
without prejudice to は、契約書や規約、法律関係の文書で使われる「〜を損なうことなく」「〜に影響を与えることなく」というフォーマルな表現です。
学校英語で prejudice を「偏見」と覚えた方は、「偏見なしに〜」と訳したくなるかもしれません。しかし、この定型表現では prejudice=害・不利益という別の意味が中心です。
この記事では、without prejudice to の意味、語順、自然な例文、without prejudice 単独や regardless of との違い、簡単な英語での言い換えを解説します。
Contents
without prejudice to の意味
主な意味は次のとおりです。
- 〜を損なうことなく
- 〜に不利益を与えることなく
- 〜に影響を及ぼすことなく
- 〜を妨げるものではなく
ある決定・条項・行動を実施しても、別に存在する権利、請求、義務、権限などはそのまま守られる、と明示するときに使います。
This agreement is without prejudice to your existing rights.
この合意は、あなたの既存の権利を損なうものではありません。
ここで伝えたいのは、「今回の合意をしたからといって、すでに持っている権利を失うわけではない」ということです。
しゅみすけ(大山俊輔)
なぜ prejudice が「害・不利益」になる?
prejudice には、よく知られた「偏見」のほかに、フォーマルな名詞として「不利益」「権利を害すること」という意味があります。
without(〜なしに)+ prejudice(害・不利益)+ to(〜に対する)
つまり、全体の感覚は「〜への害や不利益なしに」です。そこから「〜を損なうことなく」という自然な日本語になります。
to は、害や影響が向かう対象を示します。したがって、without prejudice of ではなく without prejudice to が基本です。
語順とよく続く名詞
基本の形は次の2つです。
without prejudice to + 名詞
A is without prejudice to B
後ろには、守られる権利・主張・義務などが置かれます。
- without prejudice to your rights(あなたの権利を損なうことなく)
- without prejudice to any other remedies(ほかの救済手段を妨げることなく)
- without prejudice to the existing agreement(既存の契約に影響を与えることなく)
- without prejudice to our right to terminate(当社の解除権を損なうことなく)
to は前置詞なので、動作を続ける場合は動名詞も置けます。ただし実際の契約文では、the right to … や the possibility of … のように名詞句を続ける形が特に一般的です。
仕事・契約で使う自然な例文
権利を守る
The refund is offered without prejudice to your statutory rights.
この返金は、法律上の権利を損なうことなく提供されます。
This clause applies without prejudice to any rights under the original contract.
この条項は、原契約に基づくいかなる権利も損なうことなく適用されます。
別の手段を残す
We may suspend the service without prejudice to our right to terminate the agreement.
当社は、契約を解除する権利を損なうことなく、サービスを停止できるものとします。
The company can seek compensation without prejudice to any other remedies available.
会社は、利用可能なほかの救済手段を妨げることなく、補償を求めることができます。
判断・手続きを両立させる
The temporary measure was introduced without prejudice to the final decision.
その暫定措置は、最終決定に影響を与えることなく導入されました。
The parties may continue discussions without prejudice to their respective positions.
当事者は、それぞれの立場を損なうことなく協議を続けることができます。
without prejudice to・without prejudice・regardless of の違い

without prejudice to:権利などを損なわない
後ろに守られる対象を置き、「今回の行為が、その権利や主張へ不利益を与えない」と表します。
The payment is without prejudice to our claim for damages.
その支払いは、当社の損害賠償請求を妨げるものではありません。
without prejudice:権利を留保した交渉
手紙やメールの冒頭に Without Prejudice と単独で書かれる場合、紛争解決のための交渉をしながらも、法的な権利や立場を放棄しない意図を示すことがあります。
単に「偏見なく」という一般表現として使われる文脈もありますが、法務メールでは特別な意味を持ち得ます。実際の法的効果は国・地域や内容によって異なるため、ラベルを付けるだけで必ず保護されるとは限りません。
regardless of:ある条件を判断に入れない
regardless of は「〜に関係なく」「〜を問わず」です。権利を保護する法律的な意味ではなく、ある条件が結果を変えないことを表します。
Everyone can apply regardless of age.
年齢に関係なく、誰でも応募できます。
「〜を考慮せず」という意味の without regard to の意味・使い方 とも似ていますが、without prejudice to の焦点は「既存の権利や立場を害さないこと」です。
しゅみすけ(大山俊輔)
日本人が間違えやすいポイント
「偏見なしに」と機械的に訳さない
without prejudice to your rights を「あなたの権利への偏見なしに」と訳すのは不自然です。契約文では「あなたの権利を損なうことなく」と考えます。
without prejudice with とはしない
影響を受ける対象には to を使います。
× without prejudice with your rights
○ without prejudice to your rights
日常会話では硬すぎることがある
この表現は非常にフォーマルです。友人との会話で「その予定を変えても、旅行には影響しないよ」と言うなら、without prejudice to the trip より It won’t affect the trip. のほうが自然です。
簡単な英語での言い換え
without prejudice to が出てこなければ、何が守られるのかを直接伝えましょう。
- This will not affect your rights.
これはあなたの権利には影響しません。 - You will still keep all your rights.
あなたの権利はすべてそのまま残ります。 - We still have the right to end the agreement.
当社には引き続き契約を終了する権利があります。 - This does not stop us from taking other action.
これによって、ほかの措置を取れなくなるわけではありません。
難しい定型表現を無理に使わなくても、not affect、still have、still keep を使えば中心の意味を伝えられます。
without recourse to との違い
without recourse to の意味・使い方 は「〜に頼ることなく」。ある手段を使わないことを表します。
一方、without prejudice to は「〜を損なうことなく」。別の行動をしても、既存の権利や立場が守られることを表します。
- We settled the dispute without recourse to court action.
裁判に頼らず紛争を解決した。 - We made the payment without prejudice to our legal rights.
法的権利を損なうことなく支払いを行った。
まとめ
without prejudice to は「〜を損なうことなく」「〜に影響を与えることなく」という契約・法律英語の定型表現です。prejudice はここでは「偏見」ではなく「害・不利益」を表します。
形は without prejudice to + 権利・請求・義務など。会話で簡単に言うなら、This will not affect your rights. や You will still keep your rights. と言い換えられます。
ほかのwithout表現は、withoutを使う英熟語・定型表現のまとめと、英熟語・定型表現の親記事から確認できます。











