育の成果は「すぐ会話できるか」だけで測られがちです。しかし英語には、文章を精密に読み、異なる時代や文化の思考へ入り、自分の表現を鍛える役割もあります。

斎藤兆史とは

斎藤兆史は1958年栃木県生まれの英語学・英語教育研究者、東京大学名誉教授です。英文学、英学史、翻訳を専門とし、『英語達人列伝』では、岡倉天心、斎藤秀三郎ら近代日本の英語使いを取り上げました。

会話重視への批判は、会話の否定ではない

問題は会話練習そのものではなく、即時の実用性だけを英語教育の唯一の価値にすることです。短い定型会話はできても、複雑な文章を読み、根拠を持って考え、正確に書く力が自動的につくわけではありません。

しゅみすけ(大山俊輔)

会話と読解は競争相手ではありません。深く読んで蓄えた語彙や構文が、時間をかけて話す内容と表現の厚みになります。

精読・音読暗唱・要約作文・対話をつなぐ図解

達人たちに共通する学び

  • 良質な文章を繰り返し読む
  • 音読・暗唱で表現を身体化する
  • 辞書と文法を使い、曖昧な理解を放置しない
  • 英語を使って何を伝えるかという専門や教養を持つ

文学を読む意味

文学作品では、単語の辞書的意味だけでなく、語り手の距離、皮肉、沈黙、時代背景を読みます。これは遠回りに見えて、相手の意図を文脈から推測する高度なコミュニケーション訓練です。

現代の学習へどう取り入れるか

初心者に古典を強制する必要はありません。関心のある短文を選び、精読→音読→要約→自分の意見の順に進みます。会話レッスンでは、読んだ内容を説明して質問を受ければ、読解と対話がつながります。

注意点

過去の達人の膨大な学習量を美化し、全員へ同じ方法を求めるのは現実的ではありません。また、文学的教養だけを価値ある英語とし、生活や仕事の英語を低く見るべきでもありません。目的に応じて技能の配分を変えます。

しゅみすけ(大山俊輔)

「役に立つ英語」と「深く考える英語」は両立します。今週は一つの会話表現を練習し、一つの英文を丁寧に読む。この二本立てでも十分です。

英語や言語を研究してきた人物を、世界の言語学と日本の英学・翻訳・教育という二つの流れからたどる場合は、中間ガイド「言語を研究した人々|英語・言語学の歴史を変えた研究者・英学者」をご覧ください。

まとめ

斎藤兆史の英語教育論は、英語の価値を即席の会話力へ縮めないよう促します。読む・聞く・話す・書くを、文化理解と自分の思想を育てる活動として結び直すことが重要です。

斎藤兆史の経歴と英学史への関心

斎藤は東京大学で英語・英米文学を学び、米国インディアナ大学、英国ノッティンガム大学でも研究を続けました。英文学の研究・翻訳に加え、日本人が近代以降どのように英語を学び、外国文化と向き合ったかを英学史として考察します。

『英語達人列伝』で扱われる人物は、会話テストの点を競ったのではありません。外交、教育、思想、文学、科学など、自分の課題を英語で世界へ伝える必要がありました。斎藤が見る「達人」の核心は、流暢さだけでなく、英語を支える専門、人格、目的にあります。

日本人は本当に英語が苦手なのか

「日本人は英語ができない」という決まり文句は、学習者の自信を奪います。近代には日本を拠点にしながら高い英語力を築いた人々がいました。成功例を調べれば、日本人だから不可能なのではなく、目的、教材、訓練、使用機会の設計が重要だとわかります。

ただし、過去の一部のエリートには時間・教育・社会的資源がありました。その学習量を現代の全員へそのまま求めず、原理を生活に合う形へ縮小します。

精読で何をするのか

精読は全文を機械的に和訳することではありません。重要語の選択、修飾関係、代名詞、時制、筆者の態度を確かめ、なぜその表現が選ばれたかを考えます。

短文の読み方

What appears to be a simple solution may create new problems.

