
prior to は「〜より前に」「〜に先立って」という意味です。意味だけなら before とよく似ていますが、prior to にはフォーマルで事務的な響きがあります。そのため、契約書、案内、社内連絡、医療上の説明などでよく使われます。
特に大切なのが、prior to の後ろには名詞だけでなく doing(動名詞)も置けることです。一方、文をそのまま続けることはできません。この記事では、beforeとの違いから自然な使い方、よくある間違いまで整理します。
- 意味:〜より前に、〜に先立って
- ニュアンス:beforeよりフォーマルで、規則・手続き・書面と相性がよい
- 形:prior to + 名詞/doing
- 会話で簡単に言いたいときは before で十分
Contents
prior toの意味とニュアンス
prior to は、ある出来事や時点を基準にして「それより前」を表します。
- prior to the meeting:会議の前に
- prior to departure:出発前に
- prior to signing the contract:契約書に署名する前に
prior は「前の」「先の」という意味を持つ形容詞です。たとえば prior experience は「以前の経験」、prior approval は「事前の承認」です。そこに前置詞の to が続き、「ある時点に対して先である」ことから「〜より前に」という関係を表します。
ただし、日常会話で単に「〜の前に」と言いたいだけなら before のほうが普通です。prior to を使うと、時間の前後関係を正確に、少し改まって示す感じになります。
しゅみすけ(大山俊輔)
prior toの基本的な使い方
prior to + 名詞
もっとも基本的なのは、後ろに出来事・時点を表す名詞を置く形です。
Please arrive 15 minutes prior to your appointment.
予約時刻の15分前にお越しください。
All documents must be submitted prior to the deadline.
すべての書類は締め切り前に提出しなければなりません。
I had never traveled abroad prior to that trip.
その旅行より前に海外へ行ったことは一度もありませんでした。
1つ目と2つ目は、クリニックや会社からの案内にぴったりの言い方です。3つ目のように過去を振り返って「その時点より前」と説明することもできます。
prior to doing:〜する前に
動作を続けたいときは、動詞を -ing形にします。
Please read the terms carefully prior to signing the agreement.
契約書に署名する前に、条件をよく読んでください。
Passengers should check their passports prior to leaving home.
乗客は家を出る前にパスポートを確認しておくべきです。
We talked about our budget prior to moving in together.
私たちは一緒に暮らし始める前に、予算について話し合いました。
ここでの to は不定詞のtoではなく前置詞です。前置詞の後ろに動作を置くときは名詞の働きをする doing にするため、prior to sign ではなく prior to signing となります。
beforeとprior toの違い

| 表現 | 主なニュアンス | 後ろに置ける形 | よく使う場面 |
|---|---|---|---|
| before | 中立的で日常的 | 名詞・doing・文 | 会話から文章まで幅広い |
| prior to | フォーマルで事務的 | 名詞・doing | 規則、案内、契約、報告 |
次の2文は、意味としてはほぼ同じです。
Call me before the meeting.
会議の前に電話して。
Please contact me prior to the meeting.
会議に先立ってご連絡ください。
before の文は同僚や友人との会話に自然です。prior to の文は業務メールや正式な案内に向いています。prior to のほうが正しい、あるいは知的ということではありません。場面に合う自然さが違うだけです。
beforeは後ろに文も置ける
before は接続詞として、後ろに「主語+動詞」の文を続けられます。
Before we started the meeting, I checked the latest figures.
会議を始める前に、私は最新の数字を確認しました。
一方、次は不自然です。
× Prior to we started the meeting, …
prior to の後ろには名詞相当の形が必要なので、次のように直します。
Prior to starting the meeting, I checked the latest figures.
会議を始める前に、私は最新の数字を確認しました。
もちろん、会話なら最初の Before we started … のほうがすっきりします。
場面別に見るprior toの自然な例文
仕事・手続き
You need your manager’s approval prior to making the purchase.
その購入をする前に、上司の承認が必要です。
The team will run a final security check prior to launch.
