
「弱いところを見せたら、負けなのではないか」「完璧にできない自分には価値がない」。そんな心の鎧を、長いあいだ身につけてきた人もいるでしょう。
ブレネー・ブラウン(Brené Brown)は、勇気・弱さ(vulnerability)・恥・共感を研究してきたアメリカの研究者です。彼女の言葉が40代、50代、60代の心にも響くのは、「もっと頑張ろう」と急かすのではなく、これまで自分を守ってきた鎧を見つめ直す視点をくれるからかもしれません。
この記事では、TEDの講演や対談、著書で確認できる短い英語の言葉を7つ選び、日本語訳と英語表現を解説します。
先にひとつ大切なこと
ブラウンのいう vulnerability は、何でも人に話すことでも、無防備になることでもありません。「不確実さ・リスク・感情をさらすこと」を含みながら、相手や場面を選ぶ境界線(boundaries)も必要だと、本人は明確に話しています。
Contents
ブレネー・ブラウンとは?「弱さ」を勇気の側から研究した人
ブレネー・ブラウンは、ヒューストン大学大学院ソーシャルワーク研究科の研究教授です。長年にわたり、勇気、弱さ、恥、共感、人とのつながりを研究してきました。
2010年のTEDxHouston講演「The power of vulnerability(弱さの力)」は世界中で広く視聴され、著書には『The Gifts of Imperfection』『Daring Greatly』『Rising Strong』『Braving the Wilderness』『Dare to Lead』などがあります。
英語名の Brené は最後の e にアクセント記号がつきます。日本語では「ブレネー・ブラウン」と表記されるのが一般的です。
ブレネー・ブラウンの英語の名言7選
1.弱さは、弱点ではない
Vulnerability is not weakness.
日本語訳:弱さをさらすことは、弱点ではない。
vulnerability は「傷つきやすさ」「弱さを見せられる状態」。weakness は「弱点・弱さ」です。似て見える二語を is not で切り分けた、ブラウンの研究の出発点ともいえる一文です。
怖くないことが勇気なのではありません。結果が分からなくても、必要な一歩を出す。その不確実さを引き受けることが vulnerability です。
2.弱さなしに、勇気はない
There is no courage without vulnerability.
日本語訳:弱さをさらすことなしに、勇気はない。
There is no A without B. は「BなしにAはない」という型。There is no growth without change.(変化なしに成長はない)のようにも使えます。
助けを求める、分からないと言う、失敗を認める。どれも格好よくは見えないかもしれません。しかし、そこには不確実さがあり、だからこそ勇気が必要なのです。
3.私たちは、つながるためにここにいる
Connection is why we’re here.
日本語訳:人とのつながりこそ、私たちがここにいる理由だ。
why we’re here は直訳すると「私たちがここにいる理由」。短いながら、why が「理由」を表す名詞節になっています。
完璧な姿だけを見せ続けると、人から評価されることはあっても、本当の自分が理解されたという感覚は得にくくなります。つながりは、欠点のない者同士ではなく、人間らしい者同士のあいだに生まれる——そう読める言葉です。
4.あなたを傷つきやすくするものが、あなたを美しくする
What makes you vulnerable makes you beautiful.
日本語訳:あなたを傷つきやすくするものが、あなたを美しくする。
make + 人 + 形容詞 は「人を〜の状態にする」。同じ形が二度使われ、vulnerable と beautiful が鮮やかに結ばれています。
失敗した経験、年齢とともに変わった体や働き方、うまく言葉にできなかった気持ち。それらは隠すべき「傷」だけではなく、他者の痛みを想像できる人間らしさにもなります。

5.すべての感情を、都合よく選んで麻痺させることはできない
We cannot selectively numb emotions.
