アガサ・クリスティの英語の名言7選|人生・時間・愛・人間観を語る言葉

書斎で執筆するアガサ・クリスティを思わせる英国ミステリー作家のイメージ

『そして誰もいなくなった』『オリエント急行の殺人』など、今も世界中で読み継がれる作品を残したアガサ・クリスティ(Agatha Christie, 1890–1976)。彼女の言葉には、複雑な謎を組み立てる知性だけでなく、家族、時間、旅、老い、そして人間の少しおかしなところを見つめる温かな観察眼があります。

この記事では、クリスティ自身の自伝や記録に残る言葉と、小説の登場人物が語った印象的なせりふを区別しながら、英語の名言を7つ紹介します。作品が好きでたどり着いた方も、一つの英文から英語の面白さを味わってみてください。

引用の見方
「本人の言葉」は自伝・回想・本人の記録から、「作品中の言葉」は小説の登場人物のせりふから選び、出典を併記しています。インターネットで広く流通していても、本人が言ったと確認できない言葉は7選に含めていません。

アガサ・クリスティとは?|日常の観察から謎を生んだ「ミステリーの女王」

イギリス南西部デヴォンに生まれたクリスティは、1920年に『スタイルズ荘の怪事件』で作家デビュー。エルキュール・ポアロやミス・マープルといった名探偵を生み出し、推理小説だけでなく戯曲やロマンス作品も残しました。

二度目の夫で考古学者のマックス・マローワンと中東の発掘現場を旅した経験は、多くの作品の舞台にも生かされています。しかし、彼女の創作を支えたのは特別な事件ばかりではありません。列車の乗客、家族の会話、村の日常。人をよく見て、耳を澄ませ、想像することが物語へ変わっていきました。

アガサ・クリスティの英語の名言7選

1. There is nothing more wonderful to have in one’s life, than time.

There is nothing more wonderful to have in one’s life, than time.

人生で持つことのできるものの中で、時間ほど素晴らしいものはありません。

出典はクリスティの『自伝(An Autobiography)』。続けて、現代人は十分な時間を得ていないのではないか、と語っています。成果や所有物ではなく、自由に考え、味わい、誰かと過ごせる「時間」を豊かさと見る言葉です。

There is nothing more … than ~ は「~ほど…なものはない」という強い比較表現。たとえば There is nothing more important than time.(時間ほど大切なものはありません)と応用できます。

2. But surely for everything you love you have to pay some price.

But surely for everything you love you have to pay some price.

けれどきっと、愛するものすべてのために、何らかの代価を払わなければならないのです。

こちらも『自伝』に残る言葉です。愛することは、ただ幸福を受け取ることではありません。時間を注ぎ、心配し、ときには別れの悲しみも引き受ける。それでも愛する価値がある、という静かな現実感があります。

pay a price for … は「…のために代償を払う」。金銭に限らず、選択に伴う努力や犠牲を表せます。

3. It is only when you see people looking ridiculous, that you realise just how much you love them!

It is only when you see people looking ridiculous, that you realise just how much you love them!

人がばかばかしく見える姿を目にしたときにこそ、自分がその人をどれほど愛しているかに気づくものです。

『自伝』から。完璧だから愛するのではなく、不器用さや可笑しさまで見えてなお愛おしい。長く家族や友人と付き合ってきた人ほど、思い当たる場面があるかもしれません。

It is only when A that B は「Aして初めてBする」という強調構文です。It was only then that I understood.(そのとき初めて分かりました)もよく使われます。

雨の列車内に置かれたノートと紅茶、物語の観察眼を表すイメージ

4. To travel by train is to see life.

To travel by train is to see nature and human beings, towns and churches and rivers—in fact, to see life.

