
新しい仕組みを導入すれば、一時的に仕事が増える。古い部屋をきれいに改装するには、しばらく不便を受け入れなければならない——何か価値のある結果を得るには、多少の手間、変化、損失が避けられないことがあります。
そんな状況を英語で表すのが、You can’t make an omelet without breaking eggs.です。直訳は「卵を割らずにオムレツを作ることはできない」。日本語では、「成果を得るには、ある程度の犠牲や代償が必要だ」という意味になります。
ただし、この表現を使えば、どんな犠牲でも正当化できるわけではありません。この記事では、意味と成り立ち、自然な使い方、米語と英語の綴り、No pain, no gain.などとの違い、使うときの倫理的な注意点まで解説します。ほかの定型表現は、英熟語・定型表現の親記事から確認できます。
Contents
You can’t make an omelet without breaking eggs.の意味
You can’t make an omelet without breaking eggs.は、次のような意味で使われる英語のことわざ・イディオムです。
- 成果を得るには、多少の犠牲が必要である
- 大きな変化には、一時的な不便や混乱が伴う
- 何かを作るには、材料・時間・労力を使う必要がある
- 今の状態を何も変えずに、新しい結果だけを得ることはできない
We’ll have to close the shop for a week during the renovation. You can’t make an omelet without breaking eggs.
「改装中は店を1週間閉めなければなりません。成果を得るには、ある程度の不便は避けられません」
この文では、本当に料理をしているわけではありません。店をよくするという「オムレツ」を作るために、一時休業という「卵を割ること」が必要だとたとえています。
なぜオムレツと卵で「犠牲」を表す?
オムレツを作るには、卵の殻を割り、中身を元の形から変えなければなりません。完成したオムレツだけを手に入れながら、卵を一つも割らずに残すことはできません。
この分かりやすい料理の事実が、次のような比喩になります。
- omelet:得たい成果、改善、完成した計画
- breaking eggs:必要な手間、費用、一時的な不便、変化
- can’t … without:〜せずに…することはできない
大切なのは、単に「犠牲は仕方がない」と言っているのではなく、目的と手段の間に現実的なつながりがあることです。改装には工事が必要で、語学力を伸ばすには練習時間が必要です。
しゅみすけ(大山俊輔)
文法と語順を確認しよう
基本の形は、can’t do A without doing Bです。
You can’t make an omelet without breaking eggs.
- You:一般の人・私たち人間
- can’t make:作ることはできない
- an omelet:一つのオムレツを
- without breaking:割ることなしに
- eggs:卵を
withoutは前置詞なので、後ろに動詞を置く場合はbreakingのように動名詞にします。
- 正:without breaking eggs
- 誤:without break eggs
- 誤:without to break eggs
主語のyouは特定の相手だけではなく、「人は一般に」という意味です。そのため、自分たちの状況について説明するときにも使えます。
omeletとomeletteはどちらが正しい?
どちらも正しい綴りです。
- omelet:主にアメリカ英語で使われる綴り
- omelette:主にイギリス英語で使われる綴り
したがって、You can’t make an omelette without breaking eggs.と書いても意味は同じです。記事内で一貫していれば、どちらを選んでも問題ありません。
また、You can’t make an omelet without breaking a few eggs.のようにa fewを入れる形もよく使われます。「いくつかの卵を割らずには」という表現で、多少の代償が必要だという感覚がよりはっきりします。
日常会話・仕事で使える例文
会社の改革
The new system may slow us down at first, but you can’t make an omelet without breaking eggs.
「新しいシステムのせいで、最初は作業が遅くなるかもしれません。しかし、改善には一時的な負担がつきものです」
Some roles will change during the reorganization. We can’t make an omelet without breaking a few eggs.
「組織再編では、一部の役割が変わります。何も変えずに新しい組織を作ることはできません」
学習・資格取得
I had to give up some weekends to prepare for the exam. You can’t make an omelet without breaking eggs.
「試験の準備のために、何度か週末を勉強に使わなければなりませんでした。成果には時間が必要です」
Improving your English takes regular practice. You can’t make an omelet without breaking eggs.
「英語力を伸ばすには、継続的な練習が必要です。努力なしに成果だけを得ることはできません」
家・暮らし
The kitchen will be messy while we replace the cabinets, but you can’t make an omelet without breaking eggs.
「収納棚を交換している間、キッチンは散らかります。でも、改装には一時的な不便が伴います」
We need to sort through everything before we can make more space. You can’t make an omelet without breaking a few eggs.
「スペースを増やすには、まず全部を整理しなければなりません。多少の手間は避けられません」
事業・新しい挑戦
Starting the business meant using some of my savings. I knew I couldn’t make an omelet without breaking eggs.
「事業を始めるには、貯金の一部を使う必要がありました。何の投資もせずに成果は得られないと分かっていました」
We’ll need to test several ideas before we find the right one. You can’t make an omelet without breaking eggs.
「正しい案を見つけるまで、いくつか試す必要があります。試行錯誤なしに成果は得られません」
使うときに注意したい「犠牲」の考え方

このイディオムは便利ですが、相手が大きな負担を負う状況で使うと、冷たく聞こえることがあります。話し手にとっての「小さな卵」が、別の人にとっては生活、安全、尊厳に関わる重大な問題かもしれないからです。
比較的自然に使える代償
- 新しい技能を学ぶための時間
- 改装や移行に伴う短期間の不便
- 改善のために古い手順を変更すること
- 検証のための妥当な費用や試行錯誤
- 本人が理解して選んだ、目的と釣り合う負担
この表現で正当化すべきではない犠牲
- 人を不当に傷つけること
- 安全や法律を無視すること
- 説明や同意なしに負担を押しつけること
- 弱い立場の人だけに損失を集中させること
- 避けられる被害を「仕方がない」で済ませること
相手が負担を受けるときは、ことわざだけで片づけず、理由、影響、代替案、支援策を説明することが大切です。
Some disruption is unavoidable, but we should minimize the impact on our staff.
「多少の混乱は避けられませんが、スタッフへの影響は最小限にすべきです」
似た表現との違い
| 表現 | 中心となる意味 | 焦点 |
|---|---|---|
| You can’t make an omelet without breaking eggs. | 成果には必要な代償が伴う | 何かを作る・変える過程 |
| No pain, no gain. | 苦労なしに成長・成果はない | 本人の努力や鍛錬 |
| There’s no such thing as a free lunch. | 完全に無料の利益はない | 見えない費用や条件 |
| at the expense of | 〜を犠牲にして | 何が損なわれるかを明示する |
No pain, no gain.との違い
No pain, no gain.は「苦労なくして成果なし」。運動、練習、勉強など、本人が努力して成長する場面でよく使います。
You can’t make an omelet without breaking eggs.はより広く、プロジェクト、改革、改装などで、成果を作る過程に変化やコストが伴うことを表します。
There’s no such thing as a free lunch.との違い
There’s no such thing as a free lunch.は、「無料に見えるものにも、誰かが負担する費用や条件がある」という意味です。必要な作業工程よりも、見えにくいコストに焦点を当てます。
at the expense ofとの違い
at the expense ofは、「何かを犠牲にして別のものを得る」と、損なわれる対象を具体的に示します。
We shouldn’t increase profits at the expense of product safety.
「製品の安全性を犠牲にして利益を増やすべきではありません」
語順やat your own expenseとの違いは、at the expense ofの意味・使い方で詳しく解説しています。
日本人が間違えやすいポイント
break an eggではなくbreak eggsが定番
このことわざでは、一般的に複数形のeggs、またはa few eggsを使います。
- without breaking eggs
- without breaking a few eggs
本当の料理の話と誤解されない文脈を作る
前後の文がなければ、文字どおり料理の説明にも見えます。比喩として使うときは、先に変化やコストの話を示すと意図が伝わります。
The transition will take time. You can’t make an omelet without breaking eggs.
「移行には時間がかかります。変化には一定の手間が必要です」
相手の損失を軽く扱わない
解雇、大きな収入減、健康上の危険などを受ける本人に向かってこの表現を使うと、「あなたの犠牲は仕方がない」と突き放しているように聞こえます。まず影響を認め、具体的な支援や代替案を話す必要があります。
the end justifies the meansと同じではない
The end justifies the means.は「目的が手段を正当化する」という考え方です。オムレツの表現は本来、成果に必要な代償を述べるものですが、使い方によっては不当な手段の正当化に聞こえます。倫理的に問題のある行動まで容認する表現として使わないようにしましょう。
簡単な英語で言い換えるなら
長いことわざが出てこなくても、必要な手間や変化を直接説明すれば十分に伝わります。
- Change takes time.
「変化には時間がかかります」 - Good results require effort.
「よい結果には努力が必要です」 - We have to accept some inconvenience.
「多少の不便を受け入れる必要があります」 - We need to change the old system to improve it.
「改善するには古い仕組みを変える必要があります」 - There will be some costs, but we can reduce them.
「一定のコストは発生しますが、減らすことはできます」
しゅみすけ(大山俊輔)
まとめ
You can’t make an omelet without breaking eggs.は、「価値のある成果を得るには、ある程度の手間、変化、代償が必要だ」と伝える英語のことわざです。
- オムレツが成果、卵を割ることが必要な代償を表す
- withoutの後ろはbreakingのように動名詞にする
- 米語ではomelet、英語ではomeletteが一般的
- without breaking a few eggsという形も使われる
- 仕事の改革、改装、学習、新しい挑戦などで使える
- 人への不当な被害や安全無視を正当化する表現ではない
まずは、小さな不便を伴う改善について、The change may be difficult at first, but you can’t make an omelet without breaking eggs.(最初は変化が大変かもしれませんが、改善にはある程度の手間が必要です)と言ってみましょう。