  1. 主語はWhat appears to be a simple solutionというまとまり
  2. appear to beは「実際にそうだ」と断定していない
  3. mayは可能性を示す
  4. new problemsが単純な解決策への警告になる

この一文を「単純な解決策に見えるものが、新しい問題を生むかもしれない」と理解したら、自分の例を作ります。

音読と暗唱はなぜ必要か

精読した英文を音読すると、理解した構造と音が結びつきます。さらに短い一節を暗唱すると、語順や語の結びつきが長期記憶へ入り、話す・書く際の材料になります。國弘正雄の只管朗読とも接点がありますが、斎藤の議論では古今の優れた英文へ深く触れる教養的側面も大きいと言えます。

会話・読解・作文をつなぐ具体例

環境問題の記事を読んだら、次の順で活動します。

  1. 筆者の主張を一文で要約する
  2. 重要な英文を一つ音読・暗唱する
  3. 自分の生活との接点を書く
  4. 会話レッスンで説明する
  5. 質問を受け、言い直す
  • The article argues that individual action is not enough.
  • I partly agree because companies also need to change.
  • In my daily life, I try to reduce food waste.

しゅみすけ式:教養的な内容も基本英語で話す

「持続可能性」「文化的アイデンティティ」のような言葉が出なくても、意味を分ければ話せます。

  • sustainabilityusing things in a way that we can continue for a long time
  • cultural identityhow people understand themselves through their culture
  • misinterpretationunderstanding something in the wrong way

難しい内容と難しい語彙は同じではありません。基本語で説明することで、自分が本当に理解しているかも確認できます。

文学作品から会話力へ

文学では登場人物が本心を直接言わないことがあります。皮肉、婉曲表現、視点の違いを読むことは、日常会話で言外の意図を推測する力につながります。読後に「なぜこの人は直接断らなかったのか」を話し合えば、語用論の学習にもなります。

斎藤兆史の主張への反対論

精読・暗唱中心の伝統的学習は、実際の相互作用や多様な英語を不足させる可能性があります。また、古典的な英文を規範化すると、現代の世界英語や学習者の声を周辺化しかねません。したがって、精読を土台にしつつ、実際の会話、現代メディア、多様な話者、目的別ライティングを組み合わせる必要があります。

大人の学習者向け週間設計

  • 週2日:短い英文を精読
  • 毎日5分:選んだ一節を音読
  • 週1回:100語で要約・意見を書く
  • 週1回:内容を誰かに説明する
  • 月1回:以前の文章を読み直し、理解の変化を見る

英語教育で「何を読むか」

有名な古典だけが価値ある教材ではありません。学習者の年齢・関心・目的に合わせ、ニュース、エッセイ、スピーチ、物語、仕事の文書を選べます。条件は、少し背伸びすれば理解でき、再読する価値があり、自分の意見を引き出すことです。

同じテーマを異なる立場の文章で読むと、英語力とメディアリテラシーを同時に育てられます。筆者、発表媒体、想定読者、根拠を比較します。

よくある質問

文学を読まないと高度な英語は身につきませんか?

文学は一つの有力な道ですが唯一ではありません。科学、歴史、ビジネス、伝記など、自分が深く考えられる分野の良質な文章でも力は育ちます。

和訳は古い学習法ですか?

目的次第です。英文の意味を精密に確認し、日本語との違いを知るには有効です。ただし和訳だけで終わらず、音読、要約、英語での応答へつなげます。

会話を優先したい初心者にも精読は必要ですか?

短い会話文を丁寧に読むだけでも十分です。主語、時制、丁寧さを確認して音読し、自分の場面へ変えると、精読が会話準備になります。

参考資料

この記事を書いた人
しゅみすけ(大山俊輔)

b わたしの英会話および英語コーチングGRIT/be:RIZE代表。米国MBA取得、外資系企業4社での勤務経験を持ち、これまで多くの大人の英語学習を支援。日本語と英語の処理構造の違いに着目した「英語OS」の考え方をもとに、独学で伸び悩む人の学び直しをサポートしています。

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