
英語を勉強していると、「どうして毎回、主語を言わなければいけないの?」「なぜaとtheを選ぶの?」「日本語の順番で考えると英語が出てこない」と感じることがあります。
それは、英語だけに不自然な規則が多いからではありません。日本語と英語が、系統でも構造でもかなり異なる設計を持つ言語だからです。
この記事では、両言語の違いを「語族」「基本語順」「主語」「名詞」「関係を示す語」「音」という6つの観点から比較します。個々の文法事項を暗記する前に全体像を知ると、英語で繰り返しつまずく理由が一本につながります。
先に結論
日本語は、文脈を共有しながら、助詞で関係を示し、動詞を最後に置きやすい言語です。英語は、主語と動詞を早く示し、語順や冠詞によって名詞の役割と情報を明確にする言語です。どちらが優れているのではなく、同じ内容を異なる方法で組み立てています。
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日本語と英語の違いを一覧で比較

| 比較点 | 日本語 | 英語 |
|---|---|---|
| 系統 | 日本語族 | インド・ヨーロッパ語族・ゲルマン語派 |
| 基本語順 | SOV(主語・目的語・動詞) | SVO(主語・動詞・目的語) |
| 主語 | 文脈で省略しやすい | 原則として明示する |
| 名詞 | 冠詞がなく、数を示さない場合も多い | 冠詞・単数複数を頻繁に示す |
| 名詞との関係 | 後ろに助詞を置く | 前に前置詞を置く |
| 音 | 母音を伴う拍が多い | 子音連続と強弱が多い |
これは「日本語はいつでもこう、英語は例外なくこう」という絶対的な表ではありません。会話では英語の主語が省かれることもあり、日本語の語順も情報構造によって動きます。ここでは、学習者が最初に押さえるべき強い傾向を比較しています。
違い1|そもそも別の語族に属している
英語はインド・ヨーロッパ語族のゲルマン語派に属します。ドイツ語やオランダ語とは比較的近く、フランス語、ロシア語、ヒンディー語などとも、さらに古い共通祖先へさかのぼります。
一方、日本語は一般に日本語族に分類され、琉球諸語と系統関係を持ちます。英語由来のカタカナ語が増えても、それは語彙の借用です。日本語の文法的な家系が英語と同じになるわけではありません。
詳しくは、語族とは?世界の言語分類と英語・日本語の位置、インド・ヨーロッパ語族とは?をご覧ください。
違い2|日本語はSOV、英語はSVO
最も見えやすい違いが、主語(S)・目的語(O)・動詞(V)の基本的な並び方です。
| 言語 | 例文 | 順序 |
|---|---|---|
| 日本語 | 私は 本を 読みます。 | S → O → V |
| 英語 | I read a book. | S → V → O |
日本語では、最後の「読みます」に到達して初めて、文全体の出来事が確定します。英語では、I readの段階で「誰が・どうする」が先に提示され、その後ろに対象や場所、時などを足していきます。
英語を日本語の完成文から語順どおりに翻訳しようとすると、動詞が最後まで決まりません。会話で沈黙が長くなる一因です。英語では、まずWho + does what、つまり「誰が・どうする」を小さく出すことが重要です。
しゅみすけ(大山俊輔)
違い3|日本語は主語を省略しやすく、英語は明示しやすい
日本語では、誰の話かが分かっていれば、主語を何度も繰り返しません。
「昨日、新宿に行った。そこで友達に会った。楽しかった。」
この文章に「私は」が一度もなくても、普通は意味を理解できます。日本語では話題と文脈が共有されると、主語だけでなく目的語なども省略できます。
英語では、通常の文に文法上の主語が必要です。
I went to Shinjuku yesterday. I met a friend there. It was fun.