列車で旅することは、自然や人々、町や教会や川を見ること。つまり、人生を見ることです。

『自伝』にある旅の言葉です。列車は目的地へ急ぐだけの乗り物ではなく、窓の外の風景と、同じ車両にいる人々の人生を観察する場所でした。数々の列車ミステリーを生んだ作家らしい視点です。

in fact は「実際には」「つまり」。前に述べたことを言い直したり、核心を示したりする便利な表現です。映画でクリスティの世界を味わいたい方は、映画『オリエント急行殺人事件』で学ぶ英語もどうぞ。

5. As life goes on … you become more like yourself every day.

As life goes on it becomes tiring to keep up the character you invented for yourself, and so you relapse into individuality and become more like yourself every day.

人生が進むにつれ、自分で作り上げた人物像を保ち続けるのは疲れるものです。やがて人は本来の個性に戻り、日ごとに自分らしくなっていきます。

『自伝』で、年齢を重ねることについて語った一節です。若い頃につくった「こう見られたい自分」を演じ続けるより、次第に肩の力が抜けて本来の自分に近づく。年を取ることを喪失ではなく、自己への帰還として読める言葉です。

as life goes on は「人生が進むにつれて」、keep up はここでは「維持する」。As time goes on, I feel more like myself.(時がたつほど、自分らしく感じます)なら会話にも使えます。

6. Instinct is a marvellous thing. It can neither be explained nor ignored.

Instinct is a marvellous thing. It can neither be explained nor ignored.

直感とは不思議なものです。説明することも、無視することもできません。

デビュー作『スタイルズ荘の怪事件(The Mysterious Affair at Styles)』に登場するポアロのせりふです。これはクリスティ本人の発言ではなく、作品中の言葉。ただし、細部を論理的に検討しながら、人間についての直感も捨てない彼女のミステリーをよく表しています。

neither A nor B は「AでもBでもない」。ここでは受け身で「説明もされ得ないし、無視もされ得ない」という意味です。

7. Words are such uncertain things.

Words are such uncertain things, they so often sound well but mean the opposite of what one thinks they do.

言葉とは、とても不確かなもの。耳にはよく響いても、話し手が意図したことと反対の意味に受け取られることが、あまりにも多いのです。

『おしどり探偵(Partners in Crime)』にある作品中のせりふです。同じ一言でも、声の調子や関係性、場面によって意味は変わります。英語学習でも、単語を置き換えるだけでなく「どんな状況で、誰に言うか」を知る大切さを教えてくれます。

what one thinks they dodo は、前にある mean を繰り返さないための代動詞です。英語ではこのように重複を避ける表現がよく使われます。

「考古学者は最高の夫」はアガサ・クリスティの名言?

クリスティの名言として、次の言葉を見かけることがあります。

An archaeologist is the best husband a woman can have. The older she gets, the more interested he is in her.

考古学者は女性にとって最高の夫。妻が年を取るほど、夫は妻に興味を持つようになるから。

いかにも、考古学者を夫に持つミステリー作家らしい機知に富んだ言葉です。しかし、アガサ・クリスティ公式サイトの解説は、本人がこの言葉を述べたことはないと明記しています。そのため、本記事の7選には含めませんでした。

「その人らしい言葉」と「その人が実際に残した言葉」は別物です。名言を英語で読むときは、短い一文の格好よさだけでなく、どの本や会話から生まれたのかまでたどると、その人物がもっと立体的に見えてきます。

アガサ・クリスティの名言から覚えたい英語表現

  • There is nothing more … than ~:~ほど…なものはない
  • pay a price for …:…のために代償を払う
  • It is only when A that B:Aして初めてBする
  • in fact:実際には、つまり
  • as life goes on:人生が進むにつれて
  • neither A nor B:AでもBでもない
  • the opposite of …:…の反対

好きな物語の一文は、英語への入口になる

アガサ・クリスティを検索する人の目的は、最初から英語学習とは限りません。作品をもっと知りたい、人生観に触れたい、心に残る言葉を探したい——そんな興味から一つの英文を読み、timelove のような知っている単語を見つける。それも立派な英語との出会いです。

長い小説を原書で読むのはまだ難しくても、好きな作家の一文なら何度でも眺められます。まずは今日心に残った言葉を声に出してみてください。ミステリーの扉の向こうに、英語を読む楽しみも待っています。

女性たちが残した、人生を歩くための言葉
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参考資料

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