英語では、I want to learn English.やI enjoy reading books.のように、一つの文に動詞らしい語が二つ以上並びます。
「英語の文には動詞が一つ」と習ったのに、なぜwantとlearn、enjoyとreadingを一緒に置けるのでしょうか。
答えは、すべてが同じ資格を持つ動詞ではないからです。英語は、文の時間と主語を背負う中心動詞を決め、ほかの動詞をto不定詞・動名詞・分詞という「文の部品」へ変えて、複数の出来事を一文へ組み込みます。
この記事では、学校文法で「準動詞」、言語学で「非定形動詞」と呼ばれる仕組みを、日本語との違いから解説します。
しゅみすけ(大山俊輔)
一文に動詞が何個あるかではなく、どれが時制を持って文を動かしているかを見るのがポイントです。
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結論:文の中心動詞は一つでも、出来事は複数入れられる
次の文を見てみましょう。I enjoy reading books to relax.動作を連想させる語はenjoy、reading、relaxの三つです。しかし、文の中心として主語Iと結びつき、現在という時間を示しているのはenjoyだけです。
私はリラックスするために本を読むことを楽しみます。
- enjoy:主語・時制と結びつく中心動詞
- reading books:「本を読むこと」という名詞的な部品
- to relax:「リラックスするため」という目的を加える部品
定形動詞と非定形動詞は何が違う?
主語や時制に応じて形を決め、文や節の中心になる動詞を定形動詞(finite verb)といいます。それに対し、to不定詞・動名詞・分詞のように、主語や時制を直接背負わない形を非定形動詞(non-finite verb)といいます。 日本の学校文法では、これらをまとめて「準動詞」と呼ぶこともあります。| 比較 | 定形動詞 | 非定形動詞 |
|---|---|---|
| 主な役割 | 文・節の中心になる | 文の部品として働く |
| 時制 | 現在・過去などを示す | 単独では文の時制を決めない |
| 主語との一致 | 三単現の-sなどが現れる | 人称によって形を変えない |
| 代表形 | wants / wanted | to want / wanting / wanted |
一つの節に中心動詞を二つ置くと、役割が衝突する
英語は語順によって文の骨格を示す言語です。そのため、一つの節に同じ資格の動詞を二つ並べると、どちらが文の中心なのか判別できません。× I want learn English.wantとlearnを両方そのまま置くと、主語Iに対して二つの中心動詞が競合します。そこでlearnをto不定詞へ変えます。
○ I want to learn English.これでwantが中心、to learn Englishが「何を望むのか」という内容になります。 二つとも中心動詞として述べたいなら、接続詞などで節を分けます。
I want to learn English, and I study every day.ここではwantとstudyがそれぞれ別の節の中心です。英語の句と節の違いが重要になるのは、この「中心動詞を持つまとまりかどうか」を見分けるためです。
私は英語を学びたいので、毎日勉強します。
to不定詞:出来事をまだ実現していない方向として置く
to不定詞は、動作を完成した事実としてではなく、そこへ向かう方向・目的・可能性として扱いやすい形です。- I hope to travel.:旅行することを望む
- She came to help us.:私たちを助けるために来た
- I need something to drink.:何か飲むものが必要だ
動名詞:出来事をひとまとまりの経験・活動として置く
動名詞は、動作を「〜すること」という名詞的なまとまりとして扱います。- Reading helps me relax.:読むことは私をリラックスさせる
- I enjoy reading.:私は読むことを楽しむ
- She is good at cooking.:彼女は料理することが得意だ
分詞:出来事を人・物の姿や状態として置く
分詞は、動作を名詞の説明へ変えます。- the girl reading a book:本を読んでいる女の子
- a broken window:割れた窓
- He came running.:彼は走ってやって来た
文の中心は1つ、出来事は複数という階層
英語の文は、単語を平らに横へ並べたものではありません。中心動詞を軸に、その周囲へ小さな出来事を階層的に組み込みます。
She wants to travel.表面にはwantsとtravelがありますが、骨格は次のようになっています。
彼女は旅行したい。
- 中心:彼女が「望む」
- 埋め込まれた内容:「旅行する」
日本語は動詞の形を保ったまま出来事をつなぎやすい
日本語でも「英語を学びたい」「本を読むことを楽しむ」「走っている人」のように、複数の出来事を一文へ入れます。ただし、役割の示し方が英語とは異なります。| 日本語 | 英語 |
|---|---|
| 学びたい | want to learn |
| 読むことを楽しむ | enjoy reading |
| 走っている人 | the person running |
「動詞は一文に一つ」は半分正しく、半分誤解
初心者向けの「一文に動詞は一つ」という説明は、英文の骨格を見つけるうえでは役立ちます。ただし、正確には次のように考えるべきです。一つの節に、時制を持つ中心動詞は原則一つ。動詞由来の部品は複数置ける。また、助動詞と本動詞の組み合わせは一つの動詞句を作ります。
She can speak English.canとspeakを二つの独立した中心動詞と考えるのではなく、モダリティを示す助動詞と内容を示す本動詞のまとまりとして捉えます。詳しくは英語はなぜ助動詞を使うのかをご覧ください。
しゅみすけ(大山俊輔)
英文が長くなったら、まず時制を持つ中心動詞を探し、残りの動詞らしい形がどの語の部品になっているかを見ると構造がほどけます。
具体的な使い分けと例文は、be:RIZEのto不定詞とは?、不定詞と動名詞の使い分けで確認できます。
まとめ:英語は出来事を変形し、一文の中へ埋め込む
英語で一文に動詞がいくつも見えるのは、すべてが文の中心として並んでいるからではありません。- 定形動詞が主語・時制と結びつき、文や節の中心になる
- to不定詞は、出来事を方向・目的・内容として組み込む
- 動名詞は、出来事を活動・経験のまとまりとして扱う
- 分詞は、出来事を人・物の姿や状態へ変える
- 非定形動詞によって、一つの中心の周囲へ複数の出来事を階層化できる
動詞の動きが主語で完結するか、目的語へ届くかという違いは、英語はなぜ自動詞・他動詞を分ける?目的語へ「動きが届く」仕組みで日本語の「が・を」と比較しながら解説しています。
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