日本人はなぜ英語を話せない?歴史・言語差・心理・練習から考える

日本人はなぜ英語を話せない?歴史・言語差・心理・練習から考える

「何年も英語を勉強したのに、いざとなると言葉が出てこない」。これは、多くの日本人が抱える悩みです。

しかし、原因を「日本人は語学が苦手だから」「努力が足りないから」と片づけるのは正確ではありません。日本人が英語を話しにくい背景には、英語を学んできた歴史、英語と日本語の構造差、間違いを避けようとする心理、そして知識を会話で使う練習量が重なっています。

この記事では、日本人が英語を話せないと言われる理由を4つの層から整理し、すでに持っている知識を会話へ変える方法まで解説します。

しゅみすけ(大山俊輔)

英語が出てこないのは、頭の中に英語がないからとは限りません。知っている英語を、考え込まずに小さく使う回路がまだ育っていないことも多いのです。

結論:話せない理由は英語力不足だけではない

日本人が英語を話せない4つの理由を示した図

日本人が英語を話せない理由は、一つではありません。大きく分けると次の4つです。

  1. 歴史:英語を「読むための学問」として発達させてきた
  2. 言語差:日本語と英語では語順や省略の仕組みが違う
  3. 心理:正しい英文を作ろうとして、発話前に考えすぎる
  4. 練習:知識を瞬時に取り出し、相手と往復する回数が少ない

したがって解決策も、「もっと難しい単語を覚える」だけではありません。知識を整理し、短い文で口に出し、相手とのやり取りに使う練習が必要です。

理由1:日本では「読む英語」が長く重視されてきた

日本人と英語の関係は、幕末から明治にかけて大きく発展しました。当時、英語を学ぶ重要な目的は、海外の法律、科学、医学、技術などを吸収することでした。外国の本を正確に読む力は、近代化に欠かせなかったのです。

その後も学校英語には、文法を理解し、英文を読み、試験で正解を選ぶ役割が強く求められました。これは歴史的には合理的でしたが、目の前の相手に即座に返事をする訓練とは別の技能です。

日本人と英語教育の変化については、日本人と英語の歴史で江戸時代の蘭学から現代までを詳しく整理しています。

学校英語が無駄だったわけではない

ここで注意したいのは、「学校英語は役に立たない」という話ではないことです。単語、文法、読解は会話を支える大切な土台です。

問題は、土台だけを長く作り、実際にその上を歩く練習が少なかったことです。野球のルールを詳しく知っていても、すぐに打てるとは限りません。英会話にも、知識とは別にリアルタイムで使う練習が必要です。

理由2:日本語と英語では文の組み立て方が違う

日本語と英語は、単語を置く順番が大きく異なります。

  • 日本語:私は/昨日/友達と/映画を/見ました
  • 英語:I / watched / a movie / with my friend / yesterday.

日本語では動詞が文末に来ることが多い一方、英語では主語の直後に動詞を置き、まず「誰がどうした」を示します。日本語の文を最後まで作ってから英語へ翻訳しようとすると、頭の中で大きな並べ替えが起きます。

日本語は主語を省略しやすい

日本語では、文脈から分かる主語や目的語を自然に省略できます。「行ってきます」「もう食べた」「大丈夫です」だけでも会話が成立します。

英語では、多くの場合、主語と動詞を早い段階で決める必要があります。「誰が」「どうする」を選ぶ習慣が弱いと、最初の一語が出ないまま止まりやすくなります。

英語の語順と主語の考え方は、英語の基本・構造とは?でも体系的に解説しています。

理由3:正しい英語を作ろうとして考えすぎる

学校の試験では、一つの誤りが減点につながります。その経験が長いほど、会話でも「時制は正しいか」「冠詞はaかtheか」「もっと自然な単語があるのでは」と確認してから話そうとします。

ところが会話では、考えている間にも相手との時間が進みます。完璧な文を作ろうとするほど沈黙が長くなり、「やっぱり話せない」という感覚が強まります。

「ネイティブのように」は最初の目標ではない

英語を使う目的は、必ずしもネイティブと同じ表現を再現することではありません。まず必要なのは、相手に伝わり、やり取りが続くことです。

例えば「会社から大阪への転勤を命じられた」に相当する難しい単語が出なくても、次のように言えます。

My company asked me to work in Osaka.
会社から大阪で働くように言われました。

辞書に載る一語を知らなくても、知っている基本語を組み合わせれば、出来事の中心は伝えられます。これは逃げではなく、実際の会話で重要な言い換えの力です。基本語と文型を組み合わせる考え方は、「覚えるな、くっつけろ」英語脳OSの記事でも詳しく解説しています。