天候を表すIt is raining.や、存在を導入するThere is a problem.のように、日本語訳では具体的な「誰・何」に当たらない要素も文頭に置かれます。英語は「主語の席を空けたままにしにくい」と考えると分かりやすいでしょう。
ただし、日本語を単純に「主語のない言語」と呼ぶのも正確ではありません。日本語では「は」が示す話題と、「が」が関係する主語を区別して考える必要があり、主語と話題の研究には複数の分析があります。
違い4|英語は名詞の「見え方」を細かく示す
日本語の「本を買った」は、一冊か複数冊か、初めて話題に出る本か、聞き手も知っている本かを、名詞の形だけでは必ずしも示しません。
英語では、名詞を口にするときに、その見え方を選ぶ場面が多くあります。
- I bought a book.:一冊の本を買った
- I bought the book.:双方が特定できるその本を買った
- I bought books.:複数の本を買った
a・the・複数形は、日本語の単語と一対一で対応する飾りではありません。話し手がその名詞を「一つの新しいもの」「特定できるもの」「複数のもの」のどれとして提示するかを表します。
さらに英語では可算・不可算の区別も関わります。たとえばinformationはなぜ数えられないのかを考えると、英語が名詞をどのような単位で捉えるかが見えてきます。
違い5|助詞は後ろ、前置詞は前
日本語は名詞の後ろに「は・が・を・に・で・から・まで」などを置き、その名詞の役割を示します。
東京で/友達と/月曜日に
英語では、対応する関係を名詞の前に置くことが多くあります。
in Tokyo / with my friend / on Monday
そのため、日本語は後置詞型、英語は前置詞型と対比できます。この違いは語順全体とも連動します。日本語では、修飾する要素が中心語の前に長く並びやすく、英語では中心となる語を先に出して、前置詞句や関係節を後ろへ伸ばす構造も頻繁に使います。
違い6|日本語は拍、英語は強弱と子音連続が重要
日本語のリズムを考えるときは、音節だけでなくモーラ(拍)が重要です。「にっぽん」は「に・っ・ぽ・ん」と拍を刻みます。日本語の語は、子音と母音の組み合わせを中心に進むものが多く、外来語にも母音が補われます。
たとえば英語のstrikeには子音が連続しますが、日本語では「ストライク」と複数の拍に分けて発音されます。
英語ではすべての音を均等な長さと強さで読むのではなく、内容語に強勢を置き、弱い母音を短く曖昧にしながら文全体のリズムを作ります。日本語の拍を一つずつ当てはめると、母音を加えすぎたり、英語の強弱が平らになったりしやすいのです。
語順だけでなく「情報の出し方」が違う
日本語と英語の違いは、単なる単語の並べ替えではありません。
日本語では、共有された文脈を利用しながら話題を提示し、必要な情報だけを言葉にできます。英語では、主語と動詞を軸に文の骨格を早めに示し、名詞の特定性や数も言語化します。
そのため、日本語の自然な文をそのまま英語へ移すと、英語では「誰が?」「一つ?複数?」「どの本?」「何をした?」という情報が不足することがあります。反対に、英語を一語ずつ日本語へ訳すと、主語や所有者の繰り返しが不自然に感じられることがあります。
これは、言語が人の思考を完全に決めるという意味ではありません。話すときに習慣的に明示する情報と、文脈に任せられる情報が異なるということです。
日本語話者が英語を学ぶときの3つのコツ
1.主語と動詞を先に決める
長い日本語を作る前に、I think、She needs、We decidedのような小さな骨格を出します。詳細は後ろから追加できます。
2.名詞を使うたびに「どんな姿か」を見る
数えられるか、一つか複数か、相手が特定できるかを確認します。a・theを日本語訳で覚えるより、名詞の見せ方として捉える方が応用できます。
3.音をカタカナの拍へ分解しない
綴りの文字を全部同じ強さで読むのではなく、強勢の位置、弱母音、語と語の連結をまとまりで聞きます。
しゅみすけ(大山俊輔)
「日本人が英語を話せない理由」とは分けて考える
言語間の距離は、英語習得を難しくする一因です。しかし、それだけで日本人の英語力を説明することはできません。教育史、英語を使う必要性、練習量、間違いへの不安、学習環境なども関係します。
より広い学習・社会的背景は、日本人はなぜ英語を話せない?、全体の歴史は日本人と英語|歴史・苦手な理由・大人の学び直しで整理しています。
まとめ|難しさの正体は「別の設計図」
日本語と英語は、別の語族に属し、基本語順、主語の扱い、名詞の示し方、助詞・前置詞、音のリズムにも大きな違いがあります。
英語が難しいと感じたとき、それを記憶力や才能の不足だけに結びつける必要はありません。母語で自動化された設計とは異なる仕組みを、後から身につけようとしているのです。
日本語を英単語へ置き換えるのではなく、英語ならどの順番で、何を明示し、どこに強さを置くのかを見る。その視点が、日本語と英語の距離を埋める第一歩になります。










