
英語のpreposition(前置詞)は、その名のとおり名詞の「前」に置かれます。in the box、on the table、to the stationのように、場所や方向などの関係を示す語が先に現れ、そのあとに対象となる名詞が続きます。
一方、日本語では「箱の中に」「テーブルの上に」「駅へ」のように、まず対象を示し、そのあとから助詞などで関係を添えることが多くなります。この違いは、単なる単語の並べ方ではありません。英語と日本語が、聞き手に情報を渡す順番の違いをよく表しています。
この記事では、個々の前置詞の意味を暗記するのではなく、なぜ英語には前置詞という仕組みがあり、なぜ名詞の前に置かれるのかを、日本語との比較から見ていきます。
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結論:英語の前置詞は「名詞との関係」を先に予告する
英語の前置詞を理解する鍵は、関係を先に示し、そのあとに関係の相手を置くと考えることです。
- in the box:内側という関係 → 箱
- on the table:接触・支持という関係 → テーブル
- from Tokyo:起点という関係 → 東京
- with my friend:同伴という関係 → 友人
前置詞を聞いた時点で、聞き手は「このあとに場所・方向・起点・相手などを表す名詞が来る」と予測できます。つまり前置詞は、後ろの名詞を文のほかの要素へ接続する小さな案内標識なのです。

しゅみすけ(大山俊輔)
「前置詞+名詞」は、ひとまとまりの関係情報になる
前置詞は通常、後ろに名詞や代名詞などを伴います。inだけでは「何の中か」が分からず、in the roomとなって初めて関係が完成します。このまとまりは前置詞句と呼ばれます。
前置詞句は、文の中で主に二つの働きをします。
| 働き | 例 | 何を説明するか |
|---|---|---|
| 副詞的 | She works in Tokyo. | worksが「どこで」行われるか |
| 形容詞的 | the woman in the red coat | womanが「どの女性」か |
この点は、英語の句と節の違いや、名詞の後ろから説明を足す仕組みにもつながっています。前置詞句は、名詞を含みながら全体で一つの説明部品になるのです。
日本語は「対象を出してから関係を示す」
英語と日本語を比べると、関係を示す語の置き場所がほぼ反対になります。
| 伝える内容 | 英語 | 日本語 |
|---|---|---|
| 箱の中 | in the box | 箱の中 |
| テーブルの上 | on the table | テーブルの上 |
| 駅へ | to the station | 駅へ |
| 友人と | with my friend | 友人と |
| 東京から | from Tokyo | 東京から |
日本語では名詞の後ろに助詞を置くため、「後置詞的な言語」と説明されることがあります。ただし、「の中」「の上」のように名詞と助詞を組み合わせて関係を表す場合もあり、英語の前置詞と日本語の助詞が常に一語対一語で対応するわけではありません。
大切なのは、英語は関係 → 対象、日本語はおおむね対象 → 関係という順番を好む、と捉えることです。
なぜ英語では「関係を先に示す」必要があるのか
現代英語は、単語の形の変化よりも、語順と機能語によって単語同士の関係を示す傾向が強い言語です。名詞の形だけを見ても、それが場所・方向・起点・手段のどれを表すのかは分からないことが多いため、in、to、from、byなどが関係を明示します。
古い英語には、現代英語より豊かな格変化があり、名詞やその周辺語の形でも役割を示していました。しかし、長い歴史の中で語尾の区別の多くが弱まり、現代英語では語順や前置詞が関係を示す重要な手段になっています。
これは、主語や目的語の役割を語順で示すという英語の基本構造とも共通しています。英語では、単語を「どの位置に置くか」が文法上の大きな意味を持つのです。
前置詞は、空間から時間・原因・抽象関係へ広がった
前置詞の多くは、もともと分かりやすい空間関係を表します。しかし人間は、目に見えない時間や状態も空間のように捉えます。
- in the room(部屋の内部)→ in August(8月という時間の範囲内)
- at the station(地点)→ at noon(時点)
- from Tokyo(空間的な起点)→ from Monday(時間的な起点)
- under the table(物理的な下)→ under pressure(圧力下の状態)
そのため、前置詞には一つの日本語訳だけでは収まらない用法があります。単語帳で「in=〜の中に」と固定するより、どのような関係を描いているかを見るほうが、用法の広がりを理解しやすくなります。
日本語訳が同じでも、英語の関係の捉え方は違う
たとえば日本語の「〜で」は、場所にも手段にも材料にも使えます。
- 東京で働く → work in Tokyo
- 電車で行く → go by train
- ナイフで切る → cut it with a knife
- 木で作られている → be made of wood
日本語では同じ「で」で言える内容でも、英語は場所・手段・道具・材料という関係を区別します。逆に、一つの英語前置詞が複数の日本語表現に訳されることもあります。
つまり前置詞を選ぶときは、日本語の助詞を置き換えるのではなく、二つのものの間にどんな関係を設定したいのかを考える必要があります。
しゅみすけ(大山俊輔)
前置詞は、英語の「先に枠を示す」性質の一部
英語では前置詞だけでなく、冠詞や助動詞なども、後ろに来る内容をある程度予告します。aやtheは名詞の登場を、助動詞は動詞の登場を、前置詞は関係の相手となる名詞の登場を知らせます。
これは英語が品詞によって単語の役割を組み立てる仕組みとも関係します。聞き手は前から順に、次に来る部品を予測しながら文を処理できます。
日本語は、助詞や述語が後ろに来ることで、それまでに出た内容の関係を確定させることが多い言語です。英語と日本語では、同じ場面を伝えるときも、情報を確定していく順序が異なるのです。
まとめ:前置詞を見ると、英語の情報設計が見えてくる
英語の前置詞は、名詞の前に置かれ、その名詞が文中のほかの要素とどのような関係にあるかを先に示す語です。
- 英語は「関係 → 対象」の順で前置詞句を作る
- 日本語は「対象 → 助詞などによる関係」の順になりやすい
- 現代英語では、語順と前置詞が名詞同士の関係を明示する
- 空間的な関係は、時間・状態・原因などの抽象関係にも広がる
- 日本語の助詞と英語の前置詞は、一対一では対応しない
前置詞は小さな語ですが、その位置には、英語が情報を前から組み立てる方法が凝縮されています。前置詞を「訳語の一覧」ではなく「関係を予告する装置」として見ると、英語という言語の輪郭がより鮮明になります。
個々の前置詞のコアイメージや使い分けを学びたい方は、be:RIZEの英語の前置詞一覧|コアイメージ・意味・使い分けへ。前置詞を含む定型表現をまとめて確認したい方は、b-cafeの前置詞を使った英熟語・フレーズ一覧もご覧ください。
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