
ハンス・セリエ(Hans Selye)は、ストレスを生理学の研究対象として体系化した研究者です。1936年に「全身適応症候群(General Adaptation Syndrome)」を報告し、身体がさまざまな要求にどう反応するかを研究しました。
セリエがいう stress は、現代の日常語でいう「精神的につらい状態」だけではありません。運動、寒さ、病気、仕事など、身体に適応を求める幅広い刺激を含みます。ここでは著書と研究史で確認できる言葉を中心に7つ紹介します。
Contents
1. ストレスより、それへの反応を見る
It is not stress that kills us, it is our reaction to it.
Hans Selye
自然な和訳:「私たちを苦しめるのはストレスそのものではなく、それに対する私たちの反応です。」
背景:旧記事で紹介していた言葉です。ただし「考え方だけで病気を防げる」という意味ではありません。負荷の種類・強さ・持続時間に加え、身体と行動がどう反応するかに目を向ける考え方です。
英語ポイント:It is not A, it is B. は「AではなくBだ」と対比する型。reaction to … は「〜に対する反応」です。
初心者例文:My reaction to stress is changing.(ストレスへの反応が変わってきています。)
出典:Hans Selye, The Stress of Life
2. ストレスは、要求に対する身体の反応
Stress is the nonspecific response of the body to any demand.
Hans Selye
自然な和訳:「ストレスとは、あらゆる要求に対して身体が示す非特異的な反応です。」
背景:セリエのストレス概念を代表する定義です。原因が違っても、身体には共通する適応反応が生じるという研究から生まれました。
英語ポイント:response of A to B は「Bに対するAの反応」。demand は「要求」ですが、ここでは身体に変化や適応を求める刺激を指します。
初心者例文:Exercise is a demand on the body.(運動は身体への負荷です。)
出典:Hans Selye, The Stress of Life/BrainHQ, “Hans Selye: The Discovery of Stress”
3. ストレスが完全にない状態は、生きていない状態
Complete freedom from stress is death.
Hans Selye
自然な和訳:「ストレスから完全に解放された状態とは、死です。」
背景:ストレスは悪い出来事だけで生じるものではありません。喜び、運動、創作のような活動にも適応反応があります。目標はストレスをゼロにすることではなく、過剰な負荷を避け、回復できる状態をつくることです。
英語ポイント:freedom from … は「〜からの自由」「〜がない状態」。complete が「完全な」を表します。
初心者例文:We all need freedom from worry.(私たちは皆、心配から離れる時間が必要です。)
出典:Hans Selye, Stress Without Distress
4. ストレスは人生のスパイス
Stress is the spice of life.
Hans Selye
自然な和訳:「ストレスは人生のスパイスです。」
背景:適度な挑戦や刺激は、学習・創造・成長のきっかけにもなります。セリエは有益なストレスを eustress、有害なストレスを distress と区別しました。
英語ポイント:A is the spice of life. は「Aが人生に味わいを与える」という比喩。variety is the spice of life ということわざでも使われます。
初心者例文:New experiences are the spice of life.(新しい経験は人生のスパイスです。)
出典:Hans Selye, Stress Without Distress/“Stress: Eight Decades after Its Definition by Hans Selye”

5. 態度は、負荷の意味を変えられる
Adopting the right attitude can convert a negative stress into a positive one.
Hans Selye
自然な和訳:「適切な姿勢を持つことで、否定的なストレスを肯定的なものへ変えられることがあります。」
背景:同じ負荷でも、準備の有無、意味づけ、支援、回復環境によって経験は変わります。ただし、危険な環境や治療が必要な状態を気持ちだけで解決するという主張ではありません。
英語ポイント:adopt an attitude は「姿勢・考え方を取る」。convert A into B は「AをBへ変える」です。
初心者例文:We can turn pressure into energy.(プレッシャーをエネルギーに変えられます。)
出典:Hans Selye, The Stress of Life
6. 健康には、自分が尊敬できる目的がいる
To remain healthy a man must have some goal, some purpose in life that he can respect and be proud to work for.
Hans Selye
自然な和訳:「健やかであり続けるには、自分が尊重でき、誇りを持って取り組める目標や人生の目的が必要です。」
背景:セリエは負荷への適応だけでなく、意味のある仕事や貢献も生き方の重要な要素として語りました。
英語ポイント:be proud to do は「〜することを誇りに思う」。work for a purpose は「目的のために取り組む」です。
初心者例文:I’m proud to work for this goal.(この目標のために取り組めることを誇りに思います。)
出典:Hans Selye, Stress Without Distress
7. 科学者は、驚く力を失わない
The true scientist never loses the faculty of amazement.
Hans Selye
自然な和訳:「真の科学者は、驚く力を決して失いません。」
背景:研究の出発点は、知識を誇ることではなく「なぜだろう」と驚くこと。ストレス研究の先駆者であると同時に、科学する姿勢を語ったセリエらしい言葉です。
英語ポイント:faculty は大学の「学部」だけでなく、人が持つ「能力」。the faculty of amazement で「驚嘆する力」です。
初心者例文:Never lose your curiosity.(好奇心を決して失わないで。)
出典:Hans Selye, From Dream to Discovery: On Being a Scientist
まとめ|ストレスをゼロにするのではなく、負荷と回復を見分ける
セリエの研究が示したのは、「ストレスは気の持ちよう」という単純な話ではありません。生命は要求に反応し、適応します。しかし負荷が長く続き、回復が追いつかなければ消耗します。だからこそ、刺激の意味、身体の反応、休息、支援を一緒に見る必要があります。
ストレスを味方にするという現代的な視点は、ケリー・マクゴニガルの英語の名言7選でも紹介しています。
※本記事は英語表現と思想の紹介を目的としています。強いストレスや心身の不調が続く場合は、医療・専門機関へ相談してください。日本語訳と解説は原文・研究史を踏まえた本記事独自のものです。









