
「愛されるには、どうすればいい?」——恋愛で悩むと、私たちはついそう考えます。けれど、社会心理学者エーリッヒ・フロム(Erich Fromm)は、問いをひっくり返しました。大切なのは「愛される方法」よりも、自分が愛する力を育てることだ、と。
代表作『愛するということ(The Art of Loving)』で語られる愛は、幸運な人だけが出会える感情ではありません。配慮し、責任をもち、相手を尊重し、知ろうとする——練習を重ねて身につける「技術」です。今回は、恋愛や結婚だけでなく、自分らしい人生や自由にもつながるフロムの英語の名言を7つ紹介します。
Contents
エーリッヒ・フロムとは?
エーリッヒ・フロム(1900–1980)は、ドイツ生まれの社会心理学者・精神分析家・思想家です。ナチスの台頭を逃れてアメリカへ渡り、人が自由を恐れて権威に従う心理を『自由からの逃走』で分析しました。
その後、『愛するということ』『生きるということ』などを通じて、消費や所有に偏る社会のなかで、人がどうすれば愛し、創造し、生き生きと生きられるかを問い続けました。心理学の先達とあわせて読みたい方は、フロイトの名言と英語表現もどうぞ。
エーリッヒ・フロムの名言7選
1. 愛は、受け身の感情ではなく行動
Love is an activity, not a passive affect.
Erich Fromm, The Art of Loving
和訳:愛は活動であって、受け身の感情ではない。
フロムが愛について示した、もっとも大切な転換です。「好き」という気持ちが起きるのを待つだけではなく、相手を理解し、支え、関係を育てる行動そのものが愛だと考えました。
英語ポイント:activity は「活動・能動的な営み」。passive は「受け身の」です。affect は心理学で感情・情動を表します。
かんたん英語:Love is something we do.(愛は、私たちがすることです。)
2. 愛とは、相手の命と成長を気にかけること
Love is the active concern for the life and the growth of that which we love.
Erich Fromm, The Art of Loving
和訳:愛とは、愛するものの命と成長を積極的に気にかけることだ。
「大切だから自分のものにしたい」のではなく、その人がその人らしく成長することを願う。フロムのいう愛には、支配ではなく配慮があります。恋愛にも、家族や友情にも通じる言葉です。
英語ポイント:concern for … は「〜への配慮・気づかい」。ここでの active は、思うだけでなく行動を伴うことを強調します。
かんたん英語:Love helps life grow.(愛は命の成長を助けます。)
3. 尊重とは、相手がその人らしく育つことを願うこと
Respect means the concern that the other person should grow and unfold as he is.
Erich Fromm, The Art of Loving
和訳:尊重とは、相手がその人らしく成長し、花開くことを願うことだ。
相手を「理想の恋人」や「望ましい家族」に変えようとするのではなく、その人自身を見ること。unfold には、つぼみや折りたたまれたものが開くような美しいイメージがあります。
英語ポイント:as he is は「ありのままのその人として」。現代英語なら性別を限定しない as they are と言うこともできます。
かんたん英語:Respect lets people be themselves.(尊重は、人が自分らしくいることを許します。)
4. ひとりでいられる力が、愛する力を支える
The ability to be alone is the condition for the ability to love.
Erich Fromm, The Art of Loving
和訳:ひとりでいられる力は、愛する力の条件である。
孤独が怖くて誰かにしがみつくことと、自立した二人が結びつくことは違います。ひとりの時間にも自分を保てるからこそ、相手を「不安を埋める道具」にせず、自由な人として愛せるのです。
英語ポイント:ability to … は「〜する能力」。condition for … は「〜の条件」です。
かんたん英語:We need to stand alone before we can love well.(上手に愛するには、まず一人で立てることが必要です。)

5. 持っているものを失ったら、私は誰なのか
If I am what I have and if what I have is lost, who then am I?
Erich Fromm, To Have or To Be?
和訳:もし私が「持っているもの」でできていて、それを失ったなら、私はいったい誰なのだろう。
肩書、貯金、家、服、フォロワー数。持ち物が自分の価値になってしまうと、失う恐怖から自由になれません。フロムは「持つこと」だけでなく、愛する、分かち合う、創るという「在ること」に目を向けました。
英語ポイント:what I have は「私が持つもの」。who then am I? は倒置を使った、強い問いかけです。
かんたん英語:I am more than the things I own.(私は、持ち物以上の存在です。)
6. 人生の大仕事は、本当の自分を生み出すこと
Man’s main task in life is to give birth to himself.
Erich Fromm, Man for Himself
和訳:人生における人間の主な仕事は、自分自身を生み出すことだ。
「自分探し」は、どこかに完成品の自分を見つけることではありません。選択し、行動し、失敗しながら、まだ形になっていない可能性を現実の自分へ育てること。年齢にかかわらず、新しい自分は生み出せます。
英語ポイント:give birth to … は本来「〜を産む」。ここでは「新しいものを生み出す」という比喩です。
かんたん英語:Our job is to become ourselves.(私たちの仕事は、自分自身になることです。)
7. 愛は、人の成長への扉を開く鍵
Love is the main key to open the doors to the “growth” of man.
Erich Fromm, “Credo”
和訳:愛は、人間の「成長」への扉を開く、もっとも大切な鍵である。
フロムの信条をまとめた「Credo」にある言葉です。愛は依存でも自己犠牲でもなく、自分と他者がより人間らしく成長する力。恋愛だけに閉じず、人への向き合い方そのものとして愛を捉えています。
英語ポイント:key to … は「〜への鍵」。open the door to … は「〜への道を開く」という定番表現です。
かんたん英語:Love opens the way to growth.(愛は成長への道を開きます。)
フロムの名言から学ぶ、愛と人生の英語
フロムの言葉を貫くのは、愛も人生も「もらうもの」ではなく、自分から働きかけて育てるものだという考えです。
- Love is something we do. — 愛は行動
- Let people be themselves. — 相手をその人らしくさせる
- I am more than what I own. — 私の価値は持ち物だけではない
短い英語でも、フロムの思想の芯は表せます。恋愛や結婚で相手を変えたくなったとき、ひとりでいるのが怖くなったとき、「私はいま愛を待っているのか、それとも愛を実践しているのか」と問い直してみてください。
恋愛と結婚をめぐる、機知に富んだ別の角度の言葉なら、ジェーン・オースティンの名言もおすすめです。
出典・参考資料
- Erich Fromm, The Art of Loving(Open Road Media)
- Erich Fromm, To Have or To Be?(Open Road Media)
- Erich Fromm, “Erich Fromm’s Credo”(International Erich Fromm Society)
- Autobiographical Highlights(International Erich Fromm Society)
※英語原文は各著作・公式資料に基づき、和訳は文脈に合わせた当サイト独自訳です。










