
ニューヨークを紹介する映画や旅行記事で、the Big Appleという言葉を見かけたことはありませんか?
直訳すれば「大きなリンゴ」。ところが、英語ではニューヨーク市(New York City)の有名な愛称として使われています。
では、なぜニューヨークがリンゴなのでしょう。「競走馬へのご褒美がリンゴだったから」という説明も見かけますが、歴史をたどると、もう少し複雑で興味深い物語が見えてきます。
この記事では、b わたしの英会話で働いたニューヨーク出身のAndreaと、ニューヨークのゲーム会社で働いた経験を持つLiezlが旧ブログで紹介した話を引き継ぎながら、信頼できる資料をもとに意味・由来・使い方を整理します。
Contents
Big Appleとは?意味は「ニューヨーク市」
the Big Appleは、アメリカのニューヨーク市を指すニックネームです。
I’m visiting the Big Apple next month.
来月、ニューヨークへ行きます。
ここでいうNew Yorkは、基本的にニューヨーク州全体ではなく、マンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクス、スタテンアイランドからなるNew York Cityを指します。
表記は固有の愛称としてBig Appleの頭文字を大文字にし、通常はthe Big Appleとtheを付けます。発音の目安は「ザ・ビッグ・アップル」です。
一言で分かる由来
由来を先に短くまとめると、次のようになります。
- 20世紀初頭、big appleは「大きな獲物」「誰もが望む重要なもの」を連想させる表現だった
- 1920年代、競馬記者John J. Fitz Geraldがニューヨークの競馬界を指す呼び名として広めた
- その後、ジャズ・ミュージシャンの間でもニューヨークを表す言葉として定着した
- 1970年代の観光キャンペーンで一般に広く復活した
つまり「大きなリンゴ」という物の名前から単純に生まれたのではなく、成功や大舞台を象徴する比喩が、競馬や音楽の世界を通じてニューヨークの愛称になった、と考えると分かりやすいでしょう。
なぜニューヨークはBig Appleと呼ばれる?
鍵を握る競馬記者John J. Fitz Gerald
The Big Appleをニューヨークの愛称として広めた人物として、最もよく知られているのが競馬記者のJohn J. Fitz Gerald(ジョン・J・フィッツジェラルド)です。
Fitz Geraldは新聞New York Morning Telegraphで競馬記事を書き、1920年代に自身のコラムでBig Appleという言葉を繰り返し使いました。1924年の記事では、ニューヨークを競馬に関わる人々が目指す最大の舞台として描いています。
ニューヨークにはBelmont ParkやAqueductなど大きな競馬場があり、賞金や注目度の高いレースが集まっていました。馬主や調教師、騎手にとって、ニューヨークで成功することは「大物をつかむ」「最高の舞台へ行く」ことだったのです。
ニューオーリンズの厩務員から聞いた言葉
Fitz Gerald自身の説明によると、彼はニューオーリンズで、アフリカ系アメリカ人の厩務員たちがニューヨークの競馬場をthe big appleと呼んでいるのを耳にしました。
ニューヨーク市の公式資料でも、彼がその言葉を聞き、後にコラム名「Around the Big Apple」に採用した経緯が紹介されています。
現在、マンハッタンのWest 54th StreetとBroadwayの角は、彼の功績を記念してBig Apple Cornerと呼ばれています。
「馬がリンゴを食べるから」は本当?
「勝った競走馬がリンゴをもらった」「馬の好物である大きなリンゴが最大の賞を意味した」という説明は、覚えやすく魅力的です。しかし、これだけを確定した語源として説明するのは慎重であるべきです。
残っている記録から強く裏付けられるのは、当時のbig appleが重要な場所、魅力的な獲物、大きな成功を思わせる表現であり、競馬界でニューヨークの大舞台を指したという流れです。
馬とリンゴのイメージが言葉の広まりを助けた可能性はありますが、「馬へのご褒美だけが語源」と断定するより、競馬界の最高峰を表した愛称と理解するほうが資料に沿っています。
ジャズがBig Appleをニューヨークの愛称にした
1920~30年代になると、Big Appleは競馬界だけでなく、ジャズ・ミュージシャンの間にも広がります。
当時のニューヨーク、特にハーレムはジャズの一大中心地でした。地方の演奏家にとってニューヨークで演奏することは、大きな成功を意味します。「枝にはたくさんのリンゴがあるが、Big Appleはニューヨークだ」という趣旨の言い回しも伝わり、ニューヨークは音楽家が目指す最高の舞台として語られました。
Big Appleというダンスやクラブ名も現れ、この愛称は競馬からエンターテインメントの世界へ浸透していきます。
一度忘れられ、1970年代に観光キャンペーンで復活
第二次世界大戦後、Big Appleという呼び名は以前ほど使われなくなりました。
転機は1970年代です。当時のニューヨークには犯罪や財政難など暗いイメージがあり、市の観光当局はその印象を変える必要がありました。New York Convention and Visitors BureauのCharles Gillettが、明るく親しみやすい赤いリンゴを使った観光キャンペーンを展開します。
このキャンペーンによってBig Appleは旅行者にも広く知られ、現在まで続くニューヨークの代表的な愛称になりました。後に有名になるI ♥ NYとは別のキャンペーンですが、どちらもニューヨークの都市イメージ回復に大きな役割を果たしました。
Big Appleの自然な使い方と例文
Big Appleは日常会話でNew York Cityの代わりに毎回使う言葉ではありません。旅行、観光、見出し、広告、映画や音楽などで、ニューヨークらしい雰囲気を出したいときに使われます。
旅行の予定を話す
We’re heading to the Big Apple this summer.
