第一言語習得と第二言語習得は何が違う?大人の英語学習まで解説

第一言語と第二言語の身につけ方の違いを示すイラスト

私たちは、子どものころには日本語を自然に話せるようになったのに、大人になってから英語を学ぶと、単語や文法を覚えるだけでも苦労します。では、第一言語習得と第二言語習得は、まったく別の仕組みなのでしょうか。

先に結論を言うと、両者には共通する過程がありますが、学び始めるときの条件が大きく異なります。第一言語では、まだ別の言語体系を持たない子どもが、生活に必要な言葉へ大量に触れながら発達します。第二言語では、すでに母語・知識・認知能力を持つ人が、限られた接触時間の中で新しい言語体系を組み立てます。

この記事では、第一言語(L1)と第二言語(L2)の違いを、年齢だけでなく、出発点・環境・学び方・到達度からわかりやすく整理します。

第一言語習得と第二言語習得とは?

第一言語習得(L1 acquisition)

第一言語習得とは、子どもが人生の初期に、日常的なやり取りを通して最初の言語を身につけていく過程です。一般には「母語習得」とも呼ばれますが、家庭内で複数の言語に同時に触れる子どももいるため、第一言語が必ず一つとは限りません。

子どもは、文法用語を教えられる前から、周囲の発話に含まれる音・語・語順のパターンを少しずつ捉えます。そして、喃語、一語文、二語文などを経ながら、周囲とのやり取りに使える体系へ育てていきます。ただし、発達の速さや現れ方には個人差があります。

第二言語習得(L2 acquisition)

第二言語習得とは、第一言語の発達が始まった後に、別の言語を身につける過程です。「第二」といっても、必ずしも二番目の一言語だけを指すわけではありません。三つ目以降の言語も、研究上は広くL2として扱われることがあります。

教室で意識的に学ぶ場合だけでなく、移住、仕事、家庭、友人との交流などを通して自然に身につける場合も含みます。そのため、第二言語習得を「学校で外国語を勉強すること」だけに限定するのは正確ではありません。

違いを一覧で比較

観点 第一言語習得 第二言語習得
出発点 既存の言語体系がまだない すでに第一言語を持つ
主な時期 乳幼児期から始まる 幼児期以降のどの年齢でも起こる
接触環境 生活全体で継続的かつ大量 教室や特定場面に限られることが多い
必要性 生活・関係形成に不可欠 必要度や使用頻度に大きな差がある
母語の影響 比較する既存言語がない 語順・音・意味などにL1の影響を受ける
明示的説明 文法説明なしでも発達する 説明・文字・辞書を利用できる
到達度 通常、生活に十分な体系が発達する 接触量・開始年齢・動機などで個人差が大きい

最大の違いは「年齢」よりも出発条件

第一言語と第二言語の比較では、しばしば「子どもの脳は柔らかい」「大人はもう遅い」と説明されます。しかし、年齢だけで両者の差を説明することはできません。

第一言語を身につける子どもは、毎日長時間、家族や周囲の人との意味のあるやり取りに参加します。食事、遊び、感情、要求など、言葉と状況が密接に結びついています。一方、大人の英語学習は、一日数十分の教材や週一回のレッスンだけになることもあります。

つまり、比較されているのは「子どもと大人」だけではなく、接触時間、使用の必要性、やり取りの密度、既存知識、社会的環境まで異なる二つの条件です。

年齢が到達度に関係することを示す研究は多くありますが、その境界や原因については議論が続いています。たとえば大規模研究では文法学習能力が高く保たれる時期が従来想定より長い可能性も示されています。一方で、開始年齢だけから個人の最終到達度を予言することはできません。

第二言語には「すでに母語がある」

第二言語学習者は、白紙の状態から始めるわけではありません。すでに第一言語の音、語順、意味の区切り方、会話の進め方を持っています。これは新しい言語を学ぶ際の助けにも、難しさの原因にもなります。

たとえば、日本語では文脈から分かる主語を省略できます。

  • 昨日、映画を見た。
  • I watched a movie yesterday.

英語では通常、文の主語を明示します。日本語の感覚をそのまま移すと、英語でも主語を落とす誤りが起こりやすくなります。これが母語から受ける言語転移の一例です。

しかし、母語は邪魔になるだけではありません。「主語」「過去」「原因」などの概念をすでに理解し、文字や辞書を使い、説明を比較できることは大人の強みです。似た語彙や構造がある言語間では、第一言語の知識が第二言語の理解を助けることもあります。

しゅみすけ(大山俊輔)

大人は子どものように学べないのではありません。すでに持っている母語や知識を使って、子どもとは違う入口から学べるのです。

自然に身につくことと、意識して学ぶこと

第一言語では、子どもは「これは目的格です」と説明されなくても、やり取りの中から規則性を形成していきます。第二言語でも、繰り返し触れて使う中で暗示的に身につく部分があります。

ただし、年長の学習者は明示的学習も利用できます。文法の説明を読み、例文を比較し、間違いの理由を理解する方法です。明示的知識がそのまま瞬時の会話能力になるとは限りませんが、何に注目するかを助け、限られた学習時間を補う可能性があります。