日本語訳:私たちは、感情を選んで麻痺させることはできない。
selectively は「選択的に」、numb はここでは「感覚を麻痺させる」。苦しさだけを感じないようにすると、喜びや感謝まで遠ざかってしまうというTED講演の文脈です。
いつも平気な顔をすることは、一時的には自分を守ります。ただ、感じないようにする力を強めすぎると、うれしさを受け取る力まで小さくなる。その危うさを示しています。
6.境界線のない弱さは、弱さを見せることではない
Vulnerability minus boundaries is not vulnerability.
日本語訳:境界線を差し引いた弱さの開示は、本当の vulnerability ではない。
A minus B は「AからBを引いたもの」。数式のような簡潔さです。ここでの boundaries は、人との関係で「どこまで話すか」「何を今は話さないか」を自分で決める境界線を指します。
本音を話すことと、誰にでもすべてを話すことは違います。信頼できる相手か、話す目的は何か、自分や相手を必要以上に傷つけないか。境界線があるからこそ、安全に正直でいられます。
7.明確であることは親切。曖昧であることは不親切
Clear is kind. Unclear is unkind.
日本語訳:明確であることは親切だ。曖昧であることは不親切だ。
clear / unclear と kind / unkind を対にした、覚えやすい言葉です。耳の痛いことを伝えずに濁すのが、いつも優しさとは限りません。
仕事の依頼、家族への希望、断りたい誘い。「察してほしい」と抱え込むより、相手を尊重しながら明確に伝える。そのための短い合言葉になります。
「弱さを見せる」と「何でもさらけ出す」は違う
ブラウンはTEDの対談で、中年期を「これまで自分を守ってきた鎧が、もう役に立たず、重くなってくる時期」として語っています。子どもの頃や若い時代には必要だった、完璧主義、皮肉、何でも知っているふり、失敗を見せない姿勢。それらが、成長や人とのつながりを妨げ始めることがあるのです。
ただし、鎧を脱ぐことは、プライバシーを捨てることではありません。たとえば「今は少し大変なことがある。でも詳しく質問されるより、必要なときはこちらから相談したい」と伝えることも、境界線のある vulnerability です。
使える英語
I’m having a hard time, but I’m not ready to talk about the details.
「つらい時期ですが、詳しいことを話す準備はまだできていません」
I’ll let you know if I need help.
「助けが必要なら、こちらから知らせます」
名言から覚えたい英語表現
| 英語 | 意味 | ポイント |
|---|---|---|
| vulnerability | 傷つきやすさ、弱さを見せる状態 | weakness と同じではない |
| There is no A without B. | BなしにAはない | 短い主張に使いやすい型 |
| make + 人 + 形容詞 | 人を〜の状態にする | make you vulnerable など |
| selectively | 選択的に | select(選ぶ)からできた副詞 |
| numb | 感覚を麻痺させる | 感情についても使える |
| boundaries | 境界線、限度 | 人間関係では複数形がよく使われる |
| clear / unclear | 明確な/曖昧な | 接頭辞 un- で反対語になる |
ブレネー・ブラウンの名言が、40代以降に響く理由
人生の後半は、強さを追加していくだけの時間ではありません。もう自分を守らなくなった鎧を見分け、必要のないものを下ろしていく時間でもあります。
完璧に話せなくても、英語を学び直していい。全部できなくても、新しい仕事や関係に踏み出していい。分からないと認めることも、助けを求めることも、境界線を引くことも勇気です。
女性たちの生き方を支える言葉をもっと読みたい方は、女性の生き方の英語の名言集へ。学び直しや、これからの働き方まで整理したくなった方は、40代・50代からのキャリアと学び直しを考える be:RIZEにもつながっています。
今日覚えるなら、まずはこの一文だけでも十分です。
There is no courage without vulnerability.
怖さがあるのは、勇気がない証拠ではありません。勇気を使おうとしている証拠かもしれません。
参考にした主な資料
- TED:Brené Brown “The power of vulnerability”
- TED:Brené Brown “Listening to shame”
- TED Audio Collective:Brené Brown on What Vulnerability Isn’t(transcript)
- Brené Brown, Dare to Lead
- Brené Brown公式サイト