私たちはこの夏、ニューヨークへ行きます。
head to ~は「~へ向かう」。visitより少し躍動感があり、旅行の会話に似合います。
夢を追ってニューヨークへ移る
She moved to the Big Apple to pursue her dream.
彼女は夢を追うためにニューヨークへ移りました。
大きな成功を目指す場所という歴史的なイメージとも相性のよい例文です。
観光客を歓迎する
Welcome to the Big Apple!
ニューヨークへようこそ!
観光案内や空港、旅行番組などで聞きそうな表現です。
ニューヨーク生活を語る
Life in the Big Apple can be exciting and exhausting.
ニューヨークでの生活は刺激的で、同時に疲れることもあります。
exciting and exhaustingは音の似た単語を並べた印象的な言い方です。
ネイティブは普段からBig Appleと言う?
意味は誰にでも通じますが、ニューヨーカーが普通の会話で常にBig Appleと言うわけではありません。
たとえば「私はニューヨークに住んでいます」なら、通常は次のように言います。
I live in New York City.
I live in New York.
I live in the city.
Big Appleを使うと、少し観光案内風、新聞見出し風、あるいは愛称を意識した言い方になります。場面に応じて使うからこそ、ニューヨークらしい彩りが出る表現です。
ニューヨークのほかの愛称
ニューヨークにはBig Apple以外にも有名な呼び名があります。
The City That Never Sleeps
「眠らない街」。深夜まで活動が続くニューヨークの活気を表します。
New York is known as the City That Never Sleeps.
ニューヨークは「眠らない街」として知られています。
Gotham
ニューヨークを表す古い愛称の一つです。作家Washington Irvingが19世紀初頭にニューヨークへ用いたことで知られ、現在はBatmanの架空都市Gotham Cityも強く連想させます。
Empire City
ニューヨーク州の愛称The Empire Stateに関連する呼び名です。ただし、現代の知名度と使われる頻度ではBig Appleのほうが圧倒的に上です。
東京はBig MikanやBig Persimmon?
2009年の旧記事で、ニューヨーク出身のAndreaは「東京にはBig Mikan(大きなみかん)やBig Persimmon(大きな柿)のような愛称があるの?」とユーモアたっぷりに問いかけていました。
結論からいうと、これらは東京の定着した英語の愛称ではありません。Andreaの遊び心あるアイデアです。
都市のニックネームは、直訳や名産品だけで機械的に作られるものではありません。歴史、文化、メディア、人々の使い方が積み重なって定着します。Big Appleの面白さも、競馬、ジャズ、観光というニューヨークらしい歴史を背負っている点にあります。
初心者なら簡単な英語に言い換えてもOK
Big Appleがすぐ出てこなくても、英会話ではまったく問題ありません。まずは次のように言えば、意味は正確に伝わります。
- New York City:ニューヨーク市
- New York:文脈上明らかならニューヨーク市
- the city:周辺地域やニューヨーカーの会話で「市内」
たとえば、I’m going to the Big Apple.が難しければ、I’m going to New York City.で十分です。
愛称や英語のイディオムは、知っていると映画やニュースが楽しくなります。ただし、会話では「凝った表現を使うこと」より「伝わること」が第一です。慣れてからBig Appleを加えてみましょう。
リンゴを使った比喩やことわざをもっと知りたい方は、appleを使った英語表現と意味もあわせてご覧ください。
Big Appleについてよくある質問
Q. Big Appleはニューヨーク州全体のことですか?
いいえ。一般にはニューヨーク市、つまりNew York Cityを指します。州全体について話すときはNew York Stateと言うと明確です。
Q. theは必要ですか?
通常はthe Big Appleとtheを付けます。固有の愛称なのでBigとAppleの頭文字は大文字です。
Q. なぜappleが使われたのですか?
一つの単純な理由だけで決まったとは言い切れません。記録上は、big appleが価値の高いものや大きな成功を連想させ、1920年代の競馬界でニューヨークの大舞台を指す呼び名として広まった流れが有力です。
Q. John J. Fitz Geraldが言葉を作ったのですか?
彼が最初に発明したとは考えられていません。ニューオーリンズの厩務員たちから聞いた言葉を競馬コラムで使い、広く知られるきっかけを作った人物です。
Q. 今でも使われますか?
はい。特に旅行、観光広告、ニュースの見出し、エンターテインメントで使われます。ただし日常会話ではNew YorkまたはNew York Cityのほうが自然な場合も多いです。
まとめ:Big Appleは「成功を目指す大舞台」だった
Big Appleは、単に「ニューヨークにはリンゴが多い」という理由で付いた名前ではありません。
1920年代の競馬界で、ニューヨークは大きな賞金と成功を目指す最高の舞台でした。その呼び名をJohn J. Fitz Geraldが新聞で広め、ジャズ・ミュージシャンが受け継ぎ、1970年代の観光キャンペーンが現代へよみがえらせました。
I’ve always wanted to visit the Big Apple.
ずっとニューヨークを訪れてみたいと思っていました。
次に映画や旅行番組でthe Big Appleを聞いたら、その背後にある競馬とジャズの歴史も思い出してみてください。
参考資料:
New York Public Library: Why Is New York City Called “The Big Apple”?
The City of New York: Big Apple Corner










