
Basic Englishの850語一覧を見ると、最初にOperationsという100語のグループがあります。その先頭に並ぶのが、come、get、give、go、keep、let、make、put、seem、takeなどの基本語です。
これらは、単なる「よく使う動詞のリスト」ではありません。C・K・オグデンは、英語に数千ある動詞の働きを、少数のoperator(操作語)と名詞・前置詞の組み合わせへ分解しようとしました。
結論からいえば、オグデンが動詞を減らしたのは、行為の意味を消すためではなく、複雑な動詞を少数の部品へ分解して再構成するためです。Basic Englishの本当のエンジンは850という数字ではなく、この「意味を組み立て直す仕組み」にあります。
本記事では18のOperationsの内訳、意味を増やす3つの仕組み、学習上の利点と限界、そしてbe-rize.comのコアイメージ学習との接続までを解説します。
Contents
Basic Englishの「18のOperations」とは
Basic Englishの説明では、次の18語が動詞的な中心として扱われます。ただし、厳密にはすべてが同じ種類の一般動詞ではありません。14の主要operatorに、be・have、法助動詞のmay・willを加えた構成と見ると分かりやすいでしょう。
| 区分 | 語 | 主な働き |
|---|---|---|
| 主要なoperator | come, get, give, go, keep, let, make, put, seem, take, do, say, see, send | 移動、変化、所有、作用、認識、伝達などを組み立てる |
| 基本的な状態・所有 | be, have | 状態、存在、属性、所有、経験を表す |
| 法助動詞 | may, will | 可能性・許可・意志・未来などを加える |
「18の動詞」と紹介されることもありますが、オグデン自身はoperatorsという名称を使いました。この呼び方には、これらが豊かな内容を単独で表す語というより、他の語を動かし、文の関係を操作する道具だという思想が表れています。
なお、Operationsという100語のグループ全体には、この18語だけでなく、about、in、out、throughなどの前置詞・副詞、冠詞、代名詞、接続詞なども含まれます。18語がエンジンなら、残りの操作語は方向・関係・論理を伝える歯車です。850語全体の構造は、Basic Englishの850語一覧|Things・Qualities・Operationsで確認できます。
しゅみすけ(大山俊輔)
なぜオグデンは普通の動詞を減らしたのか
1.英語の動詞は数が多く、変化も不規則だから
英語学習者は、動詞ごとに意味、活用、目的語の取り方、前置詞との結びつきを覚えなければなりません。receive、obtain、acquire、procureなど、似た概念にも複数の語があります。オグデンは、これらをgetのような中心語へ戻せば、綴り・発音・活用を学ぶ負担を減らせると考えました。
2.動作の意味は名詞にも移せるから
英語では、decideとmake a decision、investigateとmake an investigation、moveとmake a movementのように、動詞が担う内容を名詞へ移せます。operatorは文法的な動きを担当し、具体的な内容はThingsやQualitiesに担わせる。この分業によって、少数の動詞でも多くの行為を表せます。
3.前置詞が方向と結果を加えられるから
goだけなら「移動する」ですが、go in、go out、go up、go down、go throughと方向語を加えると、出来事の形が変わります。getもget in、get out、get up、get over、get throughによって、到達・離脱・起動・克服・通過などへ広がります。
つまりBasic Englishは、英語の動詞を乱暴に削ったのではありません。動詞の中に一語で詰め込まれていた意味を、operator+名詞、operator+前置詞、operator+qualityへ展開したのです。
18語が意味を増やす3つの仕組み

仕組み1.一つのoperatorで複数の動詞を言い換える
| 一般的な動詞 | Basic English的な表現 | 意味の組み立て |
|---|---|---|
| receive | get | 何かが自分の側へ来る |
| obtain | get | 働きかけの結果として手に入る |
| become | get+quality | ある状態へ変化する |
| depart | go away | 基準点から離れて移動する |
| enter | go in | 外から内へ移動する |
| retain | keep | 手元・状態を保つ |
ここで重要なのは、一対一の機械的な置換ではないことです。getのコアイメージを理解し、目的語・quality・前置詞との関係から意味を選びます。この考え方は、be-rize.comの基本動詞をコアイメージから学ぶ方法と直結します。
仕組み2.operator+名詞で行為を表す
現代文法では、have、take、make、give、doなどをdelexical verbsと説明することがあります。動詞自体の意味が比較的薄く、中心的な意味を後ろの名詞が担う用法です。
| 一語の動詞 | operator+名詞 | 例 |
|---|---|---|
| decide | make a decision | We made a decision. |
| suggest | make a suggestion | She made a suggestion. |
| bathe / shower | take a bath / shower | I took a shower. |
| advise | give advice | He gave me some advice. |
| attempt | make an attempt | They made another attempt. |
| inspect | make an inspection | We made an inspection of the room. |
この形の利点は、名詞へqualityを足しやすいことです。lookではなくtake a quick look、decideではなくmake a difficult decisionとすれば、行為の種類と性質を別々に操作できます。