理由4:知識を「瞬時に使う練習」が少ない

英単語を見て意味が分かることと、必要な瞬間に口から出せることは違います。前者は見て思い出す再認、後者は手がかりなしで取り出す想起です。

さらに会話には、次の処理が同時に必要です。

  • 相手の英語を聞く
  • 何を伝えるか決める
  • 使える単語と文型を取り出す
  • 声に出す
  • 相手の反応を見て言い換える

黙読、単語帳、文法問題だけでは、この往復は十分に自動化されません。「知っているのに話せない」は矛盾ではなく、練習した動作が違うために起こります。

日本人全員が英語を話せないわけではない

もちろん「日本人は英語を話せない」という表現は大きな一般化です。仕事や生活で英語を使う人、留学経験がある人、国内で練習を続けて話せるようになった人も大勢います。

また、話せるかどうかは、文法の正確さだけでは測れません。簡単な英語で用件を伝えられる、聞き返せる、相手と関係を作れることも立派な会話力です。比較すべき相手は「理想のネイティブ」ではなく、以前の自分です。

知っている英語を話せる英語へ変える5つの方法

1.主語と動詞だけを先に言う

最初から長い文を作らず、まず骨格を口にします。

I went there.
そこへ行きました。

I need help.
助けが必要です。

必要なら、そのあとに yesterday、with my friend、because … と情報を足します。

2.日本語を一語ずつ翻訳しない

難しい日本語をそのまま英語にせず、「結局、何が起きたのか」を簡単な日本語へ言い換えます。「延期する」が出なければ We will do it next week. のように説明できます。

3.自分の話を短い英文にする

教材の例文だけでなく、今日したこと、仕事、家族、週末の予定など、自分が実際に話す内容を英語にします。同じ内容を何度も使うと、知識が自分の言葉になります。

4.聞き返しと時間を作る表現を覚える

Could you say that again?
もう一度言っていただけますか。

Let me think.
少し考えさせてください。

How can I say this?
どう言えばよいでしょう。

会話を止めない表現があると、完璧な答えを急いで作る必要がなくなります。

5.人とのやり取りを練習する

独り言や音読は有効ですが、相手が何を言うか分からない状況も必要です。質問に答える、聞き返す、言い直すといった往復を重ねることで、知識が会話の技能へ変わります。

しゅみすけ(大山俊輔)

長い英文を一度で完成させる必要はありません。まず主語と動詞を言い、相手の反応を見ながら情報を足す。英会話は作文の発表ではなく、二人で作るやり取りです。

独学と英会話レッスンはどう使い分ける?

単語や文法の復習、音読、自分の話の準備は独学でもできます。一方、相手の予想外の質問に答える、伝わらない表現を言い換える、緊張の中で話す経験は、人との練習で得やすい部分です。

school.b-cafe.netでは、英語は読めるのに話せない大人が見直したい練習の順番と、大人初心者が話せるようになる5段階で、具体的な練習方法を紹介しています。

独学を続けてから教室へ行くべきか迷っている方は、英語を独学してから英会話教室へ通うべき?も参考にしてください。

よくある質問

日本人の英語力が低いから話せないのですか?

知識量だけが原因ではありません。読解や文法の知識があっても、それを瞬時に取り出し、声にし、相手と往復する練習が少なければ会話では止まります。

文法を勉強せず、会話だけすればよいですか?

会話だけでよいとは限りません。文法は短時間で意味を組み立てる助けになります。ただし、理解した文法を自分の短い文で使う練習までつなげることが大切です。

何歳からでも英語を話せるようになりますか?

大人でも変えられます。大人には、目的を理解し、自分に必要な場面へ学習を絞れる強みがあります。短い発話と実際のやり取りを継続することが重要です。

留学しないと英語は話せませんか?

留学は大量の接触機会を作れますが、必須ではありません。国内でも、音読、独り言、オンラインや対面の会話を組み合わせ、発話と往復の回数を確保できます。

まとめ

日本人が英語を話せないと言われる背景には、読む英語を重視してきた歴史、日本語との構造差、間違いを恐れる心理、そして知識を会話で使う練習の不足があります。

これは、日本人に英語の才能がないという話ではありません。学校で得た知識はすでに土台になっています。そこへ、主語と動詞から短く話す練習、簡単な言い換え、相手とのやり取りを加えれば、知っている英語を「使える英語」へ変えていけます。具体的な学び直しの順番は、大人のやり直し英語とは?で整理しています。

日本人の英語学習を歴史・苦手な理由・女性の学び・大人の学び直しから見渡すには、日本人と英語|歴史・苦手な理由・大人の学び直しをご覧ください。

この記事を書いた人
しゅみすけ(大山俊輔)

b わたしの英会話および英語コーチングGRIT/be:RIZE代表。米国MBA取得、外資系企業4社での勤務経験を持ち、これまで多くの大人の英語学習を支援。日本語と英語の処理構造の違いに着目した「英語OS」の考え方をもとに、独学で伸び悩む人の学び直しをサポートしています。

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