チームは公開に先立って最終的なセキュリティ確認を行います。
She had no sales experience prior to joining the company.
彼女には入社前、営業経験がありませんでした。
旅行・施設の案内
Online check-in opens 24 hours prior to departure.
オンラインチェックインは出発の24時間前に始まります。
Please turn off all electronic devices prior to takeoff.
離陸前にすべての電子機器の電源をお切りください。
医療・暮らし
Do not eat for eight hours prior to the test.
検査前の8時間は食事をしないでください。
Prior to adopting the dog, we discussed who would walk him each morning.
その犬を迎える前に、毎朝誰が散歩をするか話し合いました。
医療上の指示では、開始時点を曖昧にしないために prior to がよく合います。一方、家庭で家族に「出かける前に食べてね」と言うなら、Eat before you leave. のように before を使うのが自然です。
priorを使う関連表現
prior notice:事前の通知
The schedule may change without prior notice.
スケジュールは事前の通知なく変更される場合があります。
prior approval:事前の承認
Expenses over $500 require prior approval.
500ドルを超える経費には事前承認が必要です。
prior experience:以前の経験
No prior experience is required.
経験は問いません。
この prior は名詞の前に置かれ、「それ以前の」という形容詞として働いています。prior to とセットで覚えると、求人や規約で見かける prior も理解しやすくなります。
似た表現との違い
in advance:前もって
in advance は「前もって準備する・知らせる」という意識が強い表現です。
Please book your table in advance.
前もって席を予約してください。
prior to は「どの時点より前か」を示しやすく、in advance は早めに行動することに焦点があります。
ahead of:〜より先に、〜を前にして
ahead of は予定より早いことや、出来事が間近に迫っていることにも使われます。
We finished the project ahead of schedule.
私たちは予定より早くプロジェクトを終えました。
prior to schedule とは通常言いません。「予定より早く」なら ahead of schedule が定番です。
previousとprior
previous は「1つ前の」「以前の」という意味で、the previous day(前日)、my previous job(前職)のようによく使います。prior も「以前の」ですが、より改まった響きがあり、承認・通知・経験などの事務的な語と特に相性がよい表現です。
日本人が間違えやすいポイント
prior toの後ろに動詞の原形を置かない
× prior to sign the contract
○ prior to signing the contract
to を見ると不定詞を連想しやすいのですが、ここでは前置詞です。「prior to + 名詞」と考え、動作なら doing にしましょう。
prior toの後ろに文をそのまま続けない
× prior to the train leaves
○ prior to the train’s departure
○ before the train leaves
主語と動詞をそのまま使いたいなら before が簡単です。
prior beforeと重ねない
× prior before the meeting
prior to と before はどちらも「〜より前」を表すため、重ねる必要はありません。prior to the meeting または before the meeting のどちらかにします。
日常会話で無理にprior toを使わない
家族に Wash your hands prior to dinner. と言っても文法的には通じますが、家庭内の会話としてはかなり堅く聞こえます。普通は次で十分です。
Wash your hands before dinner.
夕食の前に手を洗ってね。
しゅみすけ(大山俊輔)
中学英語で簡単に言い換えるならbefore
prior to のもっとも実用的な言い換えは before です。
- prior to departure → before you leave
- prior to making a decision → before you decide
- prior to the meeting → before the meeting
before なら後ろに文を続けられるので、知っている単語だけで具体的に言いやすくなります。英会話では、難しい形を思い出すことより、before + 主語 + 動詞 で確実に伝えるほうが大切です。
まとめ:prior toはフォーマルな「〜より前に」
prior to は「〜より前に」「〜に先立って」を表し、before よりフォーマルで事務的な表現です。契約、規則、業務連絡、施設案内などで特によく使われます。
- prior to + 名詞:prior to the meeting
- prior to + doing:prior to signing
- 「主語+動詞」を続けるなら before を使う
- 会話で迷ったら before に言い換えればよい
ほかの表現も意味だけでなく、形や使う場面まで理解したい方は、英熟語・定型表現の総合ガイドもあわせてご覧ください。