仕組み3.operator+前置詞・副詞で方向を描く
| 組み合わせ | 中心イメージ | 広がる意味 |
|---|---|---|
| get in / get out | 内へ到達/外へ離脱 | 入る、乗る/出る、逃れる |
| get through | 障害・過程を通り抜ける | 終える、切り抜ける、連絡がつく |
| put on / put off | 接触させる/離す | 身につける/延期する |
| go on / go off | 接触・継続/分離 | 続く/作動する、立ち去る |
| come back | 話し手側へ戻る | 戻る、再び現れる |
| take off | 基準面から離す | 脱ぐ、離陸する、急に成功する |
句動詞が多義的に見えるのは、暗記項目が無秩序に増えているからではありません。基本動詞の出来事の型と、前置詞・副詞の空間イメージが掛け合わされるからです。オグデンは、この英語の生産性を最大限に利用しました。
18語を「役割」で見ると分かりやすい
| 役割 | 中心語 | 核となる発想 |
|---|---|---|
| 移動・接近・離脱 | come, go | 基準点との距離が変わる |
| 到達・変化 | get | ある地点・状態・所有へ届く |
| 移転・伝達 | give, send | もの・情報が相手側へ動く |
| 保持 | keep, have | 所有・状態を保つ |
| 許可・作用 | let, make, do | 出来事を起こす・可能にする |
| 配置・取得 | put, take | 位置を与える/自分側へ取る |
| 状態・外観 | be, seem | 存在・属性/そう見える |
| 言語・認識 | say, see | 言葉にする/視覚・理解へ入れる |
| 可能性・意志 | may, will | 事実に話し手の判断を加える |
この表は辞書的な全意味ではなく、学習用の見取り図です。個々の用法を丸暗記する前に、各語が出来事のどの部分を担当するかを見ると、知らない表現にも推測が働きます。
「18語で数千の動詞を表せる」は本当か
資料によっては、operatorsが数千の動詞の代わりをすると説明されます。オグデンの『General Basic English Dictionary』は、通常英語の2万語をBasic Englishで定義し直す大規模な試みでした。したがって、複雑な概念を18語だけで直接表すのではなく、18語を入口に850語全体を組み合わせることで、多くの語義を記述するという意味です。
日常的な意味のかなりの部分は言い換えられます。しかし、「言える」と「自然で短く正確に言える」は別です。専門動詞を長い説明へ変えると、文章が冗長になったり、意味の境界が曖昧になったりします。たとえばdiagnose、authorize、evacuateのように、制度や専門分野で定義された語は、そのまま使って説明を添えるほうが安全な場合があります。
Basic Englishの850語だけで日常会話・ニュース・文学を表現した実験でも、具体的な出来事には強い一方、抽象概念や専門性が高まるほど説明が長くなる傾向が見えました。詳しくは850語だけで英語はどこまで話せるのかをご覧ください。
英語学習では「18語しか使わない」のではなく、18語から始める
現代の学習者がBasic Englishをそのまま守る必要はありません。価値があるのは、難しい動詞を忘れたときに止まらず、基本動詞へ戻って意味を再構成できることです。
- 何が動くのか――自分側へ来るのか、相手側へ行くのか
- 何が変わるのか――位置、状態、所有、関係のどれか
- 方向はどこか――in、out、up、down、throughなどで描けるか
- 内容を名詞にできるか――decision、look、talk、changeなどへ移せるか
- 一文を分けられるか――一つの難語を二つの簡単な文で説明できるか
たとえば「彼を説得した」がpersuadeで出てこなければ、I talked to him, and he said yes. と結果まで二文で示せます。これは辞書的な同義語ではありませんが、会話の目的は達成できます。英語の言い換えトレーニングで育てたいのも、この再構成する力です。
しゅみすけ(大山俊輔)
オグデンが見抜いたのは、英語の「少数の核」だった
Basic Englishの18のOperationsは、英語を貧しくするための禁止リストではありません。大量の動詞の背後にある、移動、到達、変化、移転、保持、作用、配置、認識といった少数の関係を取り出した設計です。
もちろん、18語ですべてを自然かつ正確に表せるわけではありません。しかし、基本語+名詞+前置詞で意味を組み立てる発想は、句動詞の理解、コアイメージ学習、言い換え、会話での立て直しにそのまま使えます。
オグデンの面白さは、簡単な単語を集めたことよりも、英語の意味がどの部品からできているかを問い直したことにあります。18語は完成された小さな英語というより、学習者が自分の手で意味を生み出すための操作盤なのです。
参考資料
- C. K. Ogden, The System of Basic English
- C. K. Ogden, The General Basic English Dictionary
- Basic English: A General Introduction with Rules and Grammar
- British Council, Delexical verbs
18のoperatorが残された理由も、頻度だけでなく、他の意味を広く支えられることにあります。Basic English 850語を選んだ4つの基準もあわせてご覧ください。
850語を「定義に使う語彙」として働かせた実例は、「The General Basic English Dictionaryとは?2万語を850語で定義した「逆向きの辞書」」で詳しく解説しています。
Basic English型の定義は日本語訳や現代の学習者向け英英辞典と何が違うのか、「Basic Englishの定義は本当に分かりやすい?」で比較しています。
オグデンの人物、850語の設計、実験、辞書、世界語構想、生成AIまでシリーズ全体を順番に読む方は、C・K・オグデンとBasic English完全ガイドをご覧ください。









