
日本語では、自分が寒さを感じているときも、部屋や外の気温が低いときも、ひとことで「寒い」と言えます。ところが英語では、I’m cold. と It’s cold. を使い分けます。
どちらも日本語にすれば「寒い」なのに、なぜ主語が I と it に変わるのでしょうか。
しゅみすけ(大山俊輔)
Contents
結論:I’m cold.は自分の体感、It’s cold.は周囲の寒さ
| 英語 | 焦点 | 自然な日本語 |
|---|---|---|
| I’m cold. | 話し手の身体が寒さを感じている | 私は寒い/寒く感じる |
| It’s cold. | 天気・部屋・その場の環境が寒い | 寒いね/今日は寒い |
たとえば、冬の屋外で二人とも震えているなら、It’s cold. と言えば「この場は寒いね」という状況の共有になります。一方、暖房の効いた部屋で自分だけ寒く感じるなら、I’m cold. のほうが意図に合います。
I’m cold. Can you turn up the heat?
寒いんだけど、暖房を強くしてくれる?
It’s cold today. Don’t forget your coat.
今日は寒いよ。コートを忘れないでね。

I’m cold.が見せるのは「私の身体の状態」
I’m cold. の主語は I です。英語では、形容詞 cold を be動詞の後ろに置き、「私=coldな状態」として話し手の体感を説明します。
ここでの cold は、温度計が示す客観的な数値ではありません。同じ部屋にいても、人によって感じ方が違うことがあります。
A: Are you okay?
大丈夫?B: I’m a little cold.
ちょっと寒いの。
周囲の人が快適でも、自分が寒く感じていれば I’m cold. と言えます。冷房が効きすぎたオフィス、濡れた服を着ているとき、体調がすぐれないときなどにも使えます。
It’s cold.のitは何を指しているの?
It’s cold. の it は、直前に出てきた特定の物を指すとは限りません。天気・時刻・明るさ・距離など、その場の状況を述べる文で置かれる it です。学校文法では「非人称のit」と呼ばれることがあります。
日本語なら主語を言わずに「寒い」「雨だ」「もう遅い」と言えます。しかし英語の文は、原則として「誰・何について述べるか」を示す主語の位置を必要とします。特定の人物や物を主役にしない天気や環境の話では、it がその位置を受け持ちます。
- It’s cold.:寒い
- It’s raining.:雨が降っている
- It’s dark.:暗い
- It’s late.:もう遅い
- It’s five o’clock.:5時です
この it を、日本語の「それ」に無理に置き換える必要はありません。ここでは学習者が理解しやすい見方として、その場の状況を文にするための主語と捉えると使いやすくなります。
しゅみすけ(大山俊輔)
同じ場面でI’m cold.とIt’s cold.は両方使える?
使えます。ただし、伝える内容が少し変わります。
たとえば、友人と冬の街を歩いている場面を考えてみましょう。
It’s really cold today.
今日は本当に寒いね。
これは、二人がいる外の環境について述べています。相手も同じ寒さを感じているという共有のニュアンスが生まれやすい表現です。
I’m really cold.
私、本当に寒い。
こちらは自分の身体感覚を伝えます。「店に入りたい」「上着を借りたい」など、次の行動を求める前触れにもなります。
I’m really cold. Can we go inside?
すごく寒い。中に入らない?
It’s cold. は場面の描写、I’m cold. は自分の状態の報告、と考えると会話で選びやすくなります。
It’s cold in here.とI’m cold in here.の違い
in here を加えると、どの場所について話しているかが明確になります。
- It’s cold in here.:ここ(この部屋)は寒い
- I’m cold in here.:私はここにいると寒い
前者は部屋の環境を評価し、後者はその部屋にいる自分の感覚を伝えます。実際の会話では、どちらも暖房の調整を頼むきっかけになり得ますが、焦点が異なります。
It’s cold in here. Is the heater on?
ここ寒いね。暖房はついてる?
I’m cold in here. Do you mind if I close the window?
ここにいると寒いんだけど、窓を閉めてもいい?
I’m cold.とI have a cold.を混同しない
日本人学習者が注意したいのが、I’m cold. と I have a cold. の違いです。
| 英語 | 意味 |
|---|---|
| I’m cold. | 私は寒い/寒さを感じている |
| I have a cold. | 私は風邪をひいている |
a cold は「風邪」という可算名詞です。そのため a がつきます。
I’m cold, but I don’t have a cold.
寒いけれど、風邪をひいているわけではありません。
なお、体調について「寒気がする」と言いたい場合は、I have chills. や I’ve got the chills. なども使われます。
hot・warm・coolでも「体感」と「周囲」を分けられる
この考え方は cold だけの特別なルールではありません。
I’m hot./It’s hot.
- I’m hot.:私は暑く感じている
- It’s hot.:天気・部屋・その場が暑い
I’m hot after running.
走った後で暑い。
外気温が低くても、運動直後なら自分は暑く感じられます。そこで主語は I になります。
I’m warm./It’s warm.
- I’m warm now.:私はもう暖まった
- It’s warm in this room.:この部屋は暖かい
I’m cool.には別の意味もある
I’m cool. は文脈によって「私は涼しく感じる」だけでなく、「私は大丈夫」「私はかっこいい」といった意味にもなります。単純に「涼しい」と言いたい場面では、周囲について It’s cool. と言うほうが分かりやすいことがあります。
日本語ではなぜ主語が見えにくいの?
日本語の「寒い」は、状況が分かっていれば主語を置かなくても成立します。
寒いね。
この一言は、文脈によって次のどちらにもなります。
- 私は寒く感じる
- 今日は/ここは寒い
日本語では、話し手と聞き手が共有している状況から、誰の感覚か、どの場所の状態かを補えます。一方、英語では文を作る早い段階で主語を置くため、自分を話題にするのか、周囲の状況を話題にするのかを形に表します。
これは「英語のほうが論理的」「日本語のほうが曖昧」という優劣の話ではありません。二つの言語が、会話でどの情報を言葉に出しやすいかの違いです。
会話で迷ったときの選び方
「寒い」と言いたいときは、次の二つの質問で選べます。
- 自分の身体の感覚を伝えたい? → I’m cold.
- 天気や部屋など、周囲の状態を伝えたい? → It’s cold.
相手に何かを頼みたいときは、自分の体感を言ってから依頼へつなぐと自然です。
I’m cold. Could you close the window?
寒いんだけど、窓を閉めてもらえる?
スモールトークとして天気を共有するなら、It’s cold.がよく合います。
It’s cold this morning, isn’t it?
今朝は寒いですね。
しゅみすけ(大山俊輔)
まとめ:日本語の「寒い」を英語は二つの焦点に分ける
I’m cold. と It’s cold. は、どちらも日本語では「寒い」と訳せます。しかし、英語が見せる景色は同じではありません。
- I’m cold.:自分の身体が寒さを感じている
- It’s cold.:天気・部屋・周囲の状況が寒い
- I have a cold.:風邪をひいている
- Iかitかは「体感」と「周囲」のどちらへ焦点を当てるかで選ぶ
英語で主語が必要になる基本的な仕組みは、既存記事の英語はなぜ主語が必要?日本語では省略できるのにで詳しく解説しています。
温度が変化していく場面を表したい方は、「寒くなる」は英語で?get colder・get cold・cool downの違いも参考にしてください。工房1の個別記事は、英語の特徴とは?日本語との違いを語順・主語・単語・音から解説から一覧で確認できます。
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