
相手に理由を決めつけられたとき、「いや、そういうわけではなくて……」と角を立てずに訂正したいことがあります。そんな場面で便利なのが not that〜 です。
たとえば、Not that I don’t like it, but… は直訳すると否定が重なって難しく見えますが、会話では「嫌いというわけではないけど……」というやわらかな前置きになります。この記事では、意味の成り立ち、語順、It’s not that〜 との違いまで、自然な例文とともに整理します。
- not that S+V=「SがVするというわけではない」
- 前の発言に補足し、誤解されそうな理由を否定する
- It’s not that S+V は理由をより直接的に訂正する
Contents
not that〜の基本的な意味
not that+主語+動詞 の基本的な意味は、「〜というわけではない」「別に〜なのではない」です。相手が思いそうなことを先回りして否定したり、自分の発言にただし書きを加えたりします。
Not that I’m complaining.
文句を言っているわけではありません。
Not that I need a new phone, but this one looks great.
新しいスマホが必要というわけではないけど、これはすてきですね。
この that は「あれ」という指示語ではなく、後ろの文をひとまとまりにする接続詞です。つまり not+that節 で、「後ろに述べる内容が理由・事実なのではない」と打ち消しています。
しゅみすけ(大山俊輔)
ネイティブが感じるニュアンス
not that〜には、単なる事実の否定だけでなく、誤解を避けながら本音を足す感覚があります。「嫌いだから断る」「怒っているから黙っている」など、聞き手が推測しそうな理由をいったん外し、そのあとに本当の理由を伝えます。
I’m going home early. Not that I’m bored—I just have an early meeting tomorrow.
早めに帰ります。退屈しているわけではなく、明日の朝早く会議があるだけです。
Not that I doubt you, but can we check the numbers once more?
あなたを疑っているわけではありませんが、数字をもう一度確認してもいいですか。
後半には but やダッシュ(—)を使って本当の事情を続けることがよくあります。ただし、前後関係から明らかなら Not that I’m complaining. のように一文だけでも使えます。
よく使う語順と3つの形
1.Not that S+V, but…
誤解されそうな内容を先に否定し、その後で本音や理由を伝える定番の形です。
Not that I don’t want to go, but I need to save money.
行きたくないわけではないけど、お金を節約しないといけません。
Not that she was rude, but she seemed a little distant.
彼女が失礼だったわけではないけど、少しよそよそしく見えました。
2.文のあとに Not that…
先に発言し、あとから「といっても〜というわけではない」と補足する形です。会話らしい後付けのニュアンスが出ます。
I could use a day off. Not that I hate my job.
一日休みがあると助かります。仕事が嫌いというわけではありません。
He talks a lot in meetings—not that it’s always a bad thing.
彼は会議でよく話します。もっとも、それがいつも悪いというわけではありません。
3.It’s not that S+V; it’s that…
「理由はAではなくBです」と対比をはっきり示す形です。最初の It’s を省いた会話的な not that より、説明の骨格が明確になります。
It’s not that I’m angry. I’m just tired.
怒っているわけではありません。ただ疲れているだけです。
It’s not that the plan is bad; it’s that we don’t have enough time.
計画が悪いのではなく、時間が足りないのです。
Not thatとIt’s not thatの違い

| 形 | 会話での役割 | 自然な日本語 |
|---|---|---|
| Not that S+V | 前の発言にあとから補足する/本音の前置きにする | 〜というわけではないけど |
| It’s not that S+V | 相手が想定した理由を正面から訂正する | 〜なのではありません |
両者の意味が重なる場面も多く、常に厳密に分ける必要はありません。ただ、Not that… は会話への差し込みや後付けの補足、It’s not that… は「問題はそこではない」という説明に向いています。
「AではなくB」と情報そのものを訂正したい場合は、not A but Bの意味と使い方も参考になります。
Not that I don’t…はなぜ「嫌ではない」になる?
Not that I don’t like it では、外側の not と don’t like が重なっています。
- I don’t like it.=私はそれが好きではない
- Not that I don’t like it.=私がそれを好きではない、というわけではない
つまり「好きではない」をさらに打ち消すので、「嫌いではない」「むしろ好きな気持ちはある」となります。ただし、積極的な I love it. と同じではありません。たいていは、このあとに断る理由や気になる点が続きます。
Not that I don’t appreciate the offer, but I’ve already made plans.
お申し出がありがたくないわけではありませんが、もう予定を入れています。
Not that I don’t trust him—I just want everything in writing.
彼を信用していないわけではなく、ただすべて書面にしておきたいのです。
しゅみすけ(大山俊輔)
場面別の自然な例文
日常会話
Not that I’m hungry, but I could go for some ice cream.
おなかが空いているわけではないけど、アイスなら食べたいです。
仕事
Not that your idea won’t work, but we should test it on a smaller scale first.
あなたの案がうまくいかないというわけではありませんが、まず小規模で試すべきです。
恋愛・人間関係
It’s not that I don’t care about you. I just need some time alone.
あなたを大切に思っていないわけではありません。ただ、一人になる時間が必要なのです。
海外旅行
Not that the hotel is bad, but it’s farther from the station than I expected.
ホテルが悪いわけではないけど、思ったより駅から遠いです。
買い物
It’s not that I don’t like the jacket. It’s just a little over my budget.
そのジャケットが嫌いなわけではありません。ただ、予算を少し超えています。
日本人が間違えやすいポイント
thatの後ろは原則として文を置く
ここでの that は節を導くので、後ろには基本的に主語+動詞が続きます。
○ Not that I dislike him.
× Not that dislike him.
本当の理由を続けると伝わりやすい
not that〜だけで止めると、状況によっては「では何が理由なの?」と相手を待たせます。but…、I just…、it’s that… などで本題を続けると明快です。
not that+形容詞の「それほど〜ではない」と区別する
It’s not that expensive. の that は程度を表し、「それほど高くない」という意味です。この記事の Not that I think… のように節を導く that とは働きが異なります。程度の表し方は、「さほど〜ない」を英語で言う表現で詳しく解説しています。
簡単な英語で言い換えるなら
not that〜がすぐに出てこなくても、二つの短い文に分ければ十分に通じます。
- Not that I don’t like it, but it’s expensive.
→ I like it, but it’s expensive.
好きですが、高いです。 - It’s not that I’m angry. I’m just tired.
→ I’m not angry. I’m just tired.
怒っていません。ただ疲れています。 - Not that I doubt you, but let’s check.
→ I believe you. Let’s check again.
信じています。もう一度確認しましょう。
まず肯定・否定を直接伝え、そのあとに but や just で事情を足すだけでも、言いたいことは明確になります。
関連表現との違い
- not A but B:AではなくBだと明確に訂正する
- not always / not completely:範囲や程度を部分的に否定する
- on the contrary:直前の内容と正反対だと強く示す
部分否定については、not alwaysの意味と使い方、not completelyの意味と使い方もあわせて読むと整理しやすくなります。反対意見を示す表現との違いは、on the contraryの意味と使い方で確認できます。
まとめ
not that〜 は「〜というわけではない」と、誤解されそうな理由をやわらかく否定する表現です。
- Not that S+V, but… で「〜というわけではないけど……」
- 前の発言のあとに置けば、後付けの補足になる
- It’s not that S+V は、理由をより直接的に訂正する
- Not that I don’t… は二重否定で、相手への配慮を示しやすい
- 難しければ I like it, but… のような短い文で言い換えられる
相手の誤解を避けつつ、本当の理由を穏やかに伝えたいときに使ってみましょう。ほかの表現は、英熟語・定型表現の一覧から確認できます。