したがって、「自然に触れるだけ」か「文法を勉強するだけ」かの二者択一ではありません。理解できるインプット、実際のやり取り、アウトプット、フィードバック、必要に応じた説明を組み合わせて考えるのが現実的です。

第一言語習得と第二言語習得の出発点と共通点を比較する図

両者には共通点も多い

条件は違っても、第一言語と第二言語には重要な共通点があります。

  • 言語に触れなければ発達しない
  • 意味のあるやり取りが重要である
  • 一度に完成せず、途中の体系を変化させていく
  • 理解できることが、すぐ使えることと同じではない
  • 誤りは単なる失敗ではなく、発達中の規則を示すことがある
  • 語彙、文法、発音、会話運用は相互に関係する

第二言語学習者が作る途中の体系は中間言語と呼ばれます。たとえば過去形を習い始めた人が、すべての動詞に -ed を付けて goed と言うことがあります。これはでたらめではなく、「英語の過去形には-edを付ける」という規則を学習者自身が組み立てた結果です。

第一言語なら必ず完璧、第二言語なら不完全?

この対比も単純すぎます。第一言語話者の語彙、読み書き、文章力にも大きな個人差があります。また「ネイティブ話者」も、場面、地域、世代、共同体によって異なる言葉を使います。

一方、第二言語学習者でも非常に高い能力へ到達する人はいます。成人の第二言語習得を一律に「欠陥のある習得」とみなす見方には批判があり、年齢、学習歴、使用環境、目標などの多様性を見る必要があります。

第二言語の目標も、必ずしも「母語話者と区別できないこと」である必要はありません。仕事で交渉する、旅先で関係を築く、専門情報を読むなど、本人が必要とする機能を果たせるかも重要な到達点です。

大人の英語学習へ活かせる示唆

1.接触量の差を能力不足と混同しない

日本語には何万時間も触れてきたのに、英語への接触が数百時間なら、自由に使える度合いが違うのは自然です。「自分には語学の才能がない」と結論づける前に、接触の量と質を確認する必要があります。

2.母語を禁止せず、比較の道具として使う

日本語との違いを理解することは、英語を日本語へ逐語訳することとは別です。語順や主語の置き方を比較すれば、自分がどこで迷いやすいかを意識できます。

3.知識を実際の使用へつなぐ

説明を理解したら、短い例文を口にし、会話で使い、フィードバックを受けます。知識を得る段階と、時間制限のある会話で使えるようにする段階は分けて考えましょう。

4.間違いを発達の途中として観察する

同じ間違いが出たときは、「また失敗した」ではなく、自分がどんな規則を作っているのかを見ます。修正された表現へ繰り返し触れ、使うことで、中間言語は少しずつ変わります。

しゅみすけ(大山俊輔)

第一言語と同じ環境を再現する必要はありません。大人の理解力を使いながら、英語に触れ、意味を伝え、修正する循環を増やしていきましょう。

よくある質問

大人は第二言語を習得できないのですか?

いいえ。開始年齢は発音や最終到達度などと関係しますが、大人でも第二言語を高い水準まで身につけられます。成果は接触量、使用環境、継続、動機、学習方法など複数の要因に左右されます。

子どものように文法を勉強しない方がよいですか?

そうとは限りません。大人は説明を理解し比較できるため、明示的学習を利用できます。ただし、説明を覚えるだけで会話が自動化されるわけではないので、理解できるインプットや実際の使用と組み合わせることが大切です。

第二言語とは、必ず外国語のことですか?

必ずしも同じではありません。「第二言語」は、その言語が生活する社会で広く使われている場合にも、教室中心で学ぶ外国語の場合にも使われます。研究分野では両方を広く扱うことがあります。

まとめ

第一言語習得と第二言語習得は、共通する学習過程を持ちながら、出発条件が異なります。

  • 第一言語は、人生の初期に生活全体の中で発達する
  • 第二言語は、すでに母語と知識を持つ状態から始まる
  • 第二言語では母語の転移、接触時間、必要性、学び方の影響が大きい
  • 年齢は重要だが、大人は習得できないという意味ではない
  • 両者とも、インプットと意味のあるやり取りの中で体系が変化する

子どもの日本語と大人の英語をそのまま比べれば、大人が不利に見えます。しかし、大人には母語、読み書き、知識、目的意識があります。違いを弱点としてだけ見るのではなく、自分が利用できる資源を理解することが、現実的な英語学習の出発点になります。

参考資料・関連研究

この記事を書いた人
しゅみすけ(大山俊輔)

b わたしの英会話および英語コーチングGRIT/be:RIZE代表。米国MBA取得、外資系企業4社での勤務経験を持ち、これまで多くの大人の英語学習を支援。日本語と英語の処理構造の違いに着目した「英語OS」の考え方をもとに、独学で伸び悩む人の学び直しをサポートしています。

ご相談専門お電話番号

※『すぐに体験してみたい!』派のあなたには、<無料体験レッスン>WEB見た、で特典あり。

無料体験レッスン

※『すぐに体験してみたい!』派のあなたには、<無料体験レッスン>WEB見た、で特典あり。

無料体験レッスン

英語とは・英語の世界の一覧