
「新しいアプリより、紙の手帳のほうが落ち着く」「何十年もこのやり方で仕事をしてきたから、急に変えるのは難しい」——長年身についた習慣や考え方は、すぐには変えにくいものです。
そんな状況を表す英語が、You can’t teach an old dog new tricks.です。直訳は「老犬に新しい芸を教えることはできない」。比喩として、「長年の習慣がある人に新しいやり方を覚えてもらうのは難しい」という意味になります。
ただし、年齢を理由に相手の能力を決めつけるように使うと、失礼に聞こえます。この記事では、意味と成り立ち、自然な例文、自分に使う場合と他人に使う場合の違い、old habits die hardなどとの使い分け、より前向きで簡単な言い換えまで解説します。ほかの表現は、英熟語・定型表現の親記事から確認できます。
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You can’t teach an old dog new tricks.の意味
You can’t teach an old dog new tricks.は、次のような意味を持つ英語のことわざです。
- 長年の習慣を変えるのは難しい
- 慣れた方法から新しい方法へ切り替えるのは簡単ではない
- 固定した考え方を変えてもらうのは難しい
- 年齢を重ねてから新しいことを覚えるのは大変だ
最後の意味だけを見ると、「高齢者は新しいことを学べない」と断定しているように感じます。しかし、実際には年齢そのものより、長く続けてきた習慣や考え方の変えにくさに焦点を当てる場面が多くあります。
My father still prints every email. I guess you can’t teach an old dog new tricks.
「父は今でもメールを全部印刷します。長年の習慣はなかなか変わらないようです」
なぜold dogとnew tricksでこの意味になる?
犬に芸を教えるなら、若いうちから訓練するほうが簡単だ、という昔ながらの発想が土台になっています。
- old dog:長年の習慣が身についた人
- new tricks:新しい技能、方法、考え方
- teach A B:AにBを教える
したがって、文全体では「すでに習慣が固まった人に、新しい方法を教えるのは難しい」という比喩になります。
ここでのtrickは、「人をだます手口」ではありません。犬のsit(おすわり)やshake(お手)のような「芸・技」を指しています。
しゅみすけ(大山俊輔)
文法と語順を確認しよう
この文では、teach A B(AにBを教える)の語順が使われています。
You can’t teach an old dog new tricks.
- You:一般の人・人は誰でも
- can’t teach:教えることができない
- an old dog:年を取った犬に/習慣が固まった人に
- new tricks:新しい芸・新しい方法を
an old dogが「教わる相手」、new tricksが「教える内容」です。日本語とは語順が違うため、二つの目的語の順番に注意しましょう。
- teach me English:私に英語を教える
- teach the staff a new procedure:スタッフに新しい手順を教える
- teach an old dog new tricks:老犬に新しい芸を教える
また、ことわざとしてはcan’tが定番ですが、文脈に合わせてIt’s hard to teach an old dog new tricks.(老犬に新しい芸を教えるのは難しい)のように、断定を弱めることもできます。
自然に使える場面と例文
自分の習慣を冗談っぽく話す
最も安全で自然なのは、自分自身について軽く自虐的に使う場面です。
I tried taking notes on my tablet, but I went back to paper. You can’t teach an old dog new tricks.
「タブレットでメモを取ってみましたが、紙に戻りました。長年の習慣はなかなか変えられませんね」
I still prefer calling people to sending messages. I guess you can’t teach an old dog new tricks.
「今でもメッセージより電話のほうが好きです。慣れたやり方は変えにくいですね」
家族や親しい友人の癖を軽く話す
本人との関係が近く、互いに冗談だと分かる場合には使われます。
Mom learned to use video calls, but she still writes down every phone number. You can’t teach an old dog new tricks.
「母はビデオ通話を覚えましたが、今でも電話番号を全部紙に書きます。昔からの習慣は残るものですね」
He refuses to use the navigation app and always brings a paper map. You can’t teach an old dog new tricks.
「彼はナビアプリを使いたがらず、いつも紙の地図を持ってきます。長年のやり方は変えにくいようです」
職場の古い方法について話す
職場では、人ではなく習慣・部署・仕組みへ焦点を移すと、失礼さを抑えられます。
The team has used the same system for twenty years, so the change won’t happen overnight.
「チームは20年間同じシステムを使ってきたので、変化は一晩では起こりません」
Some people joked that you can’t teach an old dog new tricks, but the whole team learned the new software.
「長年の習慣は変えられないと冗談を言う人もいましたが、チーム全員が新しいソフトを習得しました」
二つ目の例のように、ことわざを紹介したうえで、実際には新しいことを学べたと続ける使い方もできます。
誰に言うかで印象が変わる

自分に使う:親しみやすい自虐
自分の好みや小さな癖について言えば、「私は昔ながらのやり方が好きでね」という親しみのある冗談になります。
I know the new machine is faster, but I miss the old one. You can’t teach an old dog new tricks.
「新しい機械のほうが速いのは分かっていますが、前の機械が恋しいです。慣れたものは変えにくいですね」
相手に使う:失礼になりやすい
相手へ直接You’re an old dog.と言ったり、本人の前でこのことわざを使ったりすると、次のような含みに聞こえる可能性があります。
- あなたは年を取っている
- あなたには新しいことを学ぶ能力がない
- 説明しても無駄だ
- 変化について来られない
特に採用、研修、昇進、IT導入など、能力評価に関わる場面では避けたほうが安全です。年齢ではなく、必要な支援や学習方法を具体的に話しましょう。
- Let’s give everyone enough time to learn the new system.
「全員が新しいシステムを学べるよう、十分な時間を取りましょう」 - We may need more training and hands-on practice.
「さらに研修と実践練習が必要かもしれません」
本当に「年を取ると新しいことを学べない」?
この表現はことわざであり、科学的な事実を述べる文ではありません。年齢にかかわらず、人は新しい技能や知識を学べます。慣れた方法を変えるのに時間が必要なことと、学習能力がないことは別です。
実際の会話でも、このことわざをあえて否定して、前向きな意味を表せます。
They say you can’t teach an old dog new tricks, but I started learning Spanish at sixty.
「老犬に新しい芸は教えられないと言いますが、私は60歳でスペイン語を学び始めました」
Who says you can’t teach an old dog new tricks? Grandma is great at using her new tablet.
「年を取ったら新しいことを覚えられないなんて誰が言ったの? おばあちゃんは新しいタブレットを上手に使っています」
年齢に関係なく好奇心や気持ちが若い人を表すyoung at heartについては、young at heartの意味・使い方で詳しく解説しています。
似た表現との違い
| 表現 | 意味 | 焦点 |
|---|---|---|
| You can’t teach an old dog new tricks. | 習慣が固まった人に新しい方法を教えるのは難しい | 人と新しい学習・変化 |
| Old habits die hard. | 古い習慣はなかなかなくならない | 残り続ける習慣そのもの |
| be set in one’s ways | 自分のやり方に固執している | 人の柔軟性のなさ |
| It’s never too late to learn. | 学ぶのに遅すぎることはない | 年齢に関係なく学べるという励まし |
Old habits die hard.との違い
Old habits die hard.は「古い習慣はなかなか消えない」という意味です。人の年齢には直接触れず、習慣そのものを主語にするため、比較的使いやすい表現です。
I still check my email first thing every morning. Old habits die hard.
「今でも毎朝いちばんにメールを確認します。昔からの習慣は抜けませんね」
be set in one’s waysとの違い
be set in one’s waysは、「自分の習慣や考え方が固まっていて、変えたがらない」という意味です。説明的ですが、相手について使うと批判的に聞こえる点は同じです。
He’s a little set in his ways, but he’s willing to listen.
「彼は少し自分のやり方にこだわりますが、話を聞く気はあります」
It’s never too late to learn.との違い
It’s never too late to learn.は「学ぶのに遅すぎることはない」という前向きな励ましです。相手に新しい挑戦を勧めたいなら、old dogのことわざよりこちらが適しています。
日本人が間違えやすいポイント
trickを単数形にしない
ことわざでは複数形のnew tricksが定番です。
- 正:You can’t teach an old dog new tricks.
- 不自然:You can’t teach an old dog a new trick.
後者は文法的には「老犬に一つの新しい芸を教えられない」という文字どおりの文になりますが、定型的なことわざの形ではありません。
teachの後ろの語順に注意する
teach A Bで「AにBを教える」です。teach new tricks an old dogとはしません。
old dogを人への呼びかけにしない
old dogをそのまま「年寄り」の呼び名として使うと、侮辱的になり得ます。このことわざ以外で、人へ直接Hey, old dog.などと呼びかけないようにしましょう。
できないと決めつけない
can’tが入っているため、強い断定です。現実には「時間が必要」「説明方法を変える必要がある」だけかもしれません。仕事では、能力不足を決めつける前に具体的な課題を説明しましょう。
簡単で前向きな英語に言い換えるなら
このことわざを使わなくても、長年の習慣や学習の難しさを、相手を傷つけずに表せます。
- It’s hard to change an old habit.
「長年の習慣を変えるのは難しいです」 - This new system will take time to learn.
「この新しいシステムを覚えるには時間がかかります」 - I’m used to the old way.
「私は以前のやり方に慣れています」 - We all learn at different speeds.
「学ぶ速さは人それぞれです」 - It’s never too late to learn.
「学ぶのに遅すぎることはありません」
しゅみすけ(大山俊輔)
まとめ
You can’t teach an old dog new tricks.は、「長年身についた習慣や考え方を変え、新しい方法を覚えるのは難しい」という英語のことわざです。
- old dogは、長年の習慣が身についた人の比喩
- new tricksは、新しい技能・方法・考え方を表す
- teach A Bで「AにBを教える」という語順
- 自分の小さな習慣について冗談で使うと自然
- 相手へ使うと、年齢や能力を見下したように聞こえやすい
- 前向きに励ますならIt’s never too late to learn.が使いやすい
まずは自分の習慣について、I’m used to the old way. It’s hard to change an old habit.(以前のやり方に慣れています。長年の習慣を変えるのは難しいですね)と、簡単で直接的な英語から使ってみましょう。